きっと、うまくいくの紹介:2009年インド映画。日本で2013年に公開。インドを代表する俳優であるアーミル・カーンが主演し、公開当時にインド映画の歴代興行収入が1位となったこの作品は、インドに蔓延る様々な社会問題を盛り込みながらもコメディ要素を随所にちりばめた部分などが評価され、国際インド映画アカデミー賞で16部門を受賞した。インド国内のみならず、アメリカや日本を含む世界中で高い評価を受けて話題になった。原作はChetan Bhagat「Five Point Someone」という小説。
監督:ラージクマール・ヒラーニ 出演:アーミル・カーン(ランチョー)、R・マドハヴァン(ファルハーン・クレイシー)、シャルマン・ジョシ(ラージュー・ラストーギー)、カリーナ・カプール(ピア・サハスラブッデー)、オミ・ヴァイディア(チャトゥル・ラーマリンガム) ほか
映画「きっと、うまくいく」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「きっと、うまくいく」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
きっと、うまくいくの予告編 動画
映画「きっと、うまくいく」解説
この解説記事には映画「きっと、うまくいく」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
きっと、うまくいく:タイトルの意味とは。
「きっと、うまくいく」という日本語のタイトル。これは本作で出てくるキーワード「Aal Izz Well」を日本語に訳したものです。映画の前半、この言葉をモットーにしている本作の主人公ランチョーがプレッシャーに弱い友人に「Aal Izz Well」と語り出します。ランチョーは勉強が好きで大学にはいり、工学を学びながら学識を身につけたいと思っている意欲的な青年です。テストの点数を上げるための教え方をしている学長と、衝突を繰り返していくなかで様々な家庭環境で育った周囲の人々を元気づけていきます。
きっと、うまくいく:大学卒業後ランチョーは行方不明に。
競争社会にたいして疑問を感じながら、大学の講師や学長のしゃべる「教科書に書いてある正解」にたいして素直な言葉で質問を投げることができるランチョー。出る杭は打たれると言いますが、先生から見ると反抗的な態度に見えるため、そのせいで授業をよく追い出されてしまいます。柔軟な考え方を持つランチョーは別の授業に併存と潜り込み、授業を受けます。モットーであるキーワードを唱えながら、勉学に打ち込み成績は首席。首席であっても、ランチョーは周囲の人々への対応を変えずに誰に対しても公平な姿勢を保ちます。映画の中盤ではそんなランチョーの優しさをよく知っている友人の一人が、学長からの脅しに耐えられずに大学の窓から飛び降りてしまいます。この友人は一命をとりとめるのですが、話していることは聞こえても麻痺しているので動けないという状態に陥ります。この友人を励ますためにランチョーは、たくさんのことをします。ここは見応えがあります。そんなランチョーは大学卒業後に、親友たちの前から姿を消します。本作の冒頭は、ランチョーを探していた友人のひとりであるファルハーンの視点から始まります。
きっと、うまくいく:ラストでわかる自由奔放なランチョーの秘密
やんちゃだった大学時代の話と、その10年後となる大人になってからのランチョーの姿を描く本作。10年後、ランチョーをさがしていたファルハーンとラージューは、名家の出であるランチョーの家を探し出すことに成功します。ふたりがその家に入ると、そこではランチョーの父親の葬儀の真っ最中でした。そこで二人はランチョーと呼ばれている青年に出会いますが、その青年は学生時代に一緒に学んだランチョーではありませんでした。少し卑怯な手を使いながらも、この青年の秘密であるランチョーとはいったい誰なのか?といった謎を二人は解き明かします。ここでキーポイントとして描かれるのがランチョーの子供時代です。実は大学時代をともに過ごしたランチョーは、この邸宅に住む庭師の子供で、館の主人が引き取ったという事実が明らかになります。ラストではランチョーという名前で大学に通っていた主人公が開いた小学校で、友人たちと再会を果たします。
きっと、うまくいく:インド映画の魅力がたっぷり
ロマンスに歌に踊りといった明るい雰囲気に包まれて、見ていると一緒に踊りだしたくなるのが本作の魅力です。悲しめな曲もありますが、それはそれで心に響いてきます。「Give me sunshine」、「Aal Izz Well」、「Zooby Dooby」と三曲を上げましたが、流れてくる音楽はどれも素敵です。映画を見終わったあとにまた聞きたい、聞くために映画をもう一度見たいと思わせてく面白さがあります。「きっと、うまくいく」は、工学を学んで、知識を使い、学識を得ることで人を幸せにすることの難しさや面白さを伝えてくれる映画です。
あらすじネタバレ解説
きっと、うまくいくのネタバレあらすじ:起
インドにある最高峰のICEI工業大学の生徒だったファルハーン(R・マドハヴァン)とラージュー(シャルマン・ジョシ)は、かつての同級生であるチャトゥル(オミ・ヴァイディア)に呼び出されます。卒業式以来、顔を見ていない学生寮の同居人で異端児だったランチョー(アーミル・カーン)に会えると思った2人は急いで向かいますが、彼の姿はありません。チャトゥルにランチョーの居場所を聞き出した2人は車でそこへ向かいます。彼らが通った工業大学にはインド中から優秀な生徒たちが集まっていましたが、彼らの先輩であるジョイ・ロボは特に高い技術を持つ生徒でした。しかし、とても厳しい学長は彼を認めようとはせず、彼の作った小型カメラ付きの飛行機を捨てて留年するよう命じます。その捨てられた飛行機を拾ったランチョーは、ジョイを驚かせようと思い立ち、飛行機を完成させて飛ばし、ジョイのいる部屋を映します。しかし、そこに映ったのは首をつって自殺したジョイの姿でした。ランチョーは学長にジョイは社会構図の問題によって亡くなったと説き、学長を怒らせてしまいます。そして、学長に連れられて生徒たちの前で講義するよう言われたランチョーは、ファルハーンとラージューの名前を用いて教育の在り方についての考えを見事に説くのでした。
きっと、うまくいくのネタバレあらすじ:承
学長は、ファルハーンとラージューの親族にそれぞれ手紙を書き、3人は家に呼ばれます。ファルハーンは動物の写真を撮ることが得意でしたが父親からエンジニアになるよう言われており、一方のラージューは、家がとても貧乏で常に神頼みをしていました。その帰り道に空腹に耐えられなくなった3人は、とある結婚パーティーに潜り込みますが、それは学長の娘モナのパーティーでした。翌日、ファルハーンとラージューは学長室に呼ばれ、忠告された2人は部屋を移るよう言われます。ラージューはチャトゥルと相部屋になりますが、彼は他人を蹴落とすために他の生徒の邪魔をする生徒で、ランチョーはラージューを救い出すために計画を立てます。その計画のせいで恥をかいたチャトゥルは、ランチョーとファルハーンに10年後に戻ってきて将来の成功の姿を賭けようと言うのでした。ある日、ラージューの父が危篤状態になり、ランチョーは偶然出会った学長の2番目の娘で医学生のピア(カリーナ・カプール)と協力して病院へと運び、彼の命を助けます。このことで、ピアはランチョーに恋をします。試験が終わり、結果が発表されますが、ファルハーンとラージューは共にビリで、一方のランチョーはトップの成績を取ります。
きっと、うまくいくのネタバレあらすじ:転
ランチョーは思いを寄せるピアに告白出来ずにいました。酒に酔った3人は夜な夜な学長の家に忍び込み、ランチョーはピアに告白します。しかし、学長に見つかってしまい、3人は逃げ出しますが、翌朝学長はラージューを学長室に呼び出し、退学したくなければランチョーを退学にさせろと脅されます。精神的に追い詰められたラージューは部屋から投身自殺を図り、大けがを追ってしまうのでした。ランチョーやピア、ファルハーンらは毎日ラージューの看病をします。その後ファルハーンはエンジニアにはならず、写真家になりたいと父親に打ち明けて和解し、回復したラージューは就職のための面接に合格します。学長は卒業試験で、就職の決まったラージューを落とそうと自ら試験問題を作りますが、ピアは執務室のカギをランチョーに渡して回答を盗むよう説得します。見事盗むことに成功したランチョーとファルハーンはラージューに回答を手渡しますが、ラージューは己の実力で勝負すると宣言します。しかし、盗んだことがばれてしまい、学長は彼らに退学を命じます。ピアは、かつて兄が父からの圧力のために自殺したことを嘆き、そのことを訴えて家を出ていきますが、その後モナが破水します。病院へ運ぼうとするも大雨が降ったことで車が出せない状態となり、それを知ったランチョーたちは仲間と協力してお産を手伝い、無事に赤ちゃんを取り上げることに成功します。このことがきっかけで、ランチョーたちは退学を免れ、晴れて卒業するのでした。
きっと、うまくいくの結末
3人がランチョーの豪邸に着くと、彼の父の葬儀が行われていました。3人はそこでランチョーを見かけますが、その男はランチョーの顔ではなく、ランチョーが写っているはずの写真や卒業証書も別人のものでした。その男がランチョーの学位を不正に入手したことを知ったファルハーンとラージューは彼を尋問し、自分の父親が両親を亡くしたランチョーを使用人として引き取り、優秀な彼を実の息子の名を使って学校へ通わせ、その代わりに学位を息子に与える約束をしていたことを聞き出します。ファルハーンはピアも連れて行こうと彼女の元へ向かいますが、その日はピアが別の男と結婚する日でした。ファルハーンはピアを説得し、ラージューと共にランチョーの元へ向かいます。一行はランチョーの運営する小学校へ行き、彼と再会を果たします。彼の実の名はフンスク・ワングルといい、数多くの特許を持つ名科学者になっていました。ピアとランチョーは今も互いに思い合っていることを知り、2人はやがて結ばれます。
「きっと、うまくいく」感想・レビュー
-
インド映画だし、上映時間も長いのでなかなか見ることができなかったが、見始めると3時間なんてあっという間だったし、インド映画ってこんなに面白いのかと素直に感じることができました。自分自身は大学3年生になってから見たのですが、この映画はぜひとも大学一年生以下の人に見てもらいたい作品です。
-
インド映画ということで敬遠する方も多いと思われますが、それは非常にもったいないことだとこの映画を見てハッキリと言えます。
確かに歌やダンスがあり、途中でインターバルが入るほどの長さではあるが、全く気にならず、最後まで一気に見て、後日もう一度見返すほどの作品だった。
経済的に急成長したインドで、学ぶこととは何かを大学という舞台をメインにストーリーが展開されます。
日本人の私でも時折、深く考えさせられたりする内容なのですが、決して重すぎることはなく、主人公のランチョウとその同級生が笑いや夢を追う姿を見せてくれて前向きになれます。 -
この映画は本当によかったです。洋画ばかり見ている私は最初の数十分間はカメラワーク等が非常に気になりましたが、内容が面白く見ている間に違和感はなくなっていました。おいおい!と思う箇所もありましたが歌もダンスも楽しめ、内容盛りだくさんの素晴らしい作品だと思います。色んな方に見てもらいたいです。
-
2時間50分という長編作品であることと、「インド映画」というハードルがあり見るのをずっと避けてしまっていた作品なんですが、いざ観賞してみたら本当に良い作品でした。
これほどまでに思い切り笑えて、同時に感動もしてしまうという作品には今まで出会ったことがありませんでした。
私は今まさに大学生で(彼らほど優秀ではありませんが(笑))、「自分は将来何になるのか?」「何を学ぶために大学へ進学したのか?」と自分に問いかけている時だったので、すごく胸に刺さるものがありました。
これからはランチョーのように「学びたいから学ぶんだ」という積極的な姿勢で大学生活を有意義に過ごそうと思います。 -
インド映画はちゃんと観た事が無くて、顔を見ただけでは登場人物達の年頃さえも思い浮かばなかったり、社会的背景もあまり知らないままの鑑賞でしたが以外に面白くて、他のインド映画も観たい気持ちになりました。深刻な場面の後に大勢のダンスが始まったりして自分には意外過ぎる展開、これが最近ヒットしているインド映画なのかと改めて認識しました。
あと、欧米の青春映画が全てそうとは言いませんが男女のあからさまなイチャイチャの描写や食べ物を粗末にしても咎められない文化が自分はあまり好きじゃないんだけどこの映画ではそれらをあまり表現しなかった事も気に入った所かな。 -
おすすめ
-
長かった…
-
インド映画は歴史物語、神話物、アクションなど観たが本作は数ある中でも秀逸だ。
映画レベルが非常に高いと噂されるインド映画の中でトップレベル興行を誇る本作。少し長い…のはご愛敬、間にしっかりインターバルも置かれていますので、ご安心。
エピソード的面白さだけではなく、「映画のもつ社会的役割」も意識されているようで、インドで問題となっている「過剰な学歴社会と自殺率の高さに対する苦言」が強いメッセージ性をもっています。社会派的要素を十分に含みつつ、本格的社会派映画では多くの人に受け入れられにくいことを意識してか、ストーリー展開はポップなテイスト、色彩多分な演出セット、そして醍醐味のミュージカル的要素もふんだんに盛り込まれていて、「小難しい映画はちょっと…」という人にも配慮が行き届いています。
本作の中心人物ランチョーの親友の一人が本作の語り手、という構造になっており、行き過ぎた勧善懲悪の対比になりすぎない配慮も一応なされています。ランチョーが主人公、全てがランチョー目線というのでは、あまりにも「学歴社会的社会構造」が否定されきってしまいますし、それではあまりに稚拙な内容になってしまいます。それをうまく回避することによって、「過剰な学歴社会・肩書社会」という要素が、単純な敵として描かれるのではなく、「その中で良く生きるとはどういうことなのか、それがどれだけ素晴らしいことなのか」という本質的メッセージを際立たせる役割を担うに至っています。
映画作りの巧さを味わうのもよし、音楽を楽しむのもよし、友情物語に涙するのもよし、色々な楽しみ方があるのではないでしょうか。一見の価値ありまくりです。