ランダム・ハーツの紹介:1999年アメリカ映画。飛行機事故で死亡した一組の不倫カップル。それぞれの夫と妻が、失った哀しみと裏切られた苦しみの中で真実を知ろうとするうちに惹かれあう姿を描く。
監督:シドニー・ポラック 出演:ハリソン・フォード(ダッチ)、クリスティン・スコット・トーマス(ケイ)、チャールズ・S・ダットン(アルシー)、ボニー・ハント(ウェンディ)、ほか
映画「ランダム・ハーツ」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「ランダム・ハーツ」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「ランダム・ハーツ」解説
この解説記事には映画「ランダム・ハーツ」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
ランダム・ハーツのネタバレあらすじ:妻の裏切り
ワシントンからマイアミに向かう飛行機が墜落。警察の内務調査室に勤務するダッチは、留守番電話に残されたメッセージから妻ペイトンが出張のために事故機に乗っていたことを知る。あわてて航空会社に連絡するが搭乗者名簿に名前がないと言われ、妻の勤務先に確認に行くと出張の事実はないと告げられる。航空会社の調べで、ペイトンはカレン・チャンドラーという男性とともに彼の妻を名乗って搭乗していたことが発覚する。愛する妻の裏切りに気づけなかったダッチは、不倫関係の真相を知ろうと調べ始め、カレンの妻ケイの元へ訪れる。話をしたいと言うダッチに対して、政治家であるケイは下院議員の選挙戦を控え、事が公になることを恐れて彼を追い返すが、何度も自分の前に現れて真相を知りたいというダッチにケイの心も揺らぎ、ペイトンとカレンがたびたび訪れたマイアミでダッチとケイはペイトンらが過ごした場所をたどる。そしてワシントンに戻った時、同じ思いを抱えた2人は衝動的にキスを交わす。
ランダム・ハーツのネタバレあらすじ:見つからない“なぜ”
疲弊していたケイは選挙戦への立候補を辞退することを考えていたが、資金集めのキャンペーン会場にダッチが現れ、ケイを励ます。互いの存在が支えになっていたダッチとケイは次第に惹かれあい、愛を交わす。しかし過去を忘れて前だけを見ようとするケイに対して、真相究明を諦めていないダッチは、妻の遺品の中にあった鍵から2人がアパートの1室を密会の場所に使っていたことを突き止め、そのことをケイに告げる。夫の持ち物の中に同様の鍵を見つけたケイは、親しい友人から密会に使っていたアパートの場所を聞き出し、その部屋のものを処分しているとダッチが現れ、彼は場所を知っていながら黙っていたとケイを責める。何を見つけたいのかもわからないまま何かを探し続けるダッチに、妻への想いが残っていることを悟ったケイは彼を残し部屋を後にする。ケイを追って外へ出たダッチは、そこで内務調査で容疑者となっていた悪徳警官に撃たれて負傷する。
ランダム・ハーツの結末:過去との決別
運び込まれた病院で、ケイはダッチに別れを告げ、集まったマスコミに対し、ダッチは同じ事故で愛するものを失ったもの同志、支えあった良き友人だと話す。その後、選挙戦で敗退したケイは自宅へ戻るため空港へ行くと、そこにはダッチの姿があった。互いに想いが残っている2人は、また1から出会いをやり直すことにする。
ハリソン・フォードとクリスティン・スコット・トーマスが主演する原作付きのメロドラマ。
ウォーレン・アドラー原作を大ベテランのシドニー・ポラックが監督。
気づかずにいた互いのパートナーの浮気。そして、不幸な飛行機事故。
それが、ワシントンDCの警察で内部調査を担当する男と、再選を狙うニューハンプシャー出身の共和党の議員の女を結びつけた。
職業柄、真相を探ろうとする男と、過去は過去と区切りをつけて忘れてしまいたい女。
そんな境遇の異なる二人が、強く惹かれあうようになる。
実のところ、メロドラマは嫌いではないのだが、それでもこの作品は平板で退屈に感じた。
なんだろう、メロドラマぶっている、といえばいいのだろうか。
ここにはエモーショナルな衝動がない。
アカデミー賞監督とはいえ、「ハバナ」、「サブリナ」などの凡作が続いていた頃のシドニー・ポラック。
一時期の神通力を失いつつあるかのように見えるハリソン・フォード。
これは、ちょっと辛いものがありますね。
お互いのパートナーが事故死したというショックだけでなく、彼らが自分の知らないところで、継続的に浮気をしていたという事実が、全く境遇の異なる二人を結びつけるというメインプロットは、ドラマチックで面白い。
しかし、誰もがわかりきっているこの出会いまでに、およそ45分も費やすのは、どうもいただけない。
しかも、再選を目指す上院議員・ある悪徳警官の容疑を追求する主人公というサブプロットが、全く機能しておらず、単なる付け足しに終わっている。
こんな水増しだらけの2時間13分。ついでにいえば、監督自身の出演も成功しているとはとても思えない。
そもそもこの映画、ハリソン・フォードが演じていることもあって、主人公の気持ちがわかりにくい。
妻が死んでも涙を見せないこの男の「真相を探る」ことへの拘りが、何に由来するものなのか、もう少し感情の変化も含めて丁寧に描かれるべきだったように思う。
不倫していた妻の自分への愛情のかけらを確かめたいのか、それとも警察官として妻に欺かれていたことによって傷ついた自尊心ゆえなのか。
それが、どのように出会ったばかりの議員に惹かれていく気持ちと繋がるのか。
ハリソン・フォードは曖昧な笑みを浮かべるばかりで、何も教えてくれない。
ヒロインを演じるクリスティン・スコット・トーマスは、ハリソン・フォードとは対局だ。
ショッキングな事件を過去のこととして葬りたい気持ちが、単に自分の選挙目的だけでないこと、その裏に心の痛みと哀しみがあることに、きっちりと説得力をもたせている。
この映画に観る価値があるとすれば、それは彼女とその演技以外には考えられない。
とても魅力的で、素晴らしい女優だと思う。