影なき狙撃者の紹介:1962年アメリカ映画。冷戦時代の共産党側の陰謀をサスペンスフルに描く政治スリラー。アメリカで流行していた精神分析的な色合いを加味してあり、複雑な内容になっている。原作となったリチャード・コンドンの小説は、2004年に再び映画化。
監督:ジョン・フランケンハイマー 出演:フランク・シナトラ(ベネット・マーコ)、ローレンス・ハーヴェイ(レイモンド・ショー)、アンジェラ・ランズベリー(エレノア・アイスリン)、ジャネット・リー(ユジェニー・ローズ)
映画「影なき狙撃者」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「影なき狙撃者」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「影なき狙撃者」解説
この解説記事には映画「影なき狙撃者」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
影なき狙撃者のネタバレあらすじ:起
1952年の朝鮮半島。朝鮮戦争の最中です。米軍のトラックがバーへ。ショー軍曹が中へ入ってゆき、兵隊たちに軍営へ戻るよう促します。彼はお堅いことで周囲から煙たがれていました。やがて、ショーを含めた兵隊たちが偵察に出ましたが、スパイのせいで共産党側に捕まります。時間が経ち、復員兵たちが帰国。その中にはなぜか捕まったはずのショー軍曹もいました。
影なき狙撃者のネタバレあらすじ:承
軍の発表では、共産党側に捕まった兵隊たちはショーのおかげで脱出した、ということになっていたのですが、実は革命を支援するソ連の軍部による特殊な催眠術が施され、自分でも気づかないまま暗殺者として利用される計画だったのです。米軍側ではそれを知らず、ショーに勲章を授与。国の英雄として持て囃される彼を、その母親であるエレノアはうまく利用しようとします。
影なき狙撃者のネタバレあらすじ:転
彼女はアイスリンという上院議員と再婚していたのですが、アイスリンが大統領選挙に出ることになったため、その応援に名声を得た息子を引っ張り出そうというのです。しかし、ショーは皮肉なことにアイスリン議員のライバルである議員の娘・ジョスリンと恋仲で、結局彼女と結婚してしまいます。一方、ショーと同時に共産党の捕虜になっていたベネット・マーコは、復員後変な夢ばかり見るために医者の診断を受け、自分が洗脳の催眠術を施されたことを知ります。しかも自分の小隊の誰かがスパイとなっているらしいのです。
影なき狙撃者の結末
諜報部の命令でマーコはショーに接触。バーで話を交わしていると、トランプのクイーンのカードを見たショーが変な行動を取り出します。実は、共産党側の催眠術により、クイーンのカードを見たら身近の人間の言う通り行動するように仕向けられていたのです。ショーはその後、母エレノアの勧めでトランプをし、その言う通りにアイスリンのライバル議員を殺します。実はエレノア自身が共産党のスパイで、息子に暗殺を司令する役割でした。ショーはその時、自分の妻まで殺害してしまいます。マーコによって真実が明らかとなり、ショーはイデオロギーのために息子の心まで弄ぶ母親に殺意を抱くことに。そんなショーの気持ちも知らず、エレノアは大統領候補の暗殺を命令。しかし術の解けたショーは代わりに母親とアイスリンを撃ち殺します。そしてショー自身も自殺。事件は終わったのでした。
「影なき狙撃者」は、初期の「終身犯」や「5月の7日間」や「大列車作戦」、後期の「フレンチ・コネクション2」や「ブラック・サンデー」などの骨太な社会派サスペンス映画で、我々映画ファンを楽しませてくれた、ジョン・フランケンハイマー監督が、若かりし頃に撮った秀作です。
この映画の時代背景は、朝鮮戦争の頃。
1950年代というのは、まさにアメリカとソ連の東西冷戦の時代でした。
それぞれの本土で戦ってはいないものの、朝鮮半島を舞台にして、代理戦争を行なっていたわけです。
この時代の米ソの対立は、凄まじいものがあります。
ハリウッド映画界でも、かの有名なマッカーシー上院議員を中心とした、「赤狩り」の嵐が吹き荒れていました。
共産主義者は、まるで悪魔のように思われていた時代でした。
この朝鮮戦争下において、中共軍に捕らえられてしまったアメリカ軍兵士が、暗殺者に仕立てられてしまうというストーリーです。
現在の時点で観てみると、それほどもの凄いアイディアではないのですが、恐らく、この映画が製作された当時は、画期的だったのではないでしょうか。
ネタバレになるので、あまり詳しいことは書けませんが、小道具としてトランプが使われていて、効果的であると同時に「影なき狙撃者=トランプ」という連想が、記憶に深く刻まれてしまうほどのインパクトがあります。
この映画の主人公は、ベネット・マーコ(フランク・シナトラ)とレイモンド・ショウ(ローレンス・ハーヴェイ)という二人の軍人です。
シナトラは格闘シーンがあるのですが、ぶっつけ本番だったので、右手の親指を骨折するという怪我をしたというエピソードが残っています。
やはり、きちんとリハーサルをして本番に臨まないと、怪我をしてしまうということなんですね。
ハーヴェイは、セントラルパークの池に飛び込むシーンがありますが、撮影時は厳冬で、彼はスタッフが氷を取り除いた、水温マイナス9度の池にダイビングしたそうです。
ほんとに、俳優とは大変な職業だなとつくづく思いますね。
ストーリーもハラハラ、ドキドキの連続で、出演者たちの熱演、そして最高にスリリングな展開で、極上の政治サスペンス映画に仕上がっていると思います。