砂の器の紹介:1974年日本映画。松本清張の同名推理小説を映画化したサスペンス作品です。迷宮入りしかけた殺人事件を追う刑事と、数奇な運命に翻弄される天才音楽家の物語です。
監督:野村芳太郎 出演者:丹波哲郎(今西栄太郎)、森田健作(吉村弘)、加藤剛(和賀英良)、緒形拳(三木謙一)、加藤嘉(本浦千代吉)ほか
映画「砂の器」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「砂の器」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
砂の器の予告編 動画
映画「砂の器」解説
この解説記事には映画「砂の器」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
砂の器のネタバレあらすじ:起
1971年6月24日早朝、東京の国鉄蒲田操車場で殺害された男性の死体が発見されました。被害者の身元は不明で推定年齢50~60歳でした。事件の捜査にあたったベテランの今西刑事(丹波哲郎)と若手の吉村刑事(森田健作)は聞き込み捜査から、被害者は殺害の数時間前に現場近くのバーで若い男と一緒に酒を飲んでいたことを突き止めます。バーのホステスの証言によると、被害者は強い東北弁訛りで「カメダ」という言葉を何度も発言していました。東北の各県から「カメダ=亀田」姓の人物がリストアップされましたが該当者はなく、今西と吉村は秋田県亀田に行きましたが手がかりは何一つ発見できませんでした。その帰り、二人は列車内で天才音楽家の和賀英良(加藤剛)に遭遇します。
砂の器のネタバレあらすじ:承
8月4日、何一つ手がかりのないまま捜査本部は解散、規模を縮小した継続捜査に移行します。その日、中央線の列車の窓から一人の女が白い紙吹雪を車外に撒き散らしていました。その娘とを新聞のコラムで知った吉村にはある疑問が生まれました。紙吹雪とは布切れだったのではないかと思った吉村は新聞社に問い合わせ、紙吹雪の女こと銀座のホステス高木理恵子(島田陽子)の元に向かいますが、彼女は関与を否定し姿を消します。そのバーには吉村らが先日遭遇した和賀が婚約者で前大蔵大臣令嬢の田所佐知子(山口果林)を伴って来店していました。8月9日、被害者の身元は岡山県在住の三木謙一(緒形拳)と判明します。しかし岡山には「カメダ」という地名はなく、三木の知人にも「カメダ」という人物は存在しませんでした。それでも今西は執念の捜査で、島根県の出雲地方には東北弁によく似た方言があり、そして亀嵩(かめだけ)という土地があることを突き止めました。三木はこの地で巡査として勤務していました。
砂の器のネタバレあらすじ:転
今西は亀嵩に向かい、一方の吉村は中央線沿線で紙吹雪を発見し、それが布切れだったことを突き止めていました。しかもその布切れには、被害者と同じ血液型の血痕が付着していました。その頃、理恵子は愛人関係にある和賀の子を身籠っており、生ませて欲しいと和賀に頼みますが、和賀は冷たく拒否します。やがて理恵子は路上で流産し、そのまま死亡してしまいます。吉村は理恵子のアパートを突き止め、彼女こそが紙吹雪の女だと確信します。一方、亀嵩の今西は三木の親友だった桐原(笠智衆)から事情を聞き、三木が死の直前に伊勢参りに向かったという伊勢に飛びます。そこで三木が2日続けて通っていたという映画館に行き、和賀の写真が壁に飾ってあるのを発見します。三木は伊勢参りの後に岡山に戻る予定を変更して東京に向かっていたのです。その後、今西は亀嵩で三木が貧しい乞食の父子を助け、ハンセン氏病を患っていた父・本浦千代吉(加藤嘉)を入院させ、子の秀夫(春田和秀)を引き取って育てていたことを知り、本浦の故郷の石川県に飛び、さらには和賀の本籍地である大阪市浪速区へ向かいます。今西は秀夫こそが和賀の正体だと確信していました。その頃、和賀は自らの集大成となるピアノ協奏曲「宿命」の発表に向けて準備をしていました。
砂の器の結末
本浦は太平洋戦争時代の1942年に妻と離縁し、当時6歳だった息子の秀夫を連れて故郷を飛び出していました。親子は行く先々でハンセン氏病のためいわれなき差別や迫害を受け、亀嵩で行き倒れていたところを三木に保護されたのです。しかし1944年、突如秀夫は失踪して大阪に渡り、戦後の混乱期を利用して戦災で死亡した人物の戸籍を入手、「和賀英良」と改名していたのです。三木は伊勢の映画館で和賀の写真を見るなり秀夫であると確信、余命僅かな父に会わせようとしましたが、和賀は過去を知られることを恐れて殺害に至ったのです。10月2日、今西は警視庁の合同捜査会議で捜査結果を報告、逮捕状を請求します。その日、超満員のホールで、和賀は自らの人生を賭けたピアノ協奏曲「宿命」の演奏会に臨んでいました。舞台の袖では、逮捕状を持った今西と吉村が待機していました。そして演奏が終わり、和賀は万雷の拍手を浴びていました。
「砂の器」感想・レビュー
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全体で2時間超のこの映画は二幕構成のようになっている。前半の方言ネタに絡めた刑事ドラマ的パートでは丹波哲郎のシブイ演技だったり若かりしころの加藤剛なんかが見られて十分見所一杯であるが、この映画の見所はむしろ後半の1時間弱の怒涛の回想シーンにあるといえる。オーケストラの演奏に載せて犯人の生い立ちが日本の在りし日の美しい情景と共に描写される頃には、既に映画の主人公が前半とは異なっている事に気づく。現代すでにハンセン病の存在を知らない人も増えてきたが、患者役である加藤嘉の名演技が見られるだけでもこの映画を観る価値がある。
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この映画は、親の愛情を感じる映画であると思っています。育ての親と、本当の父親、その両方とも子供のことを思って行動しているのです。そのことを親として、しみじみと感じました。親子の情を感じることができる、本当に意味深い泣ける映画です。
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親子の白装束での回想シーンがオーケストラの曲と流れているのをほんのわずか聴くだけで涙があふれだす。
父親役の加藤嘉が丹波哲郎の刑事に対して息子は知らない人だといって叫ぶシーンがたまらない。 -
今まで何度も観に行ってますが やはり一番初めの配役が最高でその度に感動の涙が溢れてきます。小説は若い時に読みましたが映画が再上映される度に観に行っては松本清張さんの作品の素晴らしさに感動しています。小学校の時 江戸川乱歩を読み漁り 松本清張 森村誠一 次から次へと楽しみを増やしてきました。最近は歳のせいで文庫本が読みにくくなってきたのでボチボチ目の疲れない程度に読み進んでいます。
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丹波哲郎が捜査会議の報告で声を詰まらせながら親子の壮絶な道行きを語る場面は涙なしにはみられない。 和賀指揮する音楽がそれに輪をかける日本映画の金字塔だ。
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すごいの一言です。ストーリーも配役も最高傑作です。
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わたしも観ました 松本清張の作者魂というんですか よく思いついたなーという作品ですが、俳優たちが、これまた素晴らしい演技です 迫力が伝わってきます 映画というより、実際に起こってるんじゃないかと錯覚し感動しましたね いまの映画は俳優たちの演技が学芸会に思われます CGオンパレードでは感動は伝わりません。
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丁寧に作られていて、映像としては美しい映画でした。
高評価が多いですが、刑事ドラマ好きの私にはご都合主義的な捜査が冷めてしまい楽しめませんでした。父子の放浪シーンは感傷的すぎるように思えました。
犯人の和賀の犯行シーンや凶悪的なシーンがあれば納得できたかもしれませんが、加藤剛さんがどうしても犯人のようには思えませんでした。
古い映画です。
今ではきっと見られなくなってしまった所もあるであろう、地方都市の四季折々の風景がとても美しいです。
ストーリーだけでなく、美しい風景もこの映画の魅力だと思います。
東北や山陰に出張する際にも新幹線や飛行機ではなく、特急列車を使用する様子など、映画が作られた当時の暮らしが見られるのも興味深いです。
若かりし日の加藤剛さんがかっこよすぎます。(今でも十分素敵ですが)