ベンゴの紹介:2000年スペイン,フランス映画。娘の死から立ち直れない主人公は今日も酒を飲んでは音楽を興じる。ともに遠い旅の末行き着いたアンダルシアで二つの家族の悲劇が幕を開ける。現代フラメンコ界の頂点であるアントニオ・カナーレスを主演に迎えた情熱のフラメンコ映画。
監督:トニー・ガトリフ 出演:アントニオ・カナーレス、オレステス・ビリャサン・ロドリゲス、トマティート、ファン・ルイス・コリエンテス、アントニオ・ペレス・デチェント、ボボーテ、
映画「ベンゴ」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「ベンゴ」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「ベンゴ」解説
この解説記事には映画「ベンゴ」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
ベンゴのネタバレあらすじ:娘を亡くした父と、その娘を愛した甥
アンダルシアのとある教会に川を渡り集まった参列者は、ロマの音楽と踊りを祈りの代わりに捧げた。今日も娘ぺパの眠る墓にやって来た父親のカコは墓守に、娘の墓をきれいに保つように墓守にチップをはずみ、同伴したアレハンドロには教会の塔の修繕を頼んだ。そんな彼の家の壁には「敵は打つ」と落書きされていた。老女と手足の不自由な甥のディエゴと暮らすカコは、持っているナイトクラブ「エル・レイ」を売る先が見つかったと連絡を受けた。 外出の好きなディエゴを町に連れ出し、カタラナその面倒を頼むと、一時間後ディエゴは、あれは愛ではないと沈みながら、ぺパの話をするのが好きだった、でも死んでしまったと彼女の死を嘆いた。酒場で酒を浴びカコが仲間内で音楽と踊りに興じていると、別席の学生達が興味津々でやって来た。カコはこれが本物のフラメンコだと胸を張った。
ベンゴのネタバレあらすじ:今は亡き娘の愛した音楽でパーティーを
ある日カコは、ディエゴがぺパが好きだったテープを見つけたと言うので、ラジカセでかけてみた。誰の歌わからないけどこれを聞くとぺパは泣いていたのだとディエゴが話すと。その音楽をディエゴのために開くパーティーに手配させた。そのパーティーで、音楽を聴きながら涙をこぼしそうになるカコは酒を浴びるように飲み、来客の女性たちが踊る中、一人家へ戻り寝床に伏し、ぺパとつぶやいた。 明け方まで踊る女性たちも、日が高くなる頃にはお開きになり、老女たちがパーティーの後片付けをしていた。窓から差し込む日と教会の鐘の音、そして吊るされて回る踊り子の人形の姿に、かつて教会で祈るように捧げた音楽と踊りがカコの脳裏をかすめた。家の壁には今日も「サンドロ、お前の敵は打つ」と落書きがされていた。サンドロを殺したのはディエゴの父マリオで、サンドロの親族カラバカ一家はマリオの命を狙っていた。弟でもあるカコは、自分の仲間にマリオの居場所は教えずにお金だけ渡してくれるように頼むしかなかった。ぺパを愛していたと語り、父の代わりに自分の命を狙われていると怯えるディエゴに、カコはぺパの指輪を渡した。居場所の知れぬマリオとは携帯電話で何とか話せただけだった。
ベンゴのネタバレあらすじ:カラバカ一家との対立を深めるカコ
カラバカ一家の乗る遊覧船にカコとその仲間たちも乗りこんだ。互いにけん制していたが、踊り子誘われて踊った連れの女性が娼婦扱いされた事でカコは怒り、カラバカ一家のテーブルの前に行くと、怖いものなど何もない、神も怖くないと言って、腕を刺した。カコの持つナイトクラブエル・レイにいた仲間のトレスは、ある日カラバカの用心棒に呼ばれてマリオの居所を追及された。そして責任が取れないのなら、息子に取ってもらうと脅された。一方カコは、エル・レイが金持ちのドイツ人に売れたので、カラバカの度肝を抜くようなパーティーを開きたいとアレハンドロに仕切りを頼んだ。しかし状況は悪く、ディエゴの命が狙われていると言う事実を突きつけられ、カコはぺパの墓参りで訪れる教会のマリア像に祈り泣いた。
ベンゴの結末:カコの聞いた最後の音楽
カコは一家としてディエゴ連れ、堂々とカラバカ開いていたパーティーに足を運んだ。すぐさま追い出されたカコはカラバカと二人で、かつてはこの土地をともに拓いた同士じゃないかと和解を持ちかけた。しかし交渉は決裂。カコは和解には時間が要ることを悟り、いつものようにぺパの墓参りのために教会の横で車を降りた。そして迎えを待つこともなく自宅へ帰ろうとする道中で彼は再びカラバカのパーティーへ足を向ける。すると夫の敵だと叫ぶ女性の声が響き、カコは用心棒に腹を刺された。 腹に傷を負いながらも家へ帰ろうとするカコだが、自動車修理工場で絶命する。そこに響く騒音はどこかリズムを刻み、音楽のようだった。
以上、映画ベンゴのあらすじと結末でした。
ベンゴのレビュー・考察:故郷のない彼らは音楽に還る
描かれているのは流れてきた二つの家族の男たちの諍い。そして女たちはと言うと落書きされた壁を塗り直し、オリーブや柘榴を収穫し、日々の生活にいそしんでいる。そんな男女、二つの家族に共通するものが、音楽と舞踏、劇中どんな場面でも、それが暴力的なシーンであれ悲劇のシーンであれ彼らロマの音楽が流れている。極めつけは主人公カコが甥のディエゴの代わりに絶命するシーン。そこは確かに自動車修理工場で歌うたいもいなければ楽器の一つものない。しかし、工場内の機械の音は聞いていると舞踏のリズムを刻むように思えてくる。故郷のない彼らにとって唯一のよりどころの音楽に回帰していくように思えた。
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