パーフェクト ワールドの紹介:1993年アメリカ映画。クリント・イーストウッドとケヴィン・コスナーの顔合わせが話題を呼んだ作品。1963年のテキサスを舞台に、脱獄犯と人質の幼い少年との心の交流、そして彼らを追う警察署長の姿を描いた切ないクライム・ヒューマンドラマです。
監督:クリント・イーストウッド 出演:ケヴィン・コスナー(ブッチ・ヘインズ)、クリント・イーストウッド(レッド・ガーネット)、T・J・ローサー(フィリップ・ペリー)、ローラ・ダーン(サリー・ガーバー)、ほか
映画「パーフェクトワールド」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「パーフェクトワールド」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「パーフェクトワールド」解説
この解説記事には映画「パーフェクトワールド」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
パーフェクトワールドのネタバレあらすじ:1.脱獄犯ブッチ・ヘインズ
燦々と照る太陽の下、ある草原に1人の男が倒れていました。その男の傍らには、キャスパーのお面があります。風はその男のところに、札束を運んできます。
その男が静かに目を開けると、一羽の鷹が大空を自由に舞っていました。頭上には1機のヘリコプターがホバリングしています。その男はブッチ・ヘインズ(ケヴィン・コスナー)という脱獄犯でした。
パーフェクトワールドのネタバレあらすじ:2.誘拐
1963年のハロウィンの日、アメリカ・テキサス州のある街、子供たちが思い思いに仮装し、楽しそうに家々をまわっています。その街に住む8歳の幼い少年フィリップ・ペリー(T・J・ローサー)は、宗教に厳格な母グラディス・ペリーに育てられています。フィリップの家はエホバの証人で、フィリップはキリスト教の友達のパーティにも参加できず、ハロウィンの仮装でさえも許されていませんでした。
その日の深夜、刑務所に収容されていたブッチ・ヘインズとテリー・ピューは、看守の目を盗み、檻から抜け出し、1台の車を強奪し、脱獄に成功します。ブッチは自分の好きな車に変えようと、テリーと共にある住宅街へと逃げ込みます。2人は国境を越えて逃走する準備を始めます。テリーは一軒の家へと忍び込みました。そこはフィリップの家でした。
女に飢えていたテリーは、銃で母グラディスを脅して、乱暴しようとします。そこに偶然起きてきたフィリップが来ます。テリーはまだ子供のフィリップを殴り飛ばしました。帰りが遅いと思ったブッチは、暴力を振っているテリーを見ていられず、テリーを蹴飛ばします。ブッチはフィリップに、テリーが床に落とした銃を拾わせます。
ブッチは銃を手にしたフィリップに「俺を狙え」と言います。恐る恐るブッチに銃を向けるフィリップに、ブッチは「両手を挙げろと言え」と言います。フィリップはこわごわブッチの言う通りに言うと、ブッチは「完璧だ」と微笑みます。その時、騒ぎに目を覚ました隣人の1人が、ライフルを持ってやって来ます。ブッチは母グラディスを人質にしようとするテリーを制し、その代わりにフィリップを人質として誘拐し、逃走します。
パーフェクトワールドのネタバレあらすじ:3.仲間割れ
テキサス州警察テキサス・レンジャー本部のレッド・ガーネット(クリント・イーストウッド)は、脱獄者のブッチの捜索担当となります。そのレッドのもとに、犯罪学者のサリー・ガーバー(ローラ・ダーン)が州知事の命で派遣されてきます。前例がないので心理分析は必要と訴えるサリーに、レッドは首をかしげます。レッドのもとには、FBIからボビー・リーという捜査官も派遣されてきます。
その頃、フィリップを誘拐し逃走していたテリーとブッチは、途中で銃弾と食料を補給するため、ある古びた雑貨屋に立ち寄ります。2人は元々、互いに好きではありませんでした。ブッチはフィリップに銃でテリーを見張らせ、雑貨屋に入り、とりあえず必要なものを購入します。
ブッチが店から出ると、車に2人はいませんでした。ブッチが辺りを見回すと、畑の中にテリーがいました。テリーはフィリップを痛めつけようと探していたのです。ブッチは子供のフィリップを痛めつけてばかりのテリーに、ほとほと嫌気が差し、とうとうブッチはテリーを銃で撃ち殺します。ブッチは逃げ出したフィリップに「一緒に来るか?」と問うと、フィリップは素直に頷きます。
ブッチはフィリップを車に乗せ、逃走します。ブッチたちを追うレッドは、各所に検問の設置を要請します。そんなレッドにサリーは、2人は別れて逃げるだろうと進言します。それは、悪のヒーローと称されているブッチと、単純気ままな猟奇的殺人犯テリーは全くの正反対だったからでした。レッドは単純に2人のどちらかが一方を殺して、人質を連れて逃走すると言います。レッドとサリーは互いをよく思っていませんでした。
その後、レッドたちにその雑貨屋から通報が届きます。レッドたちが急行すると、畑の中にテリーの死体を見つけます。テリーは頭を1発で撃ち抜かれていました。自分の推理通りであったレッドは「これで追うのは1人になったな」と呟きます。
パーフェクトワールドのネタバレあらすじ:4.完璧な世界
レッドたちはサリーとトレーラーで、移動しながらレッドを追います。サリーはレッドの検問の穴を指摘します。「完璧な世界」だったら理想的で可能だと言うレッドの部下に、サリーは「完璧な世界」だったら、そもそもこんな事件は起こっていないと言います。
その頃、逃走中のブッチは、フィリップに車は21世紀のタイムマシンだと教えていました。ブッチは「俺が船長で、お前がナビゲーター」と言うと、フィリップはニコッと微笑みます。ブッチは前方が未来、後方が過去、未来に速く行きたい時はアクセルを踏む、ゆっくり行きたい時はブレーキを踏めばいいと教えます。
ブッチはその途中の民家に、好きなフォードの車があるのを見つけ、それに乗り換えようと思いました。ブッチはフィリップをおだてて、フィリップに車にキーとラジオが付いているかを探らせます。フィリップは素直にブッチの言われた通りにし、キーとラジオが付いていることを確認しました。ブッチはその報告を聞き、車と干していた衣類を盗みます。しかし、ブッチはその現場を、農作業をしていた家の主に見つかってしまいました。主は車を盗み逃走するブッチを追いかけます。
ブッチは原っぱでおしっこをしていたフィリップを、車に飛び乗らせると、主を振り切り逃げ切ろうとします。ところが、主は車に追いつき、窓にしがみついてきました。咄嗟にブッチは銃を取り、主を撃とうとします。それを見たフィリップは、しがみついていた主の手に噛みつき、主を振りほどきます。フィリップはブッチに笑みを浮かべます。
この一報を聞いたレッドたちは現場に急行します。そこでブッチたちがこれまで逃走に使っていた車をレッドは調べます。すると、そのトランクから、刑務所の職員の遺体が発見されました。
パーフェクトワールドのネタバレあらすじ:5.ブッチの過去
道中でブッチはある街に立ち寄ります。ブッチはフィリップを連れ、ある店に入りました。何も知らない店員はブッチとフィリップを親子と思い歓迎します。ブッチはパンツ一丁のままのフィリップに、服と靴を買うように言います。フィリップは店員と服を探していると、そこには『出てこいキャスパー』というハロウィン用仮装衣装セットがありました。
ブッチが店で買い物をしている間に、街の保安官にブッチの盗難車を見つけられてしまいます。保安官は直ぐに署に連絡、応援を要請します。ブッチは、奥でTVニュースを聞きブッチたちを不審に思う店主を、目で威圧し、店を出ます。しかし、既に店の周りにはパトカーが包囲していました。
ブッチは車に乗り、包囲していたパトカーを蹴散らします。まだ、店の中にいたフィリップは、その騒ぎを耳に入れると、『出てこいキャスパー』を万引きして、ブッチの車を待ちます。店員は万引きしようとするフィリップを諫めます。ブッチはフィリップに「乗るのか」と選択を求めます。フィリップはブッチの車に乗り込み、ブッチと共に街を出ます。
即座にこの情報はレッドたちのもとに入りました。どうやらブッチはパワーハンドルに向かっているようでした。その辺りに詳しいレッドに、サリーは得意のプロファイルで、レッドを演じました。レッドを演じるサリーは、「8歳で初めて人を殺した」と言い出します。ブッチたちはその見事さにつられ、「どうやって殺した?」などと問います。あらゆる問いにサリーはレッドのような口調で正確に答えます。
レッドは幼い頃、ダンスホール兼売春宿で育ちました。レッドが初めて殺したのは、札付きの悪党でした。警察はそんなレッドを大目に見て、学校に3年遅れで入れました。はじめは順調でしたが、12歳のとき、売春で生計を立てていた母が、自殺してしまったのでした。母はその時、梅毒を罹っていました。レッドの父は、直ぐに暴力を振うケチなチンピラでした。レッドは仮釈放の父といた13歳のとき、いかしたフォード車を盗み、乗り回しました。現行犯逮捕されたレッドは、今度は4年間の少年院送りとなったのでした。そこからレッドは悪の道にのめり込んでいったのです。
パーフェクトワールドのネタバレあらすじ:6.1日遅れのハロウィン
フィリップは車の中で、キャスパーのお面をかぶり、衣装を着ます。ブッチは楽しそうにするフィリップと車を走らせていると、1台のトレーラーとすれ違います。しかし、そのトレーラーには、レッドたちが乗っていました。すれ違い様に、キャスパーの仮装をした子供を見たサリーは、ブッチの車だと判断し、追跡するように命じます。
Uターンして後を猛スピードで追ってくるトレーラーを振り切るため、ブッチは道を離れ、原っぱを走ります。レッドたちを乗せたトレーラーは、悪路とスピードに耐え切れず、林の中に突っ込んでしまい、ブッチを逃してしまいました。レッドの追跡を逃れたブッチは、途中で立ち尽くします。20年前に工事が開始され完成していたはずの道が、未完成のまま放置され、進めなくなっていたからでした。
腕組みして思案するブッチの真似をして、フィリップが傍らに立ってきます。「どこ行くの?」と尋ねるフィリップに、ブッチは1枚の写真を取り出して見せます。それはアラスカの写真でした。ブッチが目指しているのは、その写真の場所でした。ブッチはフィリップと共に一軒の民家へと歩いて向かいます。ブッチはキャスパーの仮装をしているフィリップに、食糧などを調達するため、1日遅れのハロウィンをしようと言います。母から厳格に禁じられていたフィリップは戸惑います。
そんなフィリップにブッチは「俺はお前に頼んでいるんだ。お前、やりたいんだろ」と言います。フィリップは素直に頷くと、ブッチの手を握り、民家に向かいます。民家についてフィリップがドアを叩くと、1人のおばさんが出てきます。そのおばさんはハロウィンは過ぎたと言い、フィリップの申し出を断ってきました。傍らで見ていたブッチは、腰に忍ばせた銃をチラッとそのおばさんに見せつけます。驚いたおばさんは、フィリップに食糧と一握りの札束を渡します。ブッチはフィリップに「完璧」と褒め、早々にそこから立ち去りました。
パーフェクトワールドのネタバレあらすじ:7.レッドの後悔
再びブッチはフィリップと車でアラスカを目指します。その途中、ブッチは警察の検問を掻い潜るため、キャンプをしていた家族連れの車に同乗します。無事に検問を突破したブッチは、その家族を脅し、その車に乗り換え、逃走します。
ブッチはフィリップに家族のことを訊きます。フィリップの父は家を空け、母は自分の主義を押しつけ、フィリップの好きな事を何もさせないでいました。それを聞いたブッチは、自分と似ていると思いました。ブッチはフィリップに「アメリカ人にはアメリカ人があるんだ」と言い、理想のために自力で生き抜こうと言います。ローラーコースターに乗る事も禁じられていたフィリップに、ブッチは体感させてやろうと、フィリップを車の上から転げ落ちないように固定し、車を走らせます。フィリップは大喜びしました。
その夜、ブッチは途中のトウモロコシ畑に車を駐車し、隠れるようにそこで一夜を過ごそうとします。あと4、5日で着くだろうという頃でした。フィリップが突如、家に帰りたいと言い出します。ブッチは、「その瞬間があったのになぜ逃げなかった?」とフィリップに訊くと、フィリップは「泥棒したもん」と呟きます。
寂しそうな顔をするフィリップに、ブッチは「じきに帰してやる。約束だ」と慰めます。ブッチはフィリップに自分のしたい事をリストにするように言います。フィリップはリストを作りました。数時間後、夜間の農作業をしていたその農夫が、ブッチたちを見つけます。何も知らないその農夫は自分の家に、ブッチたちを招き入れ、一夜を過ごさせました。
その頃、代車を待っていたレッドは、サリーからブッチとの関係を尋ねられます。サリーは職業柄、レッドの事も調べていました。レッドとブッチとは浅からぬ繋がりがありました。ブッチを捕まえ、少年院に送ったのは、かつて郡保安官だったレッドでした。レッドは父のもとにブッチを返すと、父と同じく札付きの悪党になると思い、わざと少年院送りにして、そこでブッチを更生させようと思ったのです。しかし、その思いとは裏腹に、ブッチは悪の道へと走ってしまったのでした。レッドはそのことを深く後悔していました。
パーフェクトワールドのネタバレあらすじ:8.誤解
旅人の振りをしてブッチとフィリップは、親切そうな農夫の家で一夜を過ごしました。ブッチたちはその農夫の家で一時くつろぎ、その妻と息子と遊んであげたりします。ところが、その農夫は、言うことを聞かない息子に暴力を振るってばかりいました。それを見ていたブッチは憤ります。ブッチはその農夫にかつての自分の父の姿を投影したのでした。
ブッチはその農夫を銃で威嚇し、怖がる息子を抱かせて「愛している」と言えと迫ります。農夫は息子にそう言うと、ブッチは買ってきたロープで、農夫を縛り上げます。ブッチは農夫に銃口を向けます。傍らの妻と息子は、祈りだしました。ブッチは、今度はテープを取り、農夫、妻、息子の口に貼り、塞ぎました。
その時、ブッチは銃を床に置きます。ブッチが置いた銃を取ろうとすると、そこには銃はありませんでした。見ると涙を流しながらフィリップが銃を手に、ブッチに向けていました。フィリップはブッチが人殺しをすると誤解し、それを阻止しようと彼の脇腹を撃ってしまいます。ブッチを撃ったフィリップは、急いでブッチのもとから逃げ、銃を井戸に投げ捨て、草原へと走って逃げます。
逃げていくフィリップを追いかけながら、殺す気はなかったとブッチは言います。ブッチは撃たれた脇腹を押さえつつ、遠ざかるフィリップに「今までに俺が殺したのは二人だけ。お袋みを殴った奴とお前に手を出した奴。話し合おう。そして、また出かけよう」と話しかけます。フィリップは一本の木の上に登ります。大量に出血したブッチは、その木の下に倒れ込みました。そんな姿のブッチにフィリップは近づき、謝ります。ブッチはフィリップに「同じ撃たれるなら、お前に撃たれてよかった。…そう考えるといい気分だ」と慰めます。
パーフェクトワールドのネタバレあらすじ:9.悲劇
そこに通報を聞き駆け付けたパトカーが群れをなし、ブッチを包囲します。少し遅れて、レッドとサリーも現場に到着します。レッドはブッチにメガホンで投降を呼びかけます。傍らでは、FBI捜査官がライフルでブッチに狙いをさだめ、いつでも射殺できる準備をしていました。
ブッチはフィリップを人質にして警察に要求を出します。まずブッチは仮装したフィリップのため、お菓子を要求します。レッドは部下に命じ、部下たちが持っているキャンディなどをかき集めます。次にブッチは、警察のヘリで到着したフィリップの母親に、フィリップにハロウィンとパーティなど、彼がしたい事を書いたリストをさせろと要求します。フィリップの母は、それをさせると約束します。
要求が呑まれたブッチは、フィリップに札束を持たせて、解放します。フィリップはレッドたち警察の方に歩き出します。しかし、フィリップは直ぐに振り返り、ブッチに駆け寄ります。このまま行くとブッチが射殺されると思ったフィリップは、泣きながらブッチに抱きつきました。フィリップはブッチと手をとり、2人で警察の方へと歩き出しました。
そんな2人の姿を見たレッドは、FBI捜査官に「俺が合図するまで撃つな」と厳命し、単身、丸腰で2人の方へ歩み寄ります。レッドはブッチと再び対峙します。ブッチは銃を持っていないことをレッドに告げ、最後にフィリップと話をさせてくれとレッドに頼みます。レッドはフィリップにジーパンからアラスカの写真を渡そうとします。咄嗟にレッドはFBI捜査官に「撃つな」と合図します。サリーは「ダメー!」と叫びました。しかし、その声もむなしく、銃を出すと勘違いしたFBIの狙撃手は、ブッチを狙撃してしまいした。
レッドは倒れるブッチを茫然と眺めます。胸を撃たれたブッチに、フィリップは泣きながら抱きつきます。母親と警官が駆けつけ、母親はフィリップを抱きしめます。フィリップはブッチからアラスカの写真を取ると、「ブッチ」と何度も叫びながら、母親と警官のもとへ帰りました。レッドとサリーは激怒しながら戻り、狙撃したFBI捜査官を殴り飛ばします。
パーフェクトワールドの結末:10.切ない別れ
レッドとサリーは、やりきれない思いを隠せずにはいられませんでした。撃たれたブッチのそばには、キャスパーのお面とフィリップに渡した札束が、落ちていました。
フィリップは母親に連れられ、ヘリコプターに乗り込みます。旋回するヘリコプターからフィリップは、ブッチの遺体を哀しげに眺め去るのでした。
以上、映画「パーフェクトワールド」のあらすじと結末でした。
ケビンコスナー演じる脱獄犯(ブッチ)が、見知らずの少年を誘拐して逃亡する中で、厳しい母親を持つ少年はブッチから自由を学び、二人に友情が芽生えます。私がこの映画を観たのは中学生の時で、初めて観たアメリカ映画でした。雄大な感情を抱かされ、このまま二人が生きていければ良いのにと思いましたが、ブッチは脱獄犯であり誘拐犯、最後は警察に取り囲まれます。ブッチは少年の母親に自由を約束させ、少年と最後の時を過ごそうという時に銃声がなり響き、無情さが私の心に突き刺さりました。初めて観てから20年以上経ち、アメリカの雄大さが余韻として残っています。