パンズ・ラビリンスの紹介:2006年メキシコ,スペイン,アメリカ映画。内戦状態のスペイン、絶望の中で少女が出会ったのは、自分をおとぎの国の王女として迎えると言う牧神。与えられる三つの試練に少女は打ち勝つ事が出来るのか?
監督:ギレルモ・デル・トロ 出演:イバナ・バケロ、セルジ・ロペス、マリベル・ベルドゥ、ダグ・ジョーンズ、アリアドナ・ヒル、アレックス・アングロほか
映画「パンズ・ラビリンス」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「パンズ・ラビリンス」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「パンズ・ラビリンス」解説
この解説記事には映画「パンズ・ラビリンス」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
パンズラビリンスのネタバレあらすじ:本当はおとぎの国の王女さま?
1944年、スペインは軍とゲリラとの内戦状態。新しい父親の元へ行く車の中で、オフェリアは母親に「こんな歳にもなって」と言われながらも、おとぎ話を読んでいた。途中で気分の悪くなった母親が車を止める、オフェリアが森の中に下りると、足元に石が落ちてくる。それには目の形の模様が彫ってあり、少し歩くとちょうど目の欠けた石碑があった。そこにはめ込むと、ナナフシが彼女の前に現れ、飛び回る。母に呼ばれ車に戻ると、オフェリアは「会った」と言う。
新しい父は、ゲリラの制圧するために、森の中の屋敷にいた。臨月の母親を呼び寄せたのは、自分の息子は自分の元で生まれなければいけないというポリシーのため。仕立て屋だった前夫、オフェリアの父は内戦により他界。大尉という地位にあり、厳しい父親との制圧基地での生活に、臨月の母はストレスのため眠り薬を与えられる。
その夜、母と一緒に眠っていると、部屋の中に何かがいる気配が。昼に森で出会ったナナフシはオフェリアを、入ってはダメとお手伝いのメルセデスに言われていた家の近くにある古い迷宮へ招いた。ついていくと、そこは地下に繋がっており、絵の彫られた石柱が並んでいた。そこの番人パンは、オフェリアは地下の国のモアナ王女で、地下の王国に迎えたいが、完全に人間になってしまっていないか、満月までに三つの試練を課すと言って、一人で読むようにと一冊の本を彼女に渡す。
父を内戦で亡くし、今は大尉とその軍と暮らし、メルセデスがゲリラとの内通者であることを、医者との会話で知ってしまっていたオフェリアは、この現実から逃げ出したかったので、大尉が高官達を呼んで行う晩餐会をよそに、仕立ててもらった服と洋服を着たまま、本の指し示す森の中の大木の虚の中に入っていく。
一つ目の試練は、大木の下に住まう大蛙に、用意された石を二つ飲ませることだった。泥だらけになりながら近づき、虫と見せかけて一緒に食べさせると、蛙は飲み込んでいたものを吐き出して、しぼんでしまった。その中に、鍵を見つけ、一つ目の試練は達成したが、晩餐会をすっぽかし、用意した服を泥だらけにして、森に潜むゲリラに合図をしに外に出てきたメルセデスに見つけられたオフェリアは、母親にがっかりされる。
パンズラビリンスのネタバレあらすじ:身重の母の具合を心配する少女、試練を要求するパン。
オフェリアが二つ目の試練に挑もうと浴室で本を開くと、ページが見る見る赤く染まり、部屋からは母の悲鳴が。臨月の母は、大量に出血し、今にも倒れそうだった。大尉は医師をを呼び、もしも出産の時に危険になったら、生まれてくる子供を優先させるように言い含める。そして、母が一人で休めるよう、オフェリアは一人部屋に移されてしまう。
一人になった夜、彼女の枕元にパンが現れ、二つ目の試練を早く行うように迫ると、オフェリアは母親の容態が心配だと反論する。するとパンは、マンドラゴラの根を取り出し、これを母親の牛乳に浸して母親のベッドの下に置き、毎日血を二滴たらすようにと教える。それから、二つ目の試練として、豪勢な宴の席でうたた寝をしているのは人間ではない、宴のテーブルの食べ物は一切口にしないように、砂時計の砂がなくなるまでに鍵で中のものを持ってくるようにと、チョーク、案内の妖精、砂時計、蛙の中から取り戻した鍵を渡していった。
翌日、マンドラゴラの根を牛乳に浸すと、赤ん坊のようにモゾモゾと動き始め、それを母のベッドの下に入れると、容態は見る間に治まって医者も驚いた。その夜、オフェリアはチョークで壁に四角を書くと、それは扉のように押し開く事が出来た。中に入ってみるとそこはお城の広間に続き、宴のテーブルには美味しそうな食事、そして上座にいる人物は目がなく眼球が銀の小皿においてあった。天井を見ると、子の人物が子供を食べる怪物であることが分かる絵が描いてあった。オフェリアはここに来る前にひっくり返した砂時計の砂が落ちる前に戻らなければならないので、横にあった棚の鍵穴に鍵をさし、その中の一つを明けると、中から短刀を取り出した。
帰ろうとする時、オフェリアは誘惑に負け、ブドウを二粒食べてしまう。すると、それまで動かなかった上座の怪物は手のひらに眼球をはめ、動き出し、妖精を掴んで食べてしまった。恐ろしくなったオフェリアは逃げ出し、砂時計の砂が落ちきり、閉まりかけた扉を開けられず、天井に四角を描き、そこから抜け出し、怪物が出てこぬように上から閉じ込めた。パンに短刀を渡すと、生き残った妖精が、オフェリアが禁を破った事を告げ口し、怒ってしまう。オフェリアに王女に戻る資格はないと言って消えてしまう。
パンズラビリンスのネタバレあらすじ:抵抗するゲリラと残忍な父親。
ゲリラに拠点になっている家を襲撃されると、倉庫の鍵を壊されていた事から、大尉は自分が管理するまではそれまで鍵を管理していたメルセデスを疑い始める。そして、森の中にいるゲリラを一網打尽にし、まだ息のあった吃音の男を連れ帰り、拷問を始める。家の中が怪しいと思い始めた大尉は、母親のベッドの下にいるオフェリアと、マンドラゴラを見つけ、下らないまじないだと、マンドラゴラを暖炉の中に投げ込んでしまう。彼には見えないが、オフェリアにはもがきながら燃えていくマンドラゴラがしっかりと見えていた。母親はオフェリアに、おまじないなど存在しないと叱る。
大尉は拷問した吃音の男が再び拷問に耐えられるよう診るように医者に頼むと、彼が持っている抗生物質のアンプルが、以前森でゲリラが落としていったものと同じだと気づき、医者がゲリラたちと通じている事を知る。吃音の男は、見知った医者に、拷問に耐え切れず殺してくれと頼む。大尉が席を外している間に、医者は彼を安楽死させる。それを大尉は怒り、自分に従わない者として、医者を後ろから撃って殺す。
一方、おまじないのマンドラゴラを燃やされてしまったオフェリアの母は、再び苦しみ始め、軍医が呼ばれ出産が始まる。難産の末、男の子は無事に生まれるが、母親は死んでしまう。ますます残酷になる大尉は、吃音の男から子の基地に内通している者がいる事を知り、メルセデスに倉庫の鍵のことで、かまをかけてみる。引っかかったメルセデスは拷問部屋へ。メルセデスと懇意にしていたオフェリアは、大尉にメルセデスがスパイだと知っていて黙って自分を馬鹿にしていたのか?とオフェリアに迫り、彼女を部屋に閉じ込めてしまう。
拷問部屋に縛り付けられたメルセデスは、隠し持っていたナイフで縄から抜け出し、大尉を刺し、口元から頬にかけて裂くと、基地からゲリラのいる森へ逃げ出す。それを追う大尉の部下たち。走るメルセデスが勝てるわけがなく、馬に乗った彼らに囲まれてしまったところ、ゲリラの仲間たちの援護射撃によって、彼女は助かり、ゲリラの所に身を寄せる。
パンズラビリンスの結末:課せられた最後の試練
とじこめられたオフェリアの元に再びパンが現れ、「最後の試練を達成できたら王女として認めよう、迷宮に弟を連れてくるように、質問は一切禁止」と言う。しかし「閉じ込められていては出来ない」と返すオフェリアに、パンは扉を描くチョークの存在を思い出させる。
その夜、オフェリアは母親が飲んでいた睡眠薬の瓶を持って、弟のいる大尉の部屋へ行き、彼が注いだ酒に大量の睡眠薬を混ぜる。自分で頬の縫合をしている大尉は、そんなオフェリアに気づかす、薬の入った酒を飲んでしまう。そこへ、ゲリラの夜襲によって明るくなった廊下に、赤ん坊を抱いたオフェリアの影が浮かび、大尉は自分の息子を連れ去られた事に気づき、追いかけようとするものの、大量の睡眠薬を酒と一緒に飲んでしまったため、足がもつれてしまう。
迷宮まで弟を連れてきたオフェリアにパンは、「今夜満月に照らされた地下への入り口に無垢な血をたらせば、道が開く。生まれたばかりの弟の血が必要だ」と。二つ目の試練で彼女が持ち帰った短刀で弟に傷をつけようとする。殺すわけではなく、少し血を流せばいいだけだと言うが、弟に傷をつけたくないオフェリアは反抗する。そんな様子を大尉は後ろから見ていた。パンは「もう王女として迎える事は出来ない」とすると、大尉が後ろから彼女を打ち抜き、倒れた彼女の手から息子を取り戻した。
基地を襲ったゲリラの中にいたメルセデスはオフェリアだけは助け出そうと、火を放った家のオフェリアの部屋へ行くが、そこはもぬけの殻だった。
迷宮から赤ん坊と共に出てきた大尉は、ゲリラに囲まれ、銃弾に倒れる。迷宮で何があったのか察したメルセデスが中に入っていくと、中心でオフェリアが倒れていた。メルセデスはオフェリアの亡き骸を撫でながら子守唄を歌う。
オフェリアの血が流れ、迷宮の満月を映す水溜りに流れ込むと、オフェリアの身体は金色に光り、地下の国へ迎えられる。そこは美しい場所で、優しげな王と王妃が彼女を待っていた。弟を守り、自ら血を流した彼女の判断は正しかった。そうしてオフェリアはおとぎの国王女になった。現実世界では、彼女の亡き骸をいたわるメルセデスの子守唄が響くのだった。
以上、映画パンズ・ラビリンスのあらすじと結末でした。
パンズラビリンスにレビュー・考察:少女に必要だったおとぎの国
オフェリアは本当に地下の王国に迎えられたのか?彼女の視点に立ってみるとたしかに不思議な事が起きている。しかし、クライマックス直前に大尉の目線でオフェリアを見るカットが入っている。それを見るとオフェリアがパンに話しかけている所が大尉にはオフェリアがひとり言を言っているようにしか見えない。またメルセデスはオフェリアのなきがらに子守唄を歌うがオフェリアが地下の王国に迎え入れられたと言う事にはいっさい気づかない。これを、子供から大人に至る過程で見えなくなってしまう(信じなくなってしまう)この世の不思議と解釈するのが一番妥当かもしれない。しかしオフェリアの置かれていた状況(内戦、母の再婚による孤独感、新しい父の残虐な面)を、かんがみると、悲しみも苦しみも無い、おとぎの国の存在を信じることで、オフェリアは精神的にも疲弊することなく生きていられたのではないだろうか。冒頭で彼女が大事そうに本を抱えているのが印象的だが、彼女にとって本は唯一あの状況にあって、彼女を救ってくれるお守りのような存在だったのだと思う。
「パンズ・ラビリンス」感想・レビュー
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ラストが「ハッピーエンド」なのか「バッドエンド」なのか意見が別れる映画。私はバッドエンドだと思いました。地下の国へ行けたのは主人公の死と通してなのでどうしてもハッピーエンドには思えませんでした。そして彼女を導く役目をしているパンがとても不気味でした。
ギレルモ・デル・トロ監督の映画はとても奇妙でファンタジックな世界です。シェイプオブウォーターを見た方はぜひ、こちらの世界も覗いてみてはいかがでしょうか。どんな状況でも人間の「想像力」は自身に勇気や生きる希望や幸せを与えてくれる。ラストシーンはとても悲しいですが主人公にとってはハッピーエンドだったのではないかと思います。