ボルベール <帰郷>の紹介:2006年スペイン映画。母から娘へ因縁のように継がれてゆく絶望と罪、娘の罪を身代わりに負ったライムンダの秘密が死んだ母の口から明かされる。
監督:ペドロ・アルモドバル 出演:ペネロペ・クルス(ライムンダ)、カルメン・マウラ(イレーネ)、ロラ・ドゥエニャス(ソーレ)、ブランカ・ポルティージョ(アグスティナ)、ヨアンナ・コボ(パウラ)、チュス・ランプレアベ(パウラ伯母さん)、アントニオ・デ・ラ・トレ(パコ)、ほか
映画「ボルベール <帰郷>」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「ボルベール <帰郷>」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
ボルベール <帰郷>の予告編 動画
映画「ボルベール <帰郷>」解説
この解説記事には映画「ボルベール <帰郷>」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
ボルベール <帰郷>のネタバレあらすじ:起・突然崩壊した日常
ある信心深い村、墓掃除を終えたライムンダとその娘パウラ、姉のソーレはパウラ伯母さんの家を訪れた。ライムンダとソーレの両親が火事で亡くなって以来、失踪した母の身を案じているお向かいのアウグスティナや他の村人は彼女が、ライムンダの亡くなった母の霊に世話を焼かれているのだと信じていた。帰宅するとクビにされた夫の代わりに、空港で働き始めたライムンダがある日帰宅すると、父親である夫に犯されそうになったパウラが殺した、夫の死体があった。彼女は娘のしたことを自分がしたと言い聞かせ、台所の死体を片付け始めた。するとそこへレストランのオーナーエミリオがバルセロナへ行くので誰かの手に渡るまで鍵を彼女に預けた。
ボルベール <帰郷>のネタバレあらすじ:承・パウラ伯母さんの死、そして母の幽霊
ソーレから電話でパウラ伯母が亡くなったと知るも、夫の死体の事で忙しいライムンダは葬式に行けないと言い、遺体を預かったレストランの冷凍庫へ入れた。翌日冷凍庫をし改めに来ると、近くで映画を撮っているクルーから30人分のランチを用意できるレストランを探していると言われ、ライムンダは閉業していたレストランで彼らにランチを出すことにした。ソーレがパウラ伯母の家へ行くと死んだはずの母の幻影を見た。そこへアウグスティナがやって来て、パウラの死の際に、誰かが自分に彼女の死を知らせに来たと話した。そしてソーレが帰ると車のトランクから呼び声がし、開けてみるとそこには母がいた。神が望む限りいる言う母を、ソーレは客間に通した。電話口で葬式の報告を聞いたライムンダは、レストランを継ぎ、夫は家出したとソーレに話した。ソーレは母親の髪を染めながら、母を住み込みのロシア人として自分の美容室の手伝いをさせることにした。
ボルベール <帰郷>のネタバレあらすじ:転・ライムンダと母の確執
ソーレの家を訪れたライムンダは母の臭いでその存在を察知し、客間のクローゼットでパウラ伯母さんの鞄を見つけた。そして中の貴金属にソーレが盗んで来たのではないかと誤解した。ライムンダは父殺しで怯える娘に、夫は娘の実父ではなく本当はもう死んだ村の人だと話し、映画撮影終了の打ち上げをレストランで行った。ソーレは母を乗せてそのレストランへ行くと、彼女は快く迎えた。客の弾くギターに、ライムンダは昔母がオーディションのために作ってくれた曲を披露、車からそれを聞いた母は涙した。いよいよ夫の遺体を始末しようと手筈を整えていた所、レストランを買おうとした人物から電話がかかってくる。咄嗟に嘘を吐いたことから、エミリオには映画クルーのためにレストランを開けていたことがバレてしまった。そんな折、アウグスティナから、癌でバルセロナの病院にいるから会いたいと連絡が入った。ソーレに娘を預け会いに行くと症状は悪く、死ぬ前に失踪した母の生死が知りたいと言った。ソーレの家では、母が自分の孫にあたるパウラに、ライムンダが自分を嫌っていると言う事を話した。そしてライムンダはそのままソーレにパウラを預け、夜になると近所の人に手伝いを頼み、川岸に夫を冷凍庫ごと埋めた。アウグスティナは、入院を終え、改めて母の生死を知りたいという事、そして、母の失踪が、ライムンダの父と愛人関係に会った事と彼女の両親の火事での死は関係あるのではないかとライムンダのレストランを訪れて話した。そして諦めきれない彼女は、テレビ番組でも同じことを話したが、耐えきれず途中で退場した。
ボルベール <帰郷>の結末:ライムンダと母の抱えていたもの
ソーレはライムンダに母を見たことを話し、ベッドの下に隠れていた母と引き合わせた。許してほしくて戻ったと言う母とライムンダは夜の街に出て話し始めた。母は幽霊ではなく生きていて、ライムンダのパウラ妊娠が父によるものだった事に気づかなかったのを詫び、復讐しようと行った山小屋でアウグスティナの母親と夫が寝ているのを見つけ火をつつた、自分の遺灰とされているものはアウグスティナのの母親のものだと告白した。そして、自首する前に会ったパウラがショックでボケでしまっていたので死ぬまでそばにいようとし、信心深い村では幽霊だと信じられたことを話した。ライムンダ、ソーレ、パウラ、そして母は、ライムンダの夫を埋めた川岸により、パウラの家へ行き、料理をし食事をした。そこへアウグスティナがテレビの事を謝りに訪れた。夜になると、母親は会うグスティナの元を訪れ注射を打ち、罪滅ぼしに彼女を看取ろうと決め、夫の事を話そうとしたライムンダを、家へ帰した。
以上、映画のあらすじと結末でした。
ボルベール <帰郷>のレビュー・考察:女たちの結束の儀式
料理のシーンは出てくるが、最後まで一緒に食事をすると言うシーンは出てこない。台所という、ある種のテリトリーのような場所で共に料理をし食べると言う事で、疎んでいた彼女達の中に生まれた結束を感じる。
描かれているものが大変に重く、観ている内に苦しくなってくる作品です。その苦しい中にも、母が娘を自分の命に代えてまでも想う愛情が心を打ちます。特に女性は共感できる部分が多いのではないかと思います。子供の父親が誰であっても、母親にとっては子供は宝物なのだと思いました。ペネロペ・クルスが珍しく悪に手を染める激しい女性(裏に愛情があるのですが)を演じています。