第十七捕虜収容所の紹介:1953年アメリカ映画。ブロードウェイで上演された舞台劇を基に映画化した異色の戦争コメディドラマです。第二次世界大戦末期のドイツの第17捕虜収容所を舞台に、同僚からドイツに通じるスパイ呼ばわりされながらも、たった一人で本物のスパイを見つけ出すために奮闘します。
監督:ビリー・ワイルダー 出演者:ウィリアム・ホールデン(J・J・セフトン)、ドン・テイラー(ダンバー)、オットー・プレミンジャー(シェルバッハ)、ロバート・ストラウス(ストッシュ・“アニマル”・クザワ)、ハーヴェイ・レンベック(ハリー・シャピーロ)ほか
映画「第十七捕虜収容所」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「第十七捕虜収容所」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
第十七捕虜収容所の予告編 動画
映画「第十七捕虜収容所」解説
この解説記事には映画「第十七捕虜収容所」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
第十七捕虜収容所のネタバレあらすじ:起
第二次世界大戦末期の1944年。スイスとの国境に近いドナウ川のほとりにあるドイツ軍の第十七捕虜収容所・第4キャンプには、アメリカ空軍兵の捕虜が640人ほど収容されていました。クリスマスも近づいたある夜、アメリカ軍の捕虜二人が収容所から脱走しました。残された捕虜たちは二人が無事に脱出できるか賭けを始めました。しかし、セフトン軍曹(ウィリアム・ホールデン)は脱出に悲観的な意見を述べていました。まもなく銃声がとどろき、逃げた捕虜二人はあえなく射殺されてしまいました。やがて捕虜たちは、脱走計画が失敗したのは捕虜のなかにドイツのスパイがいるからではないかと思い始めました。
第十七捕虜収容所のネタバレあらすじ:承
お人好しのアニマル(ロバート・ストラウス)は人気女優のベティ・グレイブルにお熱を上げていましたが、ベティがバンドリーダーのハリー・ジェイムスと結婚したと聞くや落ち込んでしまいます。一方、セフトンはこっそりと衛兵に賄賂を渡しては密かに外出、ソ連の女囚人が収監されているキャンプに立ち入ったり、極秘裏に煙草や酒、はたまた女性用ストッキングなど色んな物をどこからから仕入れてきて捕虜たちに提供していました。また、セフトンはハツカネズミを走らせて煙草を賭ける遊びや、イモを蒸溜して作ったアルコールを煙草と引き換えに飲ませたり、手製の望遠鏡で女捕虜の入浴場を覗かせたりと、捕虜たちに様々なサービスを提供していました。
第十七捕虜収容所のネタバレあらすじ:転
脱走した捕虜2名が射殺されてから数日後、ボストン生まれのダンバー中尉(ドン・テイラー)が第十七捕虜収容所に収容されてきました。セフトンにとっては、裕福な家に育ったダンバーの存在は面白いものではありませんでした。ダンバーはドイツ軍の軍用列車を爆破したことからシェルバッハ所長(オットー・プレミンジャー)の厳しい訊問を受け、かねてからスパイの疑いをかけられていたセフトンへの疑惑も更に深まっていきました。捕虜たちから袋叩きにされたセフトンは何としてでもスパイの正体を暴こうと機会を狙っていました。やがてセフトンは、スパイの正体は自警委員のプライス(ピーター・グレイヴス)であることを突き止めましたが、もしここで捕虜たちにプライスの正体を明かせばドイツ軍はただ彼を別のキャンプに移すだけであり、プライスを抹殺することはキャンプ全体をドイツ軍による報復に晒す危険性もはらんでいました。
第十七捕虜収容所の結末
クリスマスの日。ダンバーはベルリンへ連行されることが決まり、捕虜たちはダンバーを匿おうとしましたが、シェルバッハは捕虜たちを皆殺しにすると脅してきました。捕虜たちはダンバーを夜のうちに脱走させることを決意、プライスが同行を買って出たのですが、セフトンはプライスに真珠湾攻撃はいつだったか?と質問、プライスが間違った答えをしたことと、何よりもプライスがドイツ軍と通じていた証拠まで発見しました。セフトンはプライスを囮にし、プライスはドイツ軍の集中射撃を浴びて倒れました。その隙にセフトンとダンバーは有刺鉄線を断ち切り、収容所から脱走していきました。
このビリー・ワイルダー監督の映画「第十七捕虜収容所」は、第二次世界大戦末期のドイツ、アメリカ空軍の捕虜が集められた第十七捕虜収容所という、閉鎖的状況での人間の葛藤と、脱走に成功するまでの苦悩を描いた、収容所もののはしりとなった作品で、主演のウィリアム・ホールデンがアカデミー主演男優賞を受賞しましたね。
この”収容所もの”というと、何か暗くて重いというイメージがあるものです。
だが、この映画は暗さはありますが、決して重くはない。
ストーリーは、スリリングに展開するし、男ばかりの生活という特殊な環境の中にあって、登場人物たちは、かなり誇張して描かれており、時にそれは道化的にもなって滑稽ですらあるんですね。
数多い登場人物の中で最も面白いのが、セフトン軍曹(ウィリアム・ホールデン)という男。
この男はなかなか抜け目がなくて、収容所生活をできるだけ楽しくしようと、人造酒を作ったり、望遠鏡を作ったりしている。
その望遠鏡で女兵士のシラミ取り入浴をのぞき見るシーンは、爆笑ものだ。
大きなカバンには、収容所にありそうもないものが、いっぱい詰まっており、煙草などで闇商売をやっているんですね。
“そんなバカな—-“といったようなことが、そう思わせずに説得力を持って描かれているあたりは、さすがビリー・ワイルダー監督の職人芸だと思いますね。