千羽鶴の紹介:1969年日本映画。鎌倉を舞台とする、亡父の愛人たちとのつながりを断つことができない青年の物語。川端康成のノーベル賞受賞記念映画。当初市川雷蔵主演の予定だったが、病気により平幹二郎に交代(市川雷蔵は1969年7月に亡くなる)。脚本は新藤兼人。増村保造・若尾文子コンビの最後の作品になった。
監督:増村保造 出演者:平幹二朗(三谷菊治)、京マチ子(栗本ちか子)、若尾文子(太田夫人)、梓英子(太田文子)、南美川洋子(稲村ゆき子)、船越英二(菊治の父)その他
映画「千羽鶴(1969年)」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「千羽鶴(1969年)」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「千羽鶴(1969年)」解説
この解説記事には映画「千羽鶴(1969年)」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
千羽鶴のネタバレあらすじ:起・父の愛人たち
三谷菊治は鎌倉に住んで東京の会社に通っている。二年前に両親を相次いで亡くし、家には年寄りのお手伝いさんがいるのみ。ある日、千羽鶴の図柄の風呂敷を抱えた二人の女性に栗本ちか子の茶席への道を尋ねる。菊治は、生前父がよく通ったという茶室を見たいというだけの理由でちか子の茶会へ来た。他の客は全員女性。ちか子の狙いはこの茶会で弟子の稲村ゆき子と菊治に見合いをさせること。ゆき子は千羽鶴の風呂敷の女性の一人だった。ゆき子がお点前をする茶席に菊治は着く。そこには太田夫人と娘の文子もいた。二人は正式に招待されたわけではないが、ちか子が夫人に電話をしたら来たのだ。ちか子も太田夫人も生前の菊治の父の愛人だった。菊治は子供のころ見た、ちか子の胸の巨大な黒いあざがトラウマになっていた。ちか子は菊治の父の援助で茶道の先生として成功していたが、菊治の父の茶道仲間の未亡人である太田夫人に父の心が移ってしまったことを恨みに思っていた。太田夫人は茶席でしきりに菊治に話しかける。そして茶会の後、外で菊治を待ち伏せていた。二人は小料理屋に入る。夫人は父親に生き写しな菊治に心を乱し、菊治と関係をもってしまう。菊治が帰宅するとちか子がいた。ちか子は、太田夫人は魔性の女だから気をつけるようにと言う。
千羽鶴のネタバレあらすじ:承・会社を訪れた娘
ちか子の忠告にもかかわらず、菊治は太田夫人との密会を続けた。夫人が父と自分の区別を失っていると思いつつ。ある日、菊治からの電話をもらって会う約束をした太田夫人に、娘の文子がそれを止めるように頼む。夫人は娘の言うことを聞き入れ、断りの電話をするように娘に言うが、文子は直接菊治の会社を訪れ、母との交際を断つように懇願する。文子は不幸な結婚をした母が菊治の父によって幸福を得られたことを理解しているし、菊治の父も好きだったが、今の母のふるまいには耐えられなかった。しかし帰宅する菊治を道で太田夫人が待ち受けていた。二人は夜の海辺へ行く。
千羽鶴のネタバレあらすじ:転・父の茶室
ちか子が三谷家の今はかび臭い茶室の掃除をする。菊治の父が愛した茶室に勝手に稲村ゆき子を招いたのだ。菊治はゆき子と話をして彼女がいいお嬢さんであることはわかるが、彼女と結婚することでちか子に自分の人生を支配されたくはなかった。病気で衰弱する太田夫人は文子が外出したすきに菊治の家を訪れる。彼女は初めて菊治の父の茶室に入った。菊治は夫人の衰弱ぶりに驚く。だが、菊治を常に監視するちか子が文子に電話したために、文子が母を連れ帰る。その夜、夫人は睡眠薬の過剰摂取で死ぬ。
千羽鶴の結末:茶碗を割る
太田家を訪れた菊治に、文子は母の形見の志野焼の水差しを与えた。後日文子は菊治の家を訪れる。母が湯呑に使っていた志野を持参して、それも菊治に贈る。だが、またもちか子が現れ、文子は帰ってしまう。菊治がひと月程北海道に出張した後、会社にちか子が面会に来る。彼女は稲村ゆき子と太田文子の結婚を菊治に教える。特に文子の結婚に菊治は動揺する。だが、文子が和服で菊治を訪れる。家を売って下宿して出版社に勤め始めたと言うが、結婚はちか子の嘘だった。文子は母の形見の志野を割って欲しいと言う。菊治は名品を割りたくはない。菊治が父の形見の唐津焼の茶碗の話をすると、それと並べてそれより劣っているのなら志野を割ると文子は言う。文子は二つを比べて唐津の方がよいと言って志野を割りたがる。菊治の頼みで割る前に志野で茶を点てることにするが、小さい茶碗なので文子は茶筅をうまく回せない。動揺してよろめく文子を菊治が抱きとめて二人は結ばれた。よろめきながら立上った文子は、志野の茶碗を庭石に投げつけ去っていく。文子の前にちか子が現れて、母親と同じ男に抱かれた文子を非難する。
文子は会社に出社せず、菊治が下宿に行くと、どこかへ旅に出てしまったと言う。その夜、文子をさがしつかれて帰宅した菊治に「文子さんは、死ぬつもりかも知れない」とちか子は言う。だが、菊治はそのことばを信じない。文子によって彼は父の呪縛を逃れて生き返ったのだった。その文子が死ぬはずはない。菊治は父の形見の唐津を庭石に叩きつけた。
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