2重螺旋の恋人の紹介:2017年フランス映画。アメリカの女流作家ジョイス・キャロル・オーツの短編小説「Lives of the Twins」をフランスの鬼才フランソワ・オゾンがフランス語に翻案・監督したセクシー・スリラーです。原因不明の腹痛に苦しむ元モデルの女性は精神分析医と出逢い恋に落ちますが、やがて彼には双子の兄がいることを知り…。
監督:フランソワ・オゾン 出演者:マリーヌ・ヴァクト(クロエ)、ジェレミー・レニエ(ポール・メイエ/ルイ・ドロール)、ミリアム・ボワイエ(ローズ)、ファニー・サージュ(サンドラ)、ジャクリーン・ビセット(クロエの母)、ドミニク・レイモン(婦人科医)ほか
映画「2重螺旋の恋人」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「2重螺旋の恋人」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
2重螺旋の恋人の予告編 動画
映画「2重螺旋の恋人」解説
この解説記事には映画「2重螺旋の恋人」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
2重螺旋の恋人のネタバレあらすじ:起
原因不明の腹痛に悩まされている25歳の女性・クロエ(マリーヌ・ヴァクト)。どこの病院で診断を受けても原因は分からず、とある婦人科から精神的なものからきているのではないかとの指摘を受け、紹介してもらった精神分析医のポール(ジェレミー・レニエ)のカウンセリングを受けることにしました。
カウンセリングに通ううち、クロエはポールに少しずつ心を開き始め、自らの境遇を赤裸々に語り始めました。クロエは自身が母(ジャクリーン・ビセット)の一夜限りの過ちで生まれた子であり父の顔は知らないこと、22歳までモデルの仕事をしていたこと、今は仕事がなくてモデル時代の蓄えで生活していること、そしてこれまでの恋愛は形だけで、人を本気で愛したことがないということなど…。母から愛されず、自分が望まれた子ではないことを自覚していたクロエは、自我を保つために想像でいないはずの“姉”を生み出していたことも明かし、やがてクロエとポールは患者と医師という立場を超えて恋愛感情を抱くようになっていきました。それと同時にクロエの腹痛も和らぎ、美術館の監視員としての仕事も決まりました。
2重螺旋の恋人のネタバレあらすじ:承
ポールとの同棲を始めたクロエは、彼の荷物の中からポールはかつて今の姓・メイエとは違う姓・ドロールを名乗っていたことを知ります。不安に感じたクロエに、ポールは今は母型の姓を名乗っているのだといいますがクロエはどうしても納得がいかず、二人は互いに隠し事をしないことと勝手に私物を見ないことを誓いました。
そんなある日、クロエはポールらしき人物が女性と一緒にいるのを目撃、疑問に思って後をつけていくと、その先には“ルイ・ドロール”という精神分析医のクリニックがありました。そこでクロエは偽名を名乗ってそのクリニックに受診してみたところ、出てきたのはポールと瓜二つの男・ルイ(ジェレミー・レニエ(二役))が現れました。ルイはポールの双子の兄だといい、驚いたクロエはポールとの交際を伏せておくことにしました。それにしても見た目は全く一緒なのに、優しく誠実なポールとは違ってルイは傲慢で高圧的…クロエは今後一切ルイのクリニックには行かないことを決めました。
ところが、ポールが言うには姓を変えたのは父がインサイダー取引をしたからだといい、兄弟の存在について否定してきました。優しいけど裏に何かありそうなポールと傲慢だけと単刀直入に話すルイ…クロエはその夜ポールと愛し合いながらも、同時にルイと愛し合っている想像をしてみると元来不感症であるはずの自分が異常なまでに興奮していたのです。クロエはルイと会っていることをポールに伏せておき、知人の女性医師の診察を受けていると嘘をつきました。
2重螺旋の恋人のネタバレあらすじ:転
クロエは密かにルイのクリニックに通い続け、やがて二人は体を重ね合うようになりました。ところで、クロエには愛猫のミロがいるのですが、ポールが猫嫌いなことから猫好きな隣人の女性ローズ(ミリアム・ボワイエ)に預けているのです。しかし、ルイはポールとは対照的で猫が好きであり、オスの三毛猫を飼っていました。
ルイは、三毛猫のオスは母の子宮内ではふたつの胎児ではあるものの、数週間後には片方に吸収されて優勢な方が残るのだと語りました。ルイはこれを “共食い双子”と表現、クロエは心なしか恐怖心を感じました。
ある日、ポールに付き添って医学界のパーティーに出かけたクロエは、参加者にポールの兄弟のことを尋ねてみたところ誰一人聞いたことがないという答えしか返ってきませんでした。やがて精神的に取り乱していったクロエは次第に現実と虚構との区別がつかなくなっていき、一時期は収まったと思っていた腹痛も再発してしまいました。
ある日、クロエは生理を理由にポールとのセックスを断りましたが、ルイは強引にもクロエに迫り、そしてクロエとポールの交際を見破っていたことを明かしました。驚愕するクロエに、ルイは最初に生まれた自分の方が優勢だからポールとの縁を切ったことも得意げに語りました。
2重螺旋の恋人の結末
ポールからプロポーズされたクロエは、自分の体に妊娠の兆候があることを確信しました。ルイは「俺たちの遺伝子は同じだから、俺かポールかどちらの子かは分からない」と言い、クロエはポールと結婚することを告げるとルイは突発的にキレて殴りかかってきました。
ルイから“サンドラ”(ファニー・サージュ)という女性の存在を知らされたクロエは、ポールが学会で留守の間にこっそり私物を探してみたところ、サンドラはポールの元恋人だったことを知ります。ポールの引き出しには一丁の拳銃がありました。クロエはサンドラの同級生を偽って彼女のもとへ出向いたところ、ルイに酒を飲まされてレイプされたこと、精神的にショックを受けて自殺未遂を起こし、今は寝たきり生活であることを知りました。しかし、ポールが言うには、サンドラは二股をかけていたのだといい、自殺未遂は自業自得であるとも語りました。
あくる日、クロエはルイにつきまとわれ、ローズの家に身を寄せました。翌日、これまで隠していた嘘がポールにバレてしまい、クロエはルイとの関係を清算するためにポールの拳銃を持ってルイのクリニックに出向きました。しかしそこにはポールもおり、「ルイの言うことは本当だ」と言ってきました。混乱したクロエは拳銃を取り出して一旦こめかみに宛てましたが、思い直してルイに発砲して射殺しました。その途端、クロエの腹が破裂、彼女は緊急搬送されました。
手術を受けたクロエの体内からは畸形嚢腫が摘出されました。それはクロエの母が彼女を身籠っていたときに宿していた双子の残骸であり、そのままクロエの体内に取り込まれていたのです。クロエは妊娠しておらず、これまでの腹痛の原因はこの畸形嚢腫だったのです。優しく諭すポールに、クロエは想像上の姉は“サンドラ”と名付けていることを明かしました。そしてルイも実在する人物ではなく、クロエの妄想によるものだったことも明らかになりました。
退院したクロエはポールと体を重ねました。窓の外にはサンドラがおり、やがて窓ガラスにひびが入り、パキっと割れたとき不感症だったクロエは絶頂に達しました。
フランス映画祭2018で鑑賞しました。オゾン監督が来日していて、ティーチインを聞きました。映画の中では、精神科医とクライアントがいとも簡単に関係をもってしまいますが、日本ではありえないこと。その辺に質問が及ぶと、「フランス人はすぐ寝てしまうから、フランス的ですね。」とおっしゃっていました。見ていて、途中からもう何が現実で妄想かわからなくなってくるのですが、正解はないので、見ているひとりひとりが考えたりして楽しんでほしいとのことでした。