大地のうたの紹介:1955年インド映画。名匠サタジット・レイの処女作にして代表作。日本の初公開時にも絶賛され、キネマ旬報ベストテンの1位に輝いた。映画史上のオールタイム・ベストにもしばしば選ばれている。音楽は無名時代のラヴィ・シャンカールが担当。
監督:サタジット・レイ・出演:シュビル・バナージ(オプー)、ウマ・ダシュグプタ(ドガ)、コルナ・バナージ(サルバジャヤ)、チュニバラ・デビ(インダー)、カヌ・バナージ(ハリハール)、ほか
映画「大地のうた」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「大地のうた」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「大地のうた」解説
この解説記事には映画「大地のうた」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
大地のうたのネタバレあらすじ:起
20世紀初頭、インド・ベンガル地方のニシンディプールという貧しい村に、ある家族が暮らしていました。一家の主はハリハール。名家の出身で、ヒンズー教の僧侶の資格を持つ勤め人です。生活力に乏しく、給料が3ヶ月も遅配になっているというのに雇い主に文句が言えません。彼は物書きになることを目指していて、発表の当てのない詩や戯曲を書いていました。その妻はサルバジャヤという若い女性で、貧しい中、なんとか食事のやりくりをしています。ただ生活苦のために気が短くなりがちで、同居しているハリハールの従姉インダーが台所で盗み食いするのをひどく叱ったりします。
大地のうたのネタバレあらすじ:承
夫婦には一人娘のドガがいましたが、老婆だというのに怒鳴られるインダーを可哀想に思い、近くの果樹園からグアヴァなどの果物を盗み、インダーに渡していました。やがてサルバジャヤは妊娠して男の子を生みます。つけられた名前はオプー。オプーはのびのびと成長しますが、生活の苦しさは相変わらずです。ある日、ムカージという近所の金持ちの家にドガとオプーが遊びに行ったところ、翌日になってそこの夫人がサルバジャヤに対して怒鳴り込んできました。ドガが娘のビーズの首飾りを盗んだというのです。サルバジャヤは果実を取って戻ってきたドガを問いただしますが、彼女は「盗んでいない」と言い張り、首飾りは見つかりません。
大地のうたのネタバレあらすじ:転
その後、ドガとオプーは旅芝居を楽しんだり、生まれて初めて汽車を見たりと、貧しいながらも子供らしい発見に満ちた暮らしを続けますが、インダーが老衰で死んでから生活の不如意と不幸が一家を襲い始めます。ハリハールが僧侶として成人式に出かけるのですが、式が取りやめになってお金が入ってこなかったため、彼はそのまま町にとどまって帰宅しません。仕送りもないので残された一家は困ってしまい、サルバジャヤは食器などを売りながら何とか生活します。そんな貧しさの中、にわか雨に打たれたせいでドガが肺炎にかかってしまい、そのまま死んでしまいます。
大地のうたの結末
半年ぶりにハリハールが家に戻ってきますが、必死にもうけたお金も携えてきた土産物も、子供の死の前にはただ虚しいだけでした。娘の死のショックもあり、ハリハールは村の長老たちの反対を押し切ってベナレスに引っ越すことを決めます。乏しい家財道具を運び出す時、オプーは棚の奥にムカージの娘の首飾りが隠されているのを見つけます。結局ドガは嘘をついていたのでした。複雑な思いを抱えながら、オプーは牛車に揺られ、生まれ育った村から旅立ちます。
“芸術というものの奇跡をみる映画「大地のうた」”
インドのある片田舎の貧しい一家の暮らしぶりを淡々と描いた、サタジット・レイ監督の「大地のうた」は、見事に結晶した”いのちの詩”とも言える素晴らしい作品です。
インドという異郷の風俗に目を見張りつつも、全く自分たちと変わらない人間の生き方を発見して、ある種の懐かしささえ感じてしまいます。
夢ばかり追って、生活力のない父、生活苦にイライラしながらも、家族への愛を失わない母、ブツブツ文句ばかり言っているお婆さん。
一方、幼い少年オプと、姉のドガは、大自然の中を飛び回ります。そんなある日、お婆さんが、老木が朽ち果てるように死んでいきます。それはまるで、大自然の中の当然の出来事のように、一つの命の終わりを描き、自然の非情さを表出します。
だがそれは、決して残酷な感じはありません。しかし、姉のドガの急な死は、そのあまりの若さ故に、人生の途中で断ち切られてしまったという感があり、死の無残さと、家族の悲しみが胸に迫ってきます。
人間と自然、そして命のかけがえのなさを描いて、この作品は素晴らしい普遍性を獲得したのだと思います。