懺悔の紹介:1984年ソ連映画。旧ソ連のグルジア(現ジョージア) が生んだ世界的巨匠テンギズ・アブラゼの「祈り三部作」の三作目。スターリン時代を想起させる粛清と、その後の苦境を寓話的・象徴的手法で描き、ペレストロイカ期のソ連映画を代表する作品となった。第40回カンヌ国際映画祭 審査員特別大賞・国際批評家連盟賞・キリスト教審査員賞受賞。
監督:テンギズ・アブラゼ 出演者:アフタンディル・マハラゼ(ヴァルラム・アラヴィゼ/アベル・アラヴィゼ)、ゼイナブ・ボツヴァゼ(ケテヴァン・バラテリ)、エディシェル・ギオルゴビアニエ(サンドロ・バラテリ)、ケテヴァン・アブラゼ(ニノ・バラテリ)、メラブ・ニニゼ(トルニケ)その他
映画「懺悔」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「懺悔」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
懺悔の予告編 動画
映画「懺悔」解説
この解説記事には映画「懺悔」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
懺悔のネタバレあらすじ:偉人の墓を掘り返す
ジョージアのある町。聖堂をかたどった繊細なケーキを作る女性ケテヴァンは、側にいた男が新聞を広げて嘆いた声で、元市長ヴァルラムの死を知る。ヴァルラムの葬儀には多くの人が参列し故人の功績と人柄を讃えた。だが翌朝、ヴァルラムの息子アベルは妻の叫び声で目を覚ます。ヴァルラムの遺体が墓から掘り起こされて庭の木に立てかけられていたのだった。遺体が掘り起こされて庭にもってこられる事件がその後2度続いたため、墓地が警察によって監視される。監視にはアベルの息子で学生のトルニケも加わり、トルニケの撃った銃弾が犯人に命中する。逮捕されたのはケテヴァンだった。
懺悔のネタバレあらすじ:道化ヴァルラム
銀色の鎧兜に身を包んだ二人の廷吏に付き添われて法廷にケテヴァン・バラテリが現れ自分がヴァルラムを掘り起こしたことを認めるが、その行為は罪ではないと主張する。彼は埋葬に値しない人物だからだ。そして彼の犯した罪が彼と共に葬り去られてはならなかった。ケテヴァンは自分の過去を語る。
少女だった彼女は、画家の父サンドロと美しい母ニノと暮らしていた。水道管が破裂して大騒ぎの中ヴァルラムの市長就任式が行われたのも三人でアパートの窓から見ていた。町の貴重な文化遺産である聖堂の保全についてサンドロと二人の老人が代表としてヴァルラムに陳情したことで一家とヴァルラムに接点ができる。そのときサンドロとヴァルラムが遠い親戚であることがわかった。ヴァルラムは二人の部下と息子のアベルを連れてバラテリ家を訪れる。陽気なヴァルラムはニノの美しさを称賛し、美声で歌を歌い、家に置かれたサンドロの絵を絶賛する。しかし、君の絵と私とで無知な大衆を啓蒙しようというヴァルラムの呼びかけにサンドロは懐疑的な態度を取る。ヴァルラムたちは窓から馬車に飛び降りて帰っていったが、ケテヴァンがアベルにあげた十字架はヴァルラムが直ちに返した。サンドロはヴァルラムを「道化」であると断言したが、ニノは自動車に乗ったヴァルラムや鎧兜の騎兵たちにサンドロと自分が追いかけられて生き埋めにされる悪夢を見る。
懺悔のネタバレあらすじ:恐怖政治
銀色の鎧兜の男たちがバラテリ家に現れてサンドロを逮捕し絵を押収する。サンドロが「人民の敵」であるという手紙が当局に来たからである。ニノはヴァルラムにサンドロを助けるように頼むが無駄であった。多くの人々が逮捕される。逮捕者が遠くに移送されれば、それは死を意味していた。ニノとケテヴァンは材木置き場に持ち込まれた材木に遠くで暮らす囚人たちが彼ら自身の名を刻んでいると聞いてサンドロの名を探しに行く。人々の精神の支柱であった聖堂も破壊される。やがてサンドロの師にして友人で地域を代表する文化人のミヘイルが逮捕され、続いてミヘイルの妻でニノのために「歓喜の歌」をドイツ語で歌ったエレネ、さらにはニノ自身が逮捕される。
懺悔の結末:ヴァルラムの家族の崩壊
ヴァルラム崇拝者たちはケテヴァンの告発に怒り、否定する。しかしトルニケは祖父の犯した罪に動揺し、父アベルとの間に確執が生じる。アベルも内心では恐怖を抱いていた。
祖父のことを謝罪すべく拘置所にケテヴァンを訪れたトルニケは、精神異常を疑われたケテヴァンが病院送りになることを知る。何度でもヴァルラムの亡骸を掘り返すと宣言しているケテヴァンを墓地から遠ざけるためには病院に入れるのが好都合だった。トルニケは父に彼女は正常だ、病院に行く必要はないと訴えるが、アベルは裁判所の決めたことだと言って取り合わない。自室に立てこもったトルニケは祖父から贈られた銃で自殺する。非を悟ったアベルは自らヴァルラムの遺骸を掘り起こし、崖下へとそれを放り投げるのだった。
映画はケテヴァンがケーキを作っている時に戻る。老婆が聖堂への道を尋ねる。ケテヴァンはこの道はヴァルラム通りで聖堂へは行けないことを教える。老婆は「教会へ通じない道が何の役に立つのですか」と言って去っていった。
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