メキシカン・スーツケース <ロバート・キャパ>とスペイン内戦の真実の紹介:2011年スペイン,メキシコ映画。行方不明になっていたキャパのネガが、メキシコで発見された。スペイン内戦から亡命者と共に戦禍を逃れた写真は何を語るのか。
監督:トリーシャ・ジフ 出演:ファン・ディエゴ・ボト、アーネスト・アロス、アントニオ・デラ・フエンテ、ほか
映画「メキシカン・スーツケース」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「メキシカン・スーツケース」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
メキシカンスーツケースの予告編 動画
映画「メキシカン・スーツケース」解説
この解説記事には映画「メキシカン・スーツケース」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
メキシカンスーツケースのネタバレあらすじ:起・行方不明だったフィルム
2007年、70年行方不明だったスペイン内戦を映した貴重なフィルムが発見された。撮影者はロバート・キャパ、デビット・シーモア通称“シム”、ゲルダ・タロー、4500枚以上のネガのほとんどが未発表の物だった。貴重な資料でもあり写真史、文化史とって貴重ネガはメキシコで発見され、正にスペイン内戦でメキシコへ亡命した人々と運命を共にしていた。
スペインのルビエロス・デ・モラ共同墓地では、内戦時に行方不明兵士として埋められた身内を探がす若者たちの姿があった。彼らにとって祖父母や曽祖父母が巻き込まれている内戦の傷跡はまだ癒えない。しかしスペインではこの内戦を教科書で教える事はなく、今の世代になって内戦について、歴史を無視するのではなく知ろうとする動きが起こっている。
そんな彼らにとって、メキシカンスーツケースの中身は影響力があった。
メキシカンスーツケースのネタバレあらすじ:承・発見の経緯
弟のコーネル・キャパは兄ロバート・キャパの文化的価値も含めた功績を残そうと、ICPを作った。そしてどこかに埋まっていると聞いていたメキシカンスーツケースを探していた。
メキシコシティに住む映画監督のべン・ターヴァーが母の友人の見舞いに行くと、1938年スペインと書かれたネガを貰った。それこそがメキシカンスーツケースだった。
二次大戦の前哨戦のスペイン内戦から戦争写真家というものが始まり、彼らは事実を伝えようと危険も顧みず取った。キャパとシムこの内戦を取材するべきだと、会社から派遣されたわけではなく自らの意思でスペインへ行き、世界中のメディアに写真を送った。彼らは写真で世界を変えられると信じていた。実際、メディアに取り上げられ影響を与えた。キャパ達の前は戦争写真は確立しておらず、最前線の兵士に同行する様はゲリラ兵のようだった。
また、この内戦が民間人を無差別に攻撃の対象としたヨーロッパでの初めての大きな戦争だった。
メキシカンスーツケースのネタバレあらすじ:転・キャパの陰に隠れた人々
キャパの恋人のゲルダ・タローはこの内戦の取材中に、暴走した車の事故に巻き込まれなくなった。それ以来、キャパが恋人を作ることはなかった。
彼女とキャパとの共同作業の写真や、タロー自身が撮った写真を、個人の写真としてどこまで分けるかが問題になった。彼女の作品は、キャパの陰に隠れてしまう事がよくあった。メキシカンスーツケースはもっと複雑。シムの写真もキャパの名義になっていた。キャパが伝説的な存在になり、他の証言者が陰に隠れた。また彼自身が撮影に行った地の本当の姿や意味も隠れてしまった。
パリにあるキャパの暗室助手のチーキー・ヴァイスもまたその陰に隠れた一人だった、彼は焼き付けを行い、写真にタイトルを付けて整理した。彼がメキシカンスーツケースをを作り、複数人の人手を渡り、奇跡的に残ったた探すのを難しくした。
民間人は戦乱を逃れ、北のフランスの国境へ向かった。しかし、フランスからの援助はなく、そんな彼らをメキシコが無条件で支援し、亡命者を受け入れた。その頃他の国々は亡命者を受け入れず、20世紀最大の移民となった。しかしメキシコへ亡命できたのは知識人は政治的は重要人物が多く一般市民が亡命するのは難しかった。その亡命船内で、シムは写真を撮った。
メキシカンスーツケースの結末:亡命者と共に
1940年、フランスがナチスに降伏し、チーキーは自分の身も危ないと、パリを出てメキシコへ向かおうとする亡命者にネガを託した。ヴィシー駐在のメキシコ大使ゴンザレス将軍は、このネガが政治的な資料になるかもしれないとメキシコに持って戻り、物置に保管していた。かくして、写真史において失われたネガだと思っていた内戦のネガは、探していたキャパの弟が死ぬ数ヶ月前に、彼の手に渡った。そして、メキシカンスーツケースツ呼ばれたそれにはキャパ、シム、タローの写真が入っている事も分かった。
そして三人の写真は公開された。
ICPや記者たちは、既に遠い国の出来事ように内戦を語ったが、亡命者の子孫にとっては家族の伝記に他ならなかった。
内戦によって50万人が死亡、20万人が亡命し、スペイン国内に残った人々は内戦終結後36年間フランコ体制のなか弾圧された。キャパとシムもタロー同様、戦争の取材中に死亡した。
以上、映画「メキシカンスーツケース」のあらすじと結末でした。
メキシカンスーツケースのレビュー・考察:戦争の変遷と写真
戦争という物が、兵士同士の物でなく、市民にとって巻き込まれてしまうほど近くなったと同時に、写真の発展によってその様子を知ることもそれ以前の戦争に比べて容易になった。それは報道を通してその戦争を知る側にとっても、戦争が近いものになったと言える。情報網の発達した現在、報道を通してそれが遠い国の出来事ではなく、誰かの生活の犠牲がある事をもう一度考えたい。
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