不夜城 SLEEPLESS TOWNの紹介:1998年日本映画。眠らない街・新宿歌舞伎町を舞台に、「極限の中で燃え尽きる男と女」「命の保証期間はあと3日」と、中国系マフィアの抗争に巻き込まれるアウトローの命と愛をかけた闘いを描いたハードボイルド映画です。1996年第18回吉川英治文学新人賞を受賞した馳星周の同名小説を原作に、『世界の涯てに』の李志毅が監督、『プロジェクト・イーグル』の黄岳泰が撮影監督、『陰陽師』の梅林茂が音楽を担当したアジアン・ノワール・ムービーです。第16回ゴールデングロス賞優秀銀賞受賞作品です。
監督:李志毅 出演:金城武(劉健一)、山本未來(佐藤夏美)、椎名桔平(呉富春)、郎雄(楊偉民)、曾志偉(元成貴)、永澤俊矢(孫淳)、鈴木清順(葉暁丹)、修健(崔虎)、田口トモロヲ(遠澤)、谷原章介(周天文)、山西惇(次郎)、余為彦(徐光耀)、オン・スイピン(葉暁丹の秘書)、堀ひろこ(楊琳)、顧暁東(銭波)、リリィ・イー(楊怡)、馳星周(ビラ配り)、森田芳光(賭博の客)、ほか
映画「不夜城」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「不夜城」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
不夜城の予告編 動画
映画「不夜城」解説
この解説記事には映画「不夜城」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
不夜城 SLEEPLESS TOWNのネタバレあらすじ:起・不夜城、新宿歌舞伎町
「歌舞伎町に群がる奴らは、どんな国籍の人間も寄生虫のようだ」舞台は様々な欲望が蠢く、眠らない不夜城・新宿歌舞伎町です。街では上海、北京、台湾といった中国系マフィアが、利権をめぐって一触即発の状態にありました。「暗闇を勘だけでひたすら飛び回るこうもり」台湾人と日本人のハーフ・劉健一は、子供の内臓以外なら何でも扱う故買屋として、歌舞伎町の裏社会を器用に渡り歩いていました。
ある日、健一はかつての相棒・呉富春が街に舞い戻ってきたという噂を耳にしました。富春は上海マフィアのボス・元成貴の右腕だった男を殺し、逃亡を続けていたのです。「もうアイツとは切れている」「連絡する相手はお前しかいねえ!」健一は元成貴から富春を探し出して、引き渡すように命じられました。その期限は3日間で、それを過ぎれば、健一の命の保証はありません。富春を探すため、健一は動き出します。
不夜城 SLEEPLESS TOWNのネタバレあらすじ:承・妖しい女
「呉富春を売りたい」そんな健一の前に佐藤夏美と名乗る謎の女が話を持ちかけてきました。「新宿じゃ、アイツのクビが金になるからね」残留孤児2世の夏美は富春の女で、異様なほどの嫉妬深さと暴力癖に辟易し、彼の元から逃げてきたと言います。「この女に関わると何かヤバイことになりそうだ」健一は直感します。そんな矢先、富春が動き出しました。富春は夏美が成貴に捕らえられていると勘違いし、成貴の情婦・秀紅のクラブを襲撃したのです。一刻も早く富春を捕らえなければ、健一の命はありません。「君は取り引きのためのただの切り札だ」危機を感じた健一は夏美を利用することを考えます。
「今日1日で街から出ろと言ったのは3人目だ。お前はカタギの商売人になれるが、俺には無理だ」「なぜダメだかわかるか?兄貴は過去にこだわり過ぎるんだよ。時代遅れなんだよ。組織のビジネスは今や国際化している。歌舞伎町が時代についていくためには邪魔な古いものを排除しなければならない。そんな時に富春が現れた…」「俺の頼みを一つだけ聞いてほしい」「わかった…。最後に一つ…あの女に関わるな」健一と兄弟の契りを交わしていた周天文は、忠告します。しかし、夏美に自身と同じ匂いを感じ取った健一は、彼女に惹かれていきました。
不夜城 SLEEPLESS TOWNのネタバレあらすじ:転
そんなある夜、健一の前に富春が現れました。富春から飛び出したのは、夏美の信じられない素性でした。実は夏美は富春の妹で、自分を犯した男たちを富春に体を提供することで殺し続けてきたのでした。富春が歌舞伎町に戻ってきたのも、彼女から助けを求められたからでした。
健一は夏美を囮にして富春に成貴を殺させ、その後、富春を処分して上海マフィア・ナンバー2の銭波に彼の身柄を差し渡す計画を練ります。しかし、健一は計画を前に夏美が信じられなくなります。「一緒に逃げよう。何もかも忘れて…。誰かを裏切ったり、誰かに裏切られたり、そんな事考えなくていい所へ」「もう遅いんだよ。そんな場所はどこにも存在しない」涙を溜めて夏美は訴えますが、健一にはそんな猶予は残されていませんでした。
富春と共に健一は計画を実行しようとしますが、成貴は狂人と恐れられる北京人・崔虎の手によって殺され、富春は成貴を売ら切った殺し屋・孫淳の手に落ちてしまいました。「お前の兄貴を楽にしてくれ」「さようなら」虫の息の富春に、夏美は引き金を引きました。
不夜城 SLEEPLESS TOWNの結末:Unforgettable
これらは全て、薬屋・楊偉民が仕組んだ罠でした。健一にとって優しい祖父のような存在だった楊でしたが、この富春騒動に乗じ、一気に歌舞伎町を牛耳ろうと目論んでいたのでした。健一は夏美と共に楊のもとに乗り込みました。「生きているのが不思議か?」「健一の件は解決だ。だが、この女はやっかいだぞ」楊は健一のおもむろに夏美の隠された真実を語り始めました。実は夏美は富春が殺人強奪した6千万の金を独り占めするため、成貴が富春を殺すように画策していたのでした。
「金は返す」健一は意外な行動をとります。健一は葉暁丹に撃ち殺し、全ての罪を着せ、夏美と共に逃亡を図ります。しかし、待っていたのは、崔虎でした。「今夜の証人として1人残そう。楊を脅す保険としてな。1人が犠牲になれば、1人は生き残れる」崔虎は二人に迫ります。「撃てよ」健一は死を覚悟しますが、夏美は隙を見て逃走を図ります。
「俺もお前もいつかあの女に殺される。お互い、あの女に縁がなかった。一発で殺れ」崔虎は健一に銃を渡しました。「俺は彼女の部屋に入るんじゃなかった。トランクなんか開けるんじゃなかった…」冷たい冬の夜に一発の銃声が鳴り響きました。
それから2年後、楊は東京の中国マフィアのボスにのし上がっていました。彼の70歳の誕生日の夜、会場には日本中の中国マフィアが集まりました。そこには銃を携えた「完全な冷血動物」となった健一の姿がありました。「夏美の仇を討つために、俺が会場に現れるという噂が立った。だがそれは違う。本当は奴に変わって歌舞伎町を牛耳るためだ。…ところで、夏美って誰だ…」。
(二人の想い出の曲『Unforgettable』が静かに流れます。)
以上、映画「不夜城」のあらすじと結末でした。
怪しげなネオン、狭い路地、得体の知れない店に破れたポスター、路上のゴミや空気に至るまで、危険な裏社会の野望とパワーを感じさせ、この映画の歌舞伎町は、まさに超歌舞伎町。
「不夜城」の歌舞伎町は、あくまでも治外法権的な裏世界として描かれている。
そんな中、金城武扮する一匹狼の故買屋・健一は、上海、北京、台湾の各マフィアの抗争に巻き込まれる。
抗争の火種となる中国残留孤児二世役の椎名桔平の演技が大袈裟なのが、この映画のリズムを壊していましたね。
でも「不夜城」は、やっぱりスリリングで、そして美しい。