神様のくれた赤ん坊の紹介:1979年日本映画。昔の女の子供を無理やり押し付けられてしまった若い男は他の父親候補と会うため、恋人と子供を連れて長い旅に出発する。尾道、別府、天草、長崎、唐津など西日本の名所を舞台に疑似家族の絆を描いていくロードムービーです。
監督:前田陽一 出演者:渡瀬恒彦(三浦晋作)、桃井かおり(森崎小夜子)、吉幾三(福田邦彦)、河原崎長一郎(田島の秘書)、吉行和子(高田まさ)、嵐寛寿郎(高田幾松)、ほか
映画「神様のくれた赤ん坊」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「神様のくれた赤ん坊」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「神様のくれた赤ん坊」解説
この解説記事には映画「神様のくれた赤ん坊」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
神様のくれた赤ん坊のネタバレあらすじ:起
エキストラのアルバイトをしながら漫画家を目指している三浦晋作は、同棲中の恋人森崎小夜子から妊娠しているかもしれないと告げられます。甲斐性のない晋作は、育てるわけがないと言い放ち、最初は未婚でも産むと息巻いていた小夜子も、次第に躊躇し始めます。
ある夜、晋作のアパートを小さな男の子を連れた中年女性が訪ねてきました。中年女性は晋作の元恋人あけみが住んでいたマンションの隣人であり、あけみが子供を置いて蒸発してしまったことから、晋作を頼って訪ねてきたのでした。あけみの置き手紙の中には、子供の父親の可能性のある男5人の住所と氏名が記されていました。中年女性は、子供を晋作に押し付けてさっさと帰ってしまいました。晋作は断固として自分の子供ではないと主張しますが、小夜子は呆れかえって家を出ていってしまいます。少年の名は新一と言いました。
神様のくれた赤ん坊のネタバレあらすじ:承
小夜子の妊娠は勘違いでしたが、晋作との関係はぎくしゃくしたままです。晋作のバイト仲間、大津は新一の父探しの旅に出るという晋作に一緒に付いて行ってあげて欲しいと、小夜子に懇願します。小夜子は幼い頃に過ごした町や母の故郷を見たい気持ちもあり、晋作と新一とともに広島の尾道へと旅立ちます。晋作は新一の父親候補で元代議士の田島啓一郎に会い、あけみについて話しますが、東京では沢山の女と遊び歩いていたため覚えていないと言います。さらに田島は10年前にパイプカットをしており、子作りが不可能であることが判明します。
田島の名を語って、あけみと関係を持っていたのは秘書の男でした。新一の養育費として秘書から120万円をせしめた晋作と小夜子は、上機嫌で次の父親候補の住む町、別府へと向かいます。二番目の父親候補青年実業家の福田邦彦はホテルで披露宴を挙げようとしている最中でした。二人は披露宴に紛れ込み、あけみの名をちらつかせ、邦彦の父から100万円を巻き上げることに成功しました。
神様のくれた赤ん坊のネタバレあらすじ:転
次の父親候補の住む町長崎へ行く途中、三人は小夜子の母が暮らしていた天草へと立ち寄ります。そこで小夜子は、母が女郎をしていたという過去を知り、ショックを受けます。三番目の父親候補である元プロ野球選手の桑野弘は、長崎の繁華街でバーテンとして働いていました。晋作はあけみの名を出し、養育費をせびろうとしますが、そこで客と派手な喧嘩を起こしてしまい、敢え無く引き揚げます。
その頃、小夜子は母が働いていた遊郭のそばにぼんやりと佇んでいました。学生風の男に売春婦と間違われた小夜子は、誘われるがままホテルに入ってしまいますが、結局怖気づいて逃げ出します。ホテルに戻ってきて母が女郎だったことを打ち明けると、邦彦は小夜子を優しく抱き寄せました。あくる日、三人は唐津に立ち寄ります。小夜子はここで母とともに暮らした幼少期を思い出します。探し求めてきた景色にようやく巡りあえた小夜子は、懐かしさから涙を流します。
神様のくれた赤ん坊の結末
三人は四番目の父親候補、ヤクザの高田ごろうに会うため北九州へやってきました。しかし高田はすでにこの世を去っており、三代目は妻のまさが継いでいました。まさは晋作と小夜子に豪勢な食事を振舞うと、あっけらかんと新一を引き取ると言い出します。まさは、これまでに新一と同じ境遇の子供達を沢山引き取ってきたと言い、新一もすでに、まさの家の子供達と楽しく遊んでいます。
晋作と小夜子は新一を残し、まさの家を後にします。ようやく子守から解放された二人でしたが、どういうわけが心は晴れません。二人は互いの気持ちが同じであることを確認すると、来た道を引き返していくのでした。
以上、映画「神様のくれた赤ん坊」のあらすじと結末でした。
“ロードムービー”とは、主人公が車や列車などで移動する中で、その過程において様々な人々と触れ合うことにより、人間的に成長していくという映画だが、この前田陽一監督の「神様がくれた赤ん坊」は、まさにこの定義にぴったりな、”ロードムービー”のお手本のような作品だ。
主人公は、エキストラのアルバイトで生活費を稼いでいる同棲中の晋作(渡瀬恒彦)と小夜子(桃井かおり)。
ある日、晋作の子供かもしれないという男の子を押しつけられたことから、この物語は展開していく。
子供の母親は晋作の昔の彼女で、男と逃げてしまったらしい。
この蒸発した母親が「父親の可能性がある男」として、晋作を含む5人の名前をメモに残していたのだ。
「身に覚えがない」晋作は、本物の父親を探しに、子連れで旅に出ることになる。そして、その旅に、小夜子も同行することになって——-。
まず、この映画はロードムービーの基本である主人公が、旅に出る理由が、うまくできている。
しかも、父親候補は、市長選の立候補者、結婚式真っ最中の青年実業家、元プロ野球選手、ヤクザの組長の4人。
地域も尾道、別府、長崎、北九州と振り分けられている。これはどう転んでも楽しくなるはずだ。
この映画は、「反マジメ精神」を貫いた前田陽一監督のまさに代表作とも言える作品だ。
父親探しの縦糸に、小夜子が母親のルーツを探す話を絡ませたり、前半で小夜子がエキストラで練習するセリフが、ラストで大きな意味を持つなど、伏線の張り方も巧みで、脚本もよく練り上げられている。
一見、異質に見える主役の二人も、渡瀬恒彦が持つ軽みを引き出すことで、似合いのカップルになっていると思う。
これだけ軽やかに”人情喜劇”を作れた監督なので、生前、もっとたくさんの作品を撮って欲しかったと思う。