赤い河の紹介:1948年アメリカ映画。ボーデン・チェイスが史実に基づいて執筆した『チザム・トレイル』を基に、いくつもの名作を作り上げてきた監督:ハワード・ホークスと主演:ジョン・ウェインのタッグで制作された西部劇の傑作です。幌馬車隊を離れ、大牧場を築き上げた開拓者が、相棒たちと共にテキサスからカンザスまでの壮大な牛追いの苦難の旅に出ます。
監督:ハワード・ホークス 出演者:ジョン・ウェイン(トーマス・ダンスン)、モンゴメリー・クリフト(マシュー・“マット”・ガース)、ジョーン・ドルー(テス・ミレイ)、ウォルター・ブレナン(グルート・ナディン)、ハリー・ケリー(Mr.メルヴィル)、ジョン・アイアランド(チェリー・ヴァランス)、ハリー・ケリー・Jr.(ダン・ラティマー)、コリーン・グレイ(フェン)ほか
映画「赤い河」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「赤い河」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
赤い河の予告編 動画
映画「赤い河」解説
この解説記事には映画「赤い河」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
赤い河のネタバレあらすじ:起
1851年。開拓民の幌馬車隊と共に旅をしていた開拓民のトーマス・ダンスン(ジョン・ウェイン)と相棒のグルート・ナディン(ウォルター・ブレナン)はテキサス近郊に自分の牧場を構えるのに相応しい土地を見つけました。ダンスンとグルートは幌馬車隊隊長からこの一帯は先住民コマンチ族の縄張りであることを理由に引き留められるもその意思は固いものでした。隊長の娘でダンスンの恋人のフェン(コリーン・グレイ)はダンスンとの帯同を希望しますが、ダンスンは「女は連れて行けない」と彼女に母の形見のブレスレットを渡し、必ず迎えに行くと約束して別れました。
2頭の牛を連れて旅立ったダンスンとグルートはテキサスとの境界線である“赤い河(レッドリバー)”へと向かいましたが、幌馬車隊のいた方向から狼煙が上がっていることを確認、幌馬車隊がコマンチ族に襲撃されたことを知りますが、間に合わないと感じた二人は救出を断念しました。
その夜、川の近くで野営を張ったダンスンとグルートはコマンチ族に襲われるものの辛うじて撃退しました。ダンスンは倒したコマンチの一人がフェンのブレスレットをしていることに気づき、彼女も襲撃の犠牲になったことを悟りました。翌日、ダンスンとグルートは旅の途中で、家族をコマンチ族に殺された一人の少年マシュー・“マット”・ガースと出会い、1頭の牛を連れていたマットを旅に同行させることにしました。やがて3000kmにも及ぶ長旅を終えたダンスン一行はメキシコとの国境付近のリオ・グランデ川の近くで牛を育てるに最適な豊かな牧草地を見つけ、この地に牧場を開きました。ダンスンは連れてきた2頭の牛に自らのイニシャル“D”と赤い河を意味する2本線の焼き印を入れました。
赤い河のネタバレあらすじ:承
14年後の1865年。ダンスンは一生懸命に働いて今や1万頭の牛を保有する大牧場主となっていましたが、折しも南北戦争の影響により牛が売れなくなっており、牧場の経営状態も悪化していました。やがて南北戦争に参加していた、成長して銃の腕前も上げたマット(モンゴメリー・クリフト)がダンスンの牧場に舞い戻り、年をとって頑固者になったダンスンに代わって牧場を仕切るようになりました。
やがてダンスンはテキサスから“サンタフェ・トレイル”を通ってミズーリ州セダリアまで1万頭の牛を売りに行く大規模なロングドライブ(牛追い旅)の計画を立て、鉄道の開通によりセダリア行きよりも安全なカンザス行きの話には全く耳を傾けませんでした。ダンスンはマットとグルート、別の牧場から雇い入れた腕利きのカウボーイのチェリー・ヴァランス(ジョン・アイアランド)、ダン・ラティマー(ハリー・ケリーJr.)、バスター・マッギー(ノア・ベリー・Jr.)、シムス・リーヴス(ハンク・ウォーデン)、ティーラー・イェーシー(ポール・フィックス)、クオ(チーフ・ヨウラチ)、バンク・ケネリー(アイヴァン・パリー)らカウボーイたちを率い、1万頭の牛を引き連れてセダリアまでの過酷な旅に出発しました。
赤い河のネタバレあらすじ:転
出発から1ヶ月が経ったある日、途中の野営地でケネリーが誤って牛たちを刺激してしまい、見張りをしていたダンが牛の暴走に巻き込まれて命を落としてしまいます。牛を400頭も失い、ケネリーはダンスンから制裁を受けた末に一行から離れることになりました。
困難な旅も2ヶ月が過ぎ、先日の牛の暴走の件で食料を失った一行の間には不満が募り始めていました。そして一部のカウボーイたちはダンスンに反旗を翻し、これに業を煮やしたダンスンは以前にも増して態度を硬化させ、カウボーイの中には逃げ出すものも現れました。そして遂に、かねてからダンスンのやり方に異を唱えていたマットらを含めたカウボーイたちはダンスンを置き去りにし、牛を連れてカンザス州アビリーンへと出発しました。その際、ダンスンはマットに「必ず殺す」と言い放ちました。
アビリーンに向けて出発したマット一行は、旅の途中で幌馬車隊がコマンチ族に襲われているところに遭遇、旅で知り合った女性テス・ミレイ(ジョーン・ドルー)らと共に救出に向かいました。何とかコマンチ族を撃退したものの、テスは弓矢を受けて怪我をしてしまい、介抱したマットとやがて心を通わせ合うようになっていきました。
赤い河の結末
マットたちは牛を連れて先を急ぎ、後になってダンスンが仲間たちを引き連れて幌馬車隊の元に現れ、マットから自分のことを聞いていたテスと対面しました。テスはダンスンにマットを愛してしまったことを伝え、ダンスンは子供のいない自分はマットに期待していたことをテスに打ち明けると、彼女に自分の跡取りを産んでくれと頼みました。テスは引き返すことを条件に受け入れ、ダンスンはかつての自分とフェンをテスに重ね合わせて彼女の同行を認めました。
一方、マットたちは出発から100日以上をかけて遂にアビリーンに到着、グリーンウッド商社のメルヴィル(ハリー・ケリー)と牛を売る契約を交わしました。その直後、ダンスンとテスもマットたちを追ってアビリーン入りし、テスは先回りしてマットにダンスンが来たことを知らせました。
ダンスンは遂にマットたちと対峙、決着をつけようとしましたが、そこにテスが銃を手に涙を流しながら介入、ここでようやくダンスンとマットはわだかまりが解けて和解しました。ダンスンはマットにテスと結婚するよう促し、「牧場に帰ったら焼印を変えよう。ダンスンの“D”に赤い河の2本線、そしてマットの“M”だ。全てお前の実力だ」と伝えました。
以上、映画「赤い河」のあらすじと結末でした。
「赤い河」感想・レビュー
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この映画「赤い河」は、西部劇の古典的な名作で、一万頭の牛の大群をカウボーイたちが運んでいく過程での、”父と子の葛藤”を描きながら、格調高く、開拓期の西部を生き抜いた男たちの鉄のような意思を描き切った、まことに爽快な作品だ。
もうもうと砂塵が立ち込めているような、西部の風土感の捉え方も、実に見事だ。
“西部劇の王者”、ジョン・ウェインに絡む、若きモンゴメリー・クリフトが西部男に似つかわしいとは言えないのですが、それが逆に”新鮮な魅力”となっているのが不思議です。ジョン・ウェイン演じるダンスンと、モンゴメリー・クリフト演じるマットは義理の親子。
インディアンに襲われた幌馬車隊のたった一人の生き残りの少年をダンスが引きとって養子にしたのです。カウボーイのダンスンは、恋人をインディアンに殺されるという悲惨な体験を踏み越えて、テキサスに一代で大牧場を築き上げる。
しかし、折しも南北戦争の敗戦のあおりをくらって、南部では牛が売れず、食糧不足の北部に売るにしても、鉄道のある町まで、牛の大群を運んで、延々数カ月の大旅行をしなければならず、途中には強盗団やインディアンもいて、危険極まりない状況になっている。しかし、主人公のダンスンは、養子のマット以下、多くのカウボーイたちと、この冒険に踏み切ることに——–。
この途中の、牛の大群の暴走、インディアンの襲撃、男同士の友情など、勇壮でダイナミックな見せ場がいくつも用意されていて、堂々たる正攻法のリアリズムで、当時の開拓民の苦労やユーモアを再現しようとしているところが、実に素晴らしい。
しかし、このダンスンは、力強く頼もしい男だが、独裁的で部下たちの気持ちを無視して、敢えて危険な道を選ぼうとし、逃げる部下を射殺しようとさえするのです。
そこで、養子のマットがカウボーイたちの期待を担ってダンスンを退け、自らリーダーになるのです。結局、最終的にダンスンとマットは壮絶な殴り合いの末に和解し、ダンスンがマットを一人前の男として認めると共に、若い時の恋人を死なせたという心の傷のため、性格的に異常になっていた彼が、やっと心の健康を取り戻すという、実にいい場面で幕を閉じることになるのです。
このように、この映画「赤い河」は、勇壮でダイナミックな活劇シーンも素晴らしいが、強くて英雄的なジョン・ウェインの父と繊細で勇敢な養子・モンゴメリー・クリフトの”父と子の葛藤”という、愛憎が複雑に絡みあった危険な関係を軸に、時代の歩みと共に考え方の違う新しい世代が登場し、古い世代にとって代わってゆく、そのドラマが、一本がっしりとした背骨をこの映画に通しているのだと思う。
アメリカ映画ではインディアン(原住民) 悪人、開拓者(移住者) 善人、インディアンが善人、開拓者が悪人でインディアン側から描写(表現)したらより面白い映画になるのでは…