イン・アメリカ/三つの小さな願いごとの紹介:2002年アイルランド,イギリス映画。悲しみを背負った家族の苦悩と再生を描くヒューマン・ドラマ。末っ子フランキーを亡くしたサリヴァン一家は、アイルランドからニューヨークへ引っ越した。新しい環境で励まし合い、時に傷つけ合う家族。やがて友人と新たな命を得た彼らは、悲しみに向き合い前へ進んでいく。ジム・シェリダン監督の半自伝的作品。
監督:ジム・シェリダン 出演者:サマンサ・モートン(サラ)、パディ・コンシダイン(ジョニー)、サラ・ボルジャー(クリスティ)、エマ・ボルジャー(アリエル)、ジャイモン・フンスー(マテオ)ほか
映画「イン・アメリカ/三つの小さな願いごと」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「イン・アメリカ/三つの小さな願いごと」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
イン・アメリカ/三つの小さな願いごとの予告編 動画
映画「イン・アメリカ/三つの小さな願いごと」解説
この解説記事には映画「イン・アメリカ/三つの小さな願いごと」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
イン・アメリカ/三つの小さな願いごとのネタバレあらすじ:新天地
舞台は現代アメリカ。10歳のクリスティ・サリヴァンは、幼くして死亡した弟フランキーの言葉を思い出していました。「願い事は願っていいことといけないことがある」「願い事は3つだけ」。クリスティはフランキーの目を見て、それを信じていました。フランキーは赤ん坊の頃階段から転落したことが原因で悪性の脳腫瘍が出来てしまい、1年前、2歳で息を引き取ったのです。深く傷ついたサリヴァン一家は、思い切ってアイルランドからアメリカへ移住することにしました。
休暇旅行と偽って国境を越えることにした一家でしたが、両親のぎこちない態度や妹アリエルの失言で、検問官に不審がられてしまいます。そこでクリスティは、無事国境を超えられるようにと一つ目の願い事を使いました。その甲斐あってか順調に旅を続けた一家は、ついにニューヨークにたどり着きます。行き交う大勢の人、夜を彩る街の明かり。一家は興奮し、クリスティはいつも回しているビデオカメラで熱心に撮影しました。
サリヴァン一家の新しい住まいは、「ジャンキー・アパート」と呼ばれるほど治安の悪いアパートの一室です。鳩が住み着いていた部屋を掃除して、どうにか住めるようにしました。人懐こい性格のアリエルは、すぐに周囲の人々と仲良しになります。母サラは教師の働き口が見つからず、アイスクリーム店で働き始めました。売れない役者である父ジョニーはたくさんオーディションを受けますが、なかなか役を貰えずにいます。
イン・アメリカ/三つの小さな願いごとのネタバレあらすじ:新しい命と新しい友人
貧しい生活を送るサリヴァン一家は、初めて経験するニューヨークの夏に辟易していました。一家は涼を求めて映画館へ行き、「E.T.」を観ます。アリエルはE.T.が最後に帰ってしまったことで落ち込んでいました。帰り道、アリエルはイベントの屋台でE.T.人形を見つけます。ボールを穴に7個入れられれば人形を貰えるらしく、ジョニーは張り切って参加しました。しかし最後の1個がなかなか入らず、最終的に有り金を全て注ぎ込むことになります。クリスティが二つ目の願い事として成功を祈ると、ボールは吸い込まれるように穴に入りました。興奮して帰宅した両親は、娘達をアイスクリーム店へ行かせセックスに耽ります。しかしどうしてもフランキーを忘れられず自分を責めるサラは、ふいに黙り込んで目に涙を浮かべました。この夜、サラは妊娠します。
秋になり、姉妹はカトリックの学校に通い始めました。学費を稼ぐため、ジョニーはタクシードライバーの夜勤を始めます。初めて迎えたハロウィーンで、「トリック・オア・トリート!」と言いながらアパートのドアを叩くサリヴァン姉妹。しかし住人は誰も出て来てくれません。唯一ドアを開けてくれたのは、日頃から暴れたり大声を上げたりすることで有名な黒人男性マテオでした。彼は仮装した姉妹に驚きつつも、優しく部屋に招き入れます。姉妹からフランキーのことを聞いたマテオは涙を流し、小さな貯金箱をプレゼントしてくれました。サラはマテオを食事に招待してもてなしますが、ジョニーは気味悪がって拒絶します。マテオは新しい赤ん坊が幸せを運ぶと話しました。その言葉にサラは安心し、穏やかな気持ちになります。それもジョニーには面白くありませんでした。
イン・アメリカ/三つの小さな願いごとのネタバレあらすじ:現実
胎児の動きを感じられないサラは、不安になり病院で検査を受けます。診察した医者は残酷な事実を告げました。月足らずだと赤ん坊は死亡し、出産が遅れればサラの命が危ないらしいのです。サラは娘達に心配をかけまいと懸命に明るく振舞いますが、その痛々しい姿にジョニーの心は限界でした。真夜中にサラと口論したジョニーは、苛立ちのあまり部屋を出ていきます。そしてマテオの部屋に押し入り、彼を侮辱しました。自分の苦しみを喚き散らし、サラに惚れているのかと詰め寄るジョニー。するとマテオは「いいや 君を愛してる」と答えました。サラとクリスティとアリエルのことも、まだ生まれていない子のことも、ジョニーの怒りも全ての命を愛していると叫ぶマテオ。
ジョニーはマテオが不治の病に冒されていることを知ります。これをきっかけに2人は友情で結ばれ、ニューヨークには冬が訪れました。アリエルは日に日に悪くなるマテオの病状を心配します。マテオは、自分はE.T.のようなエイリアンで、別の惑星から来たので地球の空気が肌に合わないのだと話しました。そしてもうすぐE.T.のように家に帰るのだと呟きます。その時は必ずサヨナラを言うと約束しました。しばらくしてサラが入院します。サラと赤ん坊を心配し、クリスティとアリエルの世話を引き受け、必死に働くジョニー。しかし入院費用は高額で、すぐには用意出来ません。追い詰められたジョニーの不安はアリエルにも伝播し、時折様子がおかしくなりました。表にこそ出しませんが、クリスティも辛い思いを抱えています。
イン・アメリカ/三つの小さな願いごとのネタバレあらすじ:死と生と
春が来て、予定よりだいぶ早くサラは出産の時を迎えました。小さな赤ん坊は泣き声すら上げません。医者は数時間以内に輸血しなければ助からないだろうと警告。サラはパニック状態となり、フランキーはどこだと喚き始めます。そしてフランキーが死亡したのはジョニーのせいだと罵りました。サラを落ち着かせたジョニーは、家族と話し合いの場を持ちます。赤ん坊と同じ血液型はクリスティだけでした。クリスティは躊躇いますが、輸血に協力する決意をします。
フランキーが死んで1年、自分が家族を支えてきたと訴えるクリスティ。彼女も彼女なりに深く傷つき、それでも両親に心配をかけないように気を張ってきたのです。クリスティは血を抜かれながら、周囲の大人達の笑顔を見ていました。皆目は笑っていません。クリスティは脳腫瘍と戦いながら笑みを浮かべたフランキーの気持ちを察しました。赤ん坊は輸血を受けても身動きひとつしません。
ちょうどその頃、マテオが息を引き取りました。すると赤ん坊は目を開いて泣き始めます。更にマテオはサラの入院費用も全額完納してくれていました。一家はマテオに深く感謝し、赤ん坊の名前を「マテオ」にします。サラと赤ん坊が退院し、クリスティは笑顔でアパートに迎えました。しかしアリエルは、約束を守って貰えなかったことに悲しみを募らせマテオの部屋を歩きます。
イン・アメリカ/三つの小さな願いごとの結末:三つ目の願い事
夜。片付けをしていたクリスティは、ジョニーに呼ばれてベランダへ出ます。空には大きな月が浮かんでいました。ジョニーはマテオが自転車に乗って、月の前を横切りながらサヨナラの挨拶をしていると言います。クリスティは笑顔になってアリエルを呼びました。アリエルは小さな手を精一杯振ってマテオに別れの挨拶をします。クリスティは「フランキーにも“さよなら”を」とジョニーに訴えました。
それは彼女が考え抜いて選んだ三つ目の願い事。ジョニーは戸惑いながらも、「さよなら フランキー」と呟き現実を受け入れます。そして涙を流し、サラと抱き合いました。満月がニューヨークの街を見下ろし、この映画も終わりを迎えます。
以上、映画「イン・アメリカ/三つの小さな願いごと」のあらすじと結末でした。
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