理想の夫(別題:理想の結婚、理想の良人)の紹介:1947年アメリカ映画。原作は数度に渡って映画化されているオスカー・ワイルドの同名戯曲で1895年の作品。清廉潔白と評判の政治家が、過去の罪を知る女性に脅迫され苦悩するドラマ作品。高潔な政治家ロバート・チルターンと誠実な妻ガートルードは、公人の模範と誰もが認める仲睦まじい夫婦だった。ところがウィーン上流階級の顔チェブリー夫人がロバートに近付き、旧悪を暴露されたくなければ自分の要求を呑めと脅迫する。ロバートはガートルードを失うことを恐れ、親友アーサー・ゴーリング卿に相談するのだが。
監督:アレクサンダー・コルダ 出演:ポーレット・ゴダード(ローラ・チェブリー)、マイケル・ワイルディング(アーサー・ゴーリング卿)、ヒュー・ウィリアムズ(ロバート・チルターン)、ダイアナ・ウィンヤード(ガートルード・チルターン)、C・オーブリー・スミス(キャバーシャム伯爵)ほか
映画「理想の夫」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「理想の夫」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「理想の夫」解説
この解説記事には映画「理想の夫」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
理想の夫のネタバレあらすじ:忍び寄る過去の罪
舞台は1895年のイギリス、ロンドン社交期。新進気鋭の政治家ロバート・チルターンは、高潔な人物として有名でした。その妻であるガートルードもまた女性の高等教育や婦人参政権の分野で活躍しており、夫妻はイギリス公人の模範であると誰もが認めるところです。ロバートは潔癖で嘘を嫌う妻を心から愛し、ガートルードも完璧な夫を尊敬していました。
ある夜、チルターン夫妻はパーティーを催します。着飾った大勢の人々の中には、ロバートの妹メイベルや親友アーサー・ゴーリング卿の姿もありました。アーサーに恋をしているメイベルはアプローチを続けていますが、独身を謳歌するアーサーはメイベルに惹かれつつも明確に求婚はしていません。そんな中、招かれざる客がやって来ました。ウィーン上流階級の顔、ローラ・チェブリーです。学生時代から彼女を知るガートルードは、その不誠実で信用ならない人柄を心底嫌っていました。
チェブリー夫人はロバートに近付き、2人きりになると意外なことを言い出します。現在英国政府が議論しているアルゼンチンの運河計画について、ロバートに賛成して欲しいというのです。チェブリー夫人は運河計画に多額の投資をしているため、計画が頓挫すれば大損を被ってしまいます。運河計画反対派のロバートが申し出を断ろうとすると、チェブリー夫人は彼がかつて犯した罪を暴露すると脅迫してきました。証拠となる手紙も持っていると笑うチェブリー夫人。ロバートは激しく動揺しますが、結局要求を呑むしかありませんでした。
理想の夫のネタバレあらすじ:ロバートの苦悩
パーティー終了後、メイベルは落ちていたダイヤモンドのブローチを拾いました。見覚えのあるアーサーがそれを預かり、チルターン家を後にします。その夜、ガートルードは様子のおかしいロバートに詰め寄り、チェブリー夫人と何を話したのか尋ねます。そして彼が夫人の影響で運河計画の意見を変えたことを知り激怒しました。ガートルードは改めて運河計画に反対する旨の手紙をロバートに書かせ、それをチェブリー夫人に届けさせます。
翌日。追い詰められたロバートは、アーサーに全てを告白し相談に乗って貰いました。閣僚の秘書をしていた若い頃、ロバートは懇意にしていたアルンハイム男爵に唆され、スエズ運河への出資に関する資料を盗み読みしました。内閣の機密であるその内容をアルンハイム男爵に手紙で知らせ、見返りとして報酬を受け取り議会に入ったのです。その手紙をチェブリー夫人はアルンハイム男爵から受け取っていました。
2人はどうやら愛人関係にあったようです。ロバートは地位や名誉よりガートルードを失うことに苦しんでいました。嘘や誘惑といったものと一切無縁の彼女は、ロバートの過ちを決して許さないでしょう。アーサーは現在の立派なロバートを知っている分、何故過去の罪に縛られなければならないのか心底不思議に思いました。項垂れる親友を励まし、力になると約束します。
理想の夫のネタバレあらすじ:罪と混乱
ロバートの手紙を受け取ったチェブリー夫人ですが、簡単に引き下がるはずがありません。彼女はチルターン家を訪ね、昨夜ブローチを紛失してしまったとガートルードに言いました。ブローチの件を知らないガートルードはチェブリー夫人を侮辱し、怒った夫人はロバートの罪を暴露してしまいます。ちょうど部屋にやって来たロバートはチェブリー夫人の話を否定することも出来ず、ただ追い出すしかありませんでした。
ロバートのことを欠点の無い完璧で特別な人間だと信じていたガートルードは、弁解しようとする彼を強く拒絶してしまいます。混乱するガートルードは会いに行きたいという手紙をアーサーに出しました。手紙を受け取ったアーサーは心配して彼女の到着を待ちますが、タイミング悪く父親のキャバーシャム伯爵が現れます。彼はいつまでも結婚せずフラフラしているアーサーに説教をしにやって来たのでした。アーサーは仕方なく、使用人にこれから訪ねて来る婦人を応接室に通しておくよう言い含めてキャバーシャム伯爵の相手をします。
しばらくしてやって来たのはチェブリー夫人でした。使用人は彼女をアーサーの客人と勘違いして応接室に通してしまいます。チェブリー夫人はそこでガートルードの手紙を見つけ、事態を把握しました。
理想の夫のネタバレあらすじ:アーサーの悪女退治
アーサーがようやくキャバーシャム伯爵の相手を終えると、今度はロバートが訪ねて来ます。ガートルードに拒絶され、絶望に沈むロバート。その時、彼は隣室の物音に気付きました。アーサーの制止も聞かずドアを開け、チェブリー夫人の姿を見たロバートは激怒します。アーサーがチェブリー夫人と通じ、自分を裏切ったと勘違いしたのです。ロバートが出て行ってから行き違いに気付いたアーサーは驚愕しました。チェブリー夫人は油断ならない笑顔を浮かべ、アーサーに取引を持ちかけます。彼女は証拠の手紙と引き換えに、アーサーに結婚を迫りました。
実は2人は以前婚約していたのですが、チェブリー夫人の裏切りで関係が壊れていたのです。アーサーは呆れたように笑い、チルターン夫妻の愛を汚したチェブリー夫人を拒絶しました。そして言葉巧みに、昨夜メイベルから渡されたブローチをチェブリー夫人の手首に装着します。夫人はブレスレットになるとは知らず驚きました。これは元々彼女の物ではなく、盗品だったのです。それを見抜いたアーサーは、逮捕されたくなければ手紙を渡すようチェブリー夫人に迫りました。
チェブリー夫人は必死にブレスレットを外そうとしますが、仕組みが分かりません。彼女は観念して、証拠の手紙をアーサーに渡しました。しかし転んでもただでは起きないのがチェブリー夫人。彼女はアーサーの目を盗んでガートルードの手紙をドレスに隠しました。恋文のようにも見えるこの手紙をロバートに送り、チルターン夫妻の仲を徹底的に壊してやろうと目論みます。
理想の夫のネタバレあらすじ:理想ではない夫
下院では運河計画について議論が始まっていました。ロバートは自分の意志を貫き、運河計画反対の演説を行います。周囲から賞賛されたものの、ロバートは暗い表情で議場を後にしました。翌日、チェブリー夫人の企みでガートルードの手紙がロバートの手に渡ります。しかし宛名が無かったことから、彼は自分宛の手紙だと勘違いしてガートルードの部屋に急ぎました。
ガートルードのもとには、アーサーから証拠の手紙が届いています。ロバートはそれを燃やしてガートルードと抱き合いました。その後訪ねて来たキャバーシャム伯爵から、首相がロバートを入閣させようとしていることを知らされます。しかしロバートは過去に罪を犯した自分は相応しくないと考え、辞退する旨を伝えました。ガートルードも賛成します。キャバーシャム伯爵からそれを聞いたアーサーは急いでガートルードを訪ね、何故ロバートの欠点を認めてやらないのかと非難しました。男性の罪を許すのが女性の役目だと諭され、ガートルードは考えを改めます。
ガートルードは理想をロバートに押し付けることをやめ、夫妻は絆を深めました。アーサーはメイベルにプロポーズして結婚することになります。チェブリーはウィーンに帰り、この映画は終わりを迎えます。
以上、映画「理想の夫」のあらすじと結末でした。
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