サイコ2の紹介:1983年アメリカ映画。アルフレッド・ヒッチコック監督の傑作のひとつ『サイコ』(1960年)の約23年ぶりの続編となるサイコ・スリラーです。前作の事件により22年もの間精神病院に収容されていた殺人犯が社会復帰を果たそうとしますが、彼を憎み病院に戻そうとする母娘、そして自らの精神に宿る母との関係に悩むことに・・・。
監督:リチャード・フランクリン 出演者:アンソニー・パーキンス(ノーマン・ベイツ)、ヴェラ・マイルズ(ライラ・ルーミス)、ロバート・ロッジア(ビル・レイモンド博士)、メグ・ティリー(メアリー・サミュエルズ・ルーミス)、デニス・フランツ(ウォーレン・トゥーミー)、ヒュー・ギリン(ジョン・ハント保安官)、ロバート・アラン・ブラウン(ラルフ・スタットラー)、クローディア・ブライアー(エマ・スプール)、リー・ガーリントン(ミルナ)、オズ・パーキンス(ノーマン・ベイツ(少年期))ほか
映画「サイコ2」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「サイコ2」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
サイコ2の予告編 動画
映画「サイコ2」解説
この解説記事には映画「サイコ2」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
サイコ2のネタバレあらすじ:起
かつて殺害した母親が精神に同居している男、ノーマン・ベイツ(アンソニー・パーキンス)がマリオンという女性を殺害してから22年(前作『サイコ』参照)。精神病院に収監されていたノーマンは、精神異常が完治したと判断され、22年ぶりに釈放されました。
マリオンの妹ライラ・ルーミス(ヴェラ・マイルズ)は裁判所に強く抗議しましたが聞き入れられず、ノーマンの主治医である精神科医ビル・レイモンド博士(ロバート・ロッジア)に彼が再び犯罪に走ったらあなたの責任だと吐き捨てました。
ノーマンがかつて経営していたモーテルはウォーレン・トゥーミー(デニス・フランツ)という人物が管理していました。自宅に戻ったノーマンは、2階の窓に何者かの人影が写ったかのような気がしました。
サイコ2のネタバレあらすじ:承
レイモンドの紹介により、自宅近くの町フェアヴェイルのダイナーで働き始めたノーマンは、そこで恋人と喧嘩して捨てられたというウェイトレスのメアリー・サミュエルズ(メグ・ティリー)と知り合いました。ノーマンは帰る場所がないと言うメアリーのためにモーテルの部屋を用意しましたが、勝手にモーテルに女を連れ込み、しかも部屋からドラッグが見つかったとしてウォーレンを解雇しました。ウォーレンはノーマンを狂人呼ばわりして罵倒しました。
メアリーは同僚からノーマンが精神病院に収監されていたことを聞いており、ノーマンに過去と向き合うよう諭しましたが、自分は完全に正常に戻ったと思っているノーマンは未だに母との過去が尾を引いていました。
翌日、ダイナーに出勤したノーマンは、「アバズレを家に入れないでほしい」という母からのメモがあることに気づいて動揺、同僚たちにその話を信じてもらえなかったことからダイナーを辞めてモーテル経営に専念することにしました。引き続きメアリーをモーテルに泊めることにしたノーマンでしたが、ウォーレンは荷物をまとめていたところを何者かによって殺害されました。
サイコ2のネタバレあらすじ:転
ノーマンの母の部屋はいつの間にか片付けられて元に戻っており、そこには「追い出さないと自分が殺す」という母からのメモがありました。その直後、ノーマンは屋根裏部屋に閉じ込められてしまい、その間に地下室に無断で侵入したカップルが何者かに襲われ、女は逃げたものの男は殺害されてしまいました。
捜査に乗り出したジョン・ハント保安官(ヒュー・ギリン)はライラからノーマンの仕業だと伝えられますが、ハントはメアリーがノーマンの元にいることに疑問を抱きました。一方、ノーマンはちらつく母の影に自分はまたかつてのように狂気が宿り始めているのではないかと思うようになりました。ノーマンは一連の事件の犯人は実は生きていた母の仕業だとレイモンドに話しましたが、レイモンドは改めてノーマンの母は死亡していることを確認しました。
実はメアリーの正体はライラの実の娘であり、ライラは娘をノーマンに近づけ、自らはノーマンの母に変装して煽り立てることでノーマンを再び狂気に陥れようと目論んでいたのです。しかし、ノーマンと接することで情が移っていたメアリーはライラの企みに疑問を抱き、ライラに止めるよう進言するも聞き入れてもらえませんでした。ところが、ライラは何者かに殺害されてしまいます。
サイコ2の結末
やがてウォーレンの死体が沼地から発見され、このままではノーマンが逮捕されてしまうと思ったメアリーは彼を連れて逃げようと考えました。ところが、ノーマンは電話で“母”と会話をしており、メアリーは真実を打ち明けても信じてもらえませんでした。メアリーはライラが使っていた変装用のカツラなどを使ってノーマンの母に扮し、再び説得を試みようとしましたが、現れたレイモンドを誤って刺殺してしまいました。
完全に正気を失ったノーマンはメアリーをすっかり母だと思い込んで迫りましたが、メアリーは偶然にもライラの死体を発見、ノーマンが殺したのだと思い込んで逆上し彼を殺そうとしましたが駆け付けた警察に射殺されました。
一連の事件の犯人はライラとメアリーとされ、ようやく平穏が訪れようとしていたある時、ノーマンの元に以前ダイナーで働いていた時にお世話になった初老の女性エマ・スプール(クローディア・ブライアー)が訪れました。エマは自分こそがノーマンの実の母であると打ち明け、かつて精神疾患を患ったエマは自分がノーマンを育てられないと悟って妹夫婦に預けたこと、そして一連の事件はノーマンを守るために全て自分が行ったことを明かしました。
その話を平然と聞いていたノーマンは、突如背後からシャベルでエマの頭を殴打して殺し、その死体を母の部屋へと運びました。再び母が精神に宿ったノーマンは、“母の指示”でモーテルの営業を再開することにしました。
以上、映画「サイコ2」のあらすじと結末でした。
この映画「サイコ2」は、アメリカ映画史上に残るスリラーの傑作「サイコ」の続篇。
あの映画で、”サイコ”という言葉を一般通用語にまで広げた犯人役をアンソニー・パーキンスが演じています。
彼が、精神病院に入院させられるところで「サイコ」は終わったのですが、現実の時の流れと同じ22年後、彼が精神病院を出て来るところから、この続篇は始まります。
あの淋しいモーテルに帰って来た、アンソニー・パーキンス扮するノーマン・ベイツが、何をするのか?
続篇の興味は、ここに集中します。
彼にまといつくヴェラ・マイルズ。
「サイコ」で殺されたジャネット・リーの妹役で、前作でも謎を追って、彼の正体を暴く役でした。
姉を殺された恨みは、22年たっても消えるはずはなく、パーキンスの釈放に徹底して反対するのです。
加えて、素性の不明な若い女性や精神科医が入り乱れて、再び恐ろしい連続殺人が展開していくのです。
パーキンスが、またもや罪を犯しているのか、それとも真犯人は別にいるのか?
「サイコ」の続篇を作りたいとの願望を込めて、3本の脚本が書かれ、その中から選ばれたというだけに、真犯人登場のトリックは、なかなかのものです。
この映画の監督は、リチャード・フランクリン。
アルフレッド・ヒッチコック監督に学んだ事を誇りとし、ヒッチコックへの愛をたっぷり込めて演出しているので、あちこちにヒッチコック・タッチの再現が見られて、嬉しいですね。
しかし、何よりもこの映画で心に残るのは、22年という歳月の流れ。
それは主人公のアンソニー・パーキンスやヴェラ・マイルズの表情からも読みとる事が出来るのですが、なかでもショック表現の差に、そのことが歴然と表れているんですね。
ヒッチコックを信奉しながらも、自然に表れるリチャード・フランクリン監督のショック演出の違い。
この映画の冒頭で、「サイコ」の史上名高いシャワー殺人が出て来ますが、この殺しと最後のクライマックスでの殺しは、形は似ていても、血や凶器への感覚は、全く別物なんですね。
22年の歳月、我々の感覚がどう移っているのか。
より強い刺激を求めているという事実を思い知らされて、ゾッとするのです。