女の一生の紹介:1962年日本映画。明治、大正、昭和、そして戦後まで、女の幸せをあきらめひたすら家のために生きる女の物語。旅順陥落を祝う提灯行列が街を照らす夜、貧しい少女は堤家の門をくぐる。それが彼女の人生を変えた時だった。文学座のヒット作となった森本薫作の戯曲の映画化。杉村春子の舞台での当たり役を京マチ子が演じる。
監督:増村保造 出演者:京マチ子(布引けい)、田宮二郎(堤栄二)、叶順子(堤知栄)、東山千栄子(堤しず)、小沢栄太郎(堤章介)、高橋雅也(堤伸太郎)その他
映画「女の一生」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「女の一生」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「女の一生」解説
この解説記事には映画「女の一生」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
女の一生のネタバレあらすじ:木戸口をくぐる
明治三十八年。十六歳の布引けいは両親を失い、叔父夫婦に引きとられていたが、貧しい一家には歓迎されず、こきつかわれていた。その日はけいの誕生日だったが、叔父夫婦の娘が、けいの着物を勝手に着ていたことをきっかけに喧嘩になり、その結果、家を追い出される。
旅順開城を祝う提灯行列が続く東京の街を歩き疲れて、ある屋敷の前でけいは休むが、家から聞こえてくる「アニー・ローリー」の歌に誘われるように木戸口をくぐってしまう。その日は一家の女家長で、亡夫の始めた堤洋行という商社を守っている堤しずの誕生日で、亡夫の弟で大陸浪人の章介、しずの二人の息子と二人の娘、堤洋行の事業のパートナーの息子で中国から日本に留学している孫、長女総子の婚約者で銀行員の野村精三が集まっていた。
その日、次男の栄二がしずに贈ったきれいな櫛が庭先に置いてあるのを見たけいが、ついつい自分の髪に櫛をさしてしまったのを発見した栄二は、けいの身の上を気の毒がり、けいを置いてやってほしいと母に頼むものの、しずはけいを諭して帰らせる。だが、章介が自分は日清戦争で足を悪くし、けいの父親は戦死し、堤洋行は大企業になったと話すのを聞いた栄二は、矢も楯もたまらず、けいを追いかけて家に連れ帰る。
女の一生のネタバレあらすじ:女の一生の大事
5年が過ぎた。けいは堤家の正式な養女となったが、今も女中のように働く。5年前の櫛はけいの物になっていた。栄二とは一番の仲良しだが、長男の伸太郎もそんな二人をうらやましく思っている。次女のふみが精三と接近しているのが長女総子にはおもしろくなかった。しずはよく働き会社の仕事にも関心のあるけいを最も頼りに思うようになっていた。とうとう、長男伸太郎の妻になり堤家と会社を支えるようにけいに言う。けいは少し考えさせてほしいと言う。それは横で話を聞いていた章介が言うように女の一生の大事だった。
けいの態度を見て母親が兄とけいを結婚させる気だと知った栄二は母親にけいと結婚すると宣言するが、勘当を申し渡されてしまう。栄二はけいに、革命活動に身を投じるために間もなく帰国する孫と共に中国に行こうと誘うが、しずへの恩義を感じるけいは、かえって伸太郎との結婚を決意し、栄二への愛のかたみである櫛を折った。そんな事情を知らないふみは精三と結婚することになったと陽気に話して、けいに祝福される。
女の一生のネタバレあらすじ:堤家を支える
大正8年。既にしずはこの世になく、けいには知栄という女の子が生まれていた。けいの目覚ましい働きで堤洋行の事業は順調だった。だが、家庭では、知栄が家にいない母に不満をもち、会社を妻にまかせきっている伸太郎、まだ嫁に行っていない総子は自分たちの居場所が家に無いように感じていた。精三と結婚したふみも、結婚すると人並みに亭主関白になってしまった夫に不満で、かつて自分の結婚を祝福したけいを逆恨みしていた。
女の一生のネタバレあらすじ:帰ってきた男
昭和12年。堤洋行の社長室には、その日知栄とお見合いをする予定のエリート陸軍軍人が来ていたが、栄二が突然帰ってきたという電話があり、けいはその日のお見合いを中止にする。家では栄二が初めて会う知栄から、横浜の学校で中国語を教える伸太郎が、今はけいと別居していることを教わる。栄二は27年間様々な仕事をしながら中国を転々としていた。けいは横浜の伸太郎を訪れて、栄二の前で自分たちの関係をとりつくろうために東京の家に帰ってほしいと頼むが、拒否されてしまう。
けいを屋敷の前で待ち受けていたのは刑事たちだった。けいは刑事たちを家に入れたことを栄二に教える。警察に協力することがけいにとって堤家を守る道だった。栄二は治安維持法違反で逮捕される。手錠につながれた叔父を見た知栄は母親を非難し、もう帰ってこないと言って横浜へと去った。章介だけが、けいの生き方を理解していた。
女の一生のネタバレあらすじ:夫の死
太平洋戦争の敗色濃厚な日本。久しぶりに家を訪れた伸太郎は女中に、自分がこの家の主であることを説明しなければならない。彼がけいに会いに来た目的は、知栄の音楽家の夫が出征することになったので、困窮する知栄のために、二人いる知栄の子供をこの家で引き取ってほしいと言うことだった。けいは喜んで承諾し、知栄や伸太郎も家に戻るといいと言う。伸太郎もその気になりかけたが、けいがしずの話をすると、怒りがこみあげ、もうこの家には帰らないと言う。しかし、門のところで心臓発作を起こし、けいのことが好きだと言い残して死ぬ。
伸太郎の葬儀が済んだ夜、堤洋行の積み荷を積んだ船がまた沈められたことが分かり、けいは、しずから引き継いだ会社を潰してしまうことに悔いが残るが、会社の清算を宣言する。空襲警報が鳴り、けいは章介に、孫たちを長野の知人の家に疎開させる話をするが、章介は最後までけいの近くにいて、彼女を支える決意を言う。
女の一生の結末:家を守る
戦争が終わった。堤家の屋敷は門を残して焼け落ち、けいが一人防空壕の中で生活していた。皆は疎開したが、章介だけは空襲の時に逃げ遅れて死んでいた。そこへ釈放された栄二が帰ってくる。彼は自分がけいを堤家に入れたことで、彼女の人生を犠牲にしたと考えている。今日は彼女を堤家から連れ出し、新しい人生へ導くつもりだった。だが、門のところまで行って、けいは、この門をくぐった時に自分の人生は決まったのだと言う。疎開から戻ってくる人たちのためにバラックを建てるつもりだと言って、けいは家にもどっていった。
以上、映画「女の一生」のあらすじと結末でした。
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