禁断の惑星の紹介:1956年アメリカ映画。フロイトの学説を取り入れたSF映画の古典。ストーリー自体はシェイクスピアの「テンペスト」がヒントになっている。召使として出てくるロボット・ロビーが話題を呼び、長く親しまれる人気キャラクターとなった。
監督:フレッド・マクラウド・ウィルコックス 出演:ウォルター・ピジョン(モービアス博士)、アン・フランシス(アルティラ)、レスリー・ニールセン(アダムス機長)、ウォーレン・スティーヴンス(ドクター・オストロウ)、ジャック・ケリー(ジェリー)、リチャード・アンダーソン(クイン)、ほか
映画「禁断の惑星」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「禁断の惑星」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
禁断の惑星の予告編 動画
映画「禁断の惑星」解説
この解説記事には映画「禁断の惑星」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
禁断の惑星のネタバレあらすじ:起
月旅行を実現した人類は、22世紀に入ると他の太陽系の惑星に到達。そして新たに発明された超光速航行により、はるか数光年先の惑星までも植民地としていました。そんな時代に、ひとつの宇宙船が地球の基地から飛び立ちます。船の名前はC-57-D。乗組員は機長であるアダムスをはじめ、平均年齢24.6歳の若者19人です。
目的地は主系列星アルテアを巡る惑星のひとつ、第4アルテア。この星にはすでに入植者がいるのですが、なぜか連絡が取れなくなったため、アダムスたちは政府からその原因究明と生存者の確認を命じられたのでした。
地球を飛び立ってから378日後、C-57-Dはようやくアルテアの太陽系に到着します。ところが、いざ第4アルテアに着陸しようとすると、突然眼下の惑星から通信が入り、アダムスを驚かせます。それは入植者のひとり、モービアス博士からのものでした。
博士はアダムスから航行の目的を聞き出すと、着陸せずにそのまま帰るように促します。しかしわざわざ長い旅をしてきたこともあり、事情も知らずにおめおめと帰還するわけにいきません。博士もアダムスの言葉に我を折り、着陸地点を指示します。
禁断の惑星のネタバレあらすじ:承
C-57-Dが無事に地表に降り立つと、そこへ近づいてくる乗り物がありました。運転しているのは人型のロボットです。ロビーという名のそのロボットは巧みな英語でアダムスと会話を交わすと、彼を含めた3人の乗組員をモービアス博士の住居まで連れて行きます。
その住居はプールまで備えた立派な建物で、モービアスは地球と変わらぬ文化的な生活を送っていました。彼によると、ほかの入植者たちは謎の生物に襲われて全員死亡。博士と航行中に結婚した妻だけが生き残ったのですが、その妻もすぐに病気で亡くなったといいます。今では妻との間に生まれた娘・アルティラと二人で暮らし、かつてこの惑星で栄えたクレール人による科学文明の研究に没頭しているのです。
話を終えたモービアスは再び惑星を去ることを要求するのですが、アダムスは「事情を地球に伝えた上で指示を待つ」と言って、しばらく第4アルテアに滞在することにします。
禁断の惑星のネタバレあらすじ:転
やがて、警備の眼をくぐり抜けて何者かがC-57-Dの内部に侵入し、その部品を破壊。驚いたアダムスはモービアスを疑い、乗組員のひとりであるドクター・オストロウとともに再びその住居を訪ねます。博士はそんな破壊行為への関与を否定し、今まで秘密にしていたクレール人の巨大な科学設備を案内します。そこには思考能力を高める機械があり、博士はそれを使って自分の知力を増幅していました。ロビーもその結果作られたロボットなのです。
その頃、宇宙船では再び姿のみえない巨大な生き物によって攻撃を受け、乗組員のひとりが殺されてしまいます。その怪物は次の夜も襲撃を続け、アダムスは光線砲を準備して迎え撃つものの、さらに3人が犠牲となります。もはや逗留は無理と判断したアダムスとオストロウは、モービアスとアルティラを無理やりにでも地球に連れて行こうとその住居に向かいます。
アダムスがアルティラを説得する一方で、オストロウは事件の謎を解こうと知力を増幅する機械を使用。クレール人が意識の具現化に成功したこと、潜在意識が怪物となって彼らの文明を滅ぼしたこと、C-57-Dを襲った怪物も誰かの潜在意識だということなどを知りますが、知力増進の副作用のため、分かった事実をアダムスに告げると死んでしまいます。
禁断の惑星の結末
アダムスを愛し始めたアルティラは、あくまで第4アルテアにこだわる父親を置いて地球に向かうことを決意。そのことをモービアスに告げると、突然あの怪物が住居にあらわれ、アダムスを含めた3人を追ってきます。彼らは研究室に隠れますが、そこでアダムスははっきりと怪物の正体を悟ります。
怪物となった潜在意識の持ち主はモービアスで、彼が憎悪を抱いた相手をその怪物が殺してきたのでした。入植者仲間たちも、地球へ戻る計画を立てていたため襲われたのです。アダムスの口から真相を知らされたモービアスは自分の罪深さに愕然とします。
いよいよ怪物が扉を破って入ってきますが、モービアスは自らの身を犠牲にしてそれを食い止め、死によって事件を終わらせます。さらに彼は24時間後に作動する時限爆弾をセット。アダムス、アルティラ、乗組員、そしてロビーはC-57-Dに乗り込んで宇宙へ避難します。
やがて、アダムスとアルティラが窓越しに見守る中、爆弾が作動。研究施設を破壊して連鎖反応を起こし、第4アルテアそのものが消滅していきます。
以上、映画「禁断の惑星」のあらすじと結末でした。
このSF映画「禁断の惑星」は、今から250年後には人類は星の世界へ植民を開始する、シェイクスピアからフロイトまで援用したSF映画の傑作だと思います。
この「禁断の惑星」は、MGMが初めて製作した本格的な宇宙映画で、あの万能ロボット・ロビーとか、イドの怪物の登場といった卓越した発想と、見事な映像化でSF映画の伝説的な作品となったのです。
宇宙船C57Dは、連絡の途絶えた探検隊を調査するため、アルティア星に接近した。
そこへモービアス博士から通信が入り「昔、探検隊が星を去ろうとして、私たち夫婦を除いて全員死亡した。
君たちもそうならないうちに去りたまえ」と警告されるが、アダムス艦長はそれを無視して着陸する。
万能ロボットのロビーが迎えに来て、艦長らを博士の住む牧場スタイルの家へと連れて行くのです。
そして、博士は「娘アルタイラ、ロビーと快適な生活を送っているので、地球には帰らない」と言うのです。
翌日の夜、宇宙船が正体不明の怪物に襲われます。アルタイラはアダムス艦長に魅かれていきます。
こうした中、モービアス博士は、この星の先住民のクレル人は精神力だけで移動出来るまでに進歩していたが、一夜にして滅んでしまったと説明するのです。
彼らの心の奥深いところに潜む憎しみが増大して、全員が殺しあったというのです。
そして、現在、出没している怪物はモービアス博士のイド、つまり”深層心理”が生み出したもので、それが星を離れようとした探検隊員や彼を連れて行こうとするD57Dを襲ったのだ。
「火星探検」や「惑星アドベンチャー/スペース・モンスター襲来」でSFXを担当したアーヴィング・ブロックが、大のシェイクスピア好きで、彼とTVの脚本家アレン・アドラーが、シェイクスピア劇の「テンペスト」をもとにして原案を書いたと言われています。
「テンペスト」のプロスペロ、ミランダ、エアリエル、カリバンが、この作品ではモービアス博士、アルタイラ、ロビー、イドの怪物ということになるのです。
とにかく、この作品はフロイトの精神分析を援用した、イドのモンスターというユニークな怪物を登場させたことが素晴らしいと思います。
地面に足跡だけが残り、階段がたわむシーンはスリリングだし、バリアを張って待機していると、そこに出現するのがライオン風の顔をしている場面も、実に見事だ。
そして、クレル人の地下文明の奥行きのあるセット、コメディ・リリーフとしてのロビー、短い衣装や水泳シーンで目を楽しませてくれたアルタイラ、内容にマッチした電子音楽も心に響きます。
もし、人間の心の底にあるものが形になったら、こんなに恐ろしいものになりますと見せてくれたのがイドの怪物なのです。
フロイト理論を宇宙的な次元の中で、展開して見せてくれたのです。
ある高等生物の繁栄から滅亡までの種の歴史を潜ませた”禁断の惑星の謎解き”という形でストーリーが展開し、恐るべき真実が明かされると同時に、星そのものも消滅してしまうのです。
だからといって、いかにも恐ろしげな前衛的オカルトSFなどというものでもないのです。
アメリカB級SF映画の屈託のなさが、この映画の全編にわたって満ちていて、素直に楽しめるところが嬉しいのです。
ある意味で、文明のタブーに触れる陰惨な題材を、救ってくれるのがロボットのロビーの存在です。
ロビーは人間が理想とするお手伝いロボットの傑作といえるような気がします。
たくまざるユーモアと優しさをいかにしてロビーは獲得するに至ったのだろうか?
ボット性善説を信じたくなります。
人間という者の恐ろしさに対峙する時、このロボットへの信頼というものは、考えてみれば実に皮肉です。
このロビーが、助かったモービアス博士の娘・アルタイラと一緒に地球へ行く結末も、当然のことだと思います。