偽りなき者の紹介:2012年デンマーク映画。少女の何気ない嘘で人生を壊された男が理不尽な迫害を受けながらも、自らの尊厳を守るため周囲のいわれなき疑惑や憎悪に立ち向かっていく姿を描いたヒューマン・ドラマ。2012年に第65回カンヌ国際映画祭で主演男優賞、エキュメニカル審査員賞、ヴァルカン賞を受賞した、トマス・ヴィンターベア監督作品。
監督:トマス・ヴィンターベア 出演者:マッツ・ミケルセン(ルーカス)、トマス・ボー・ラーセン(テオ)、アニカ・ヴィタコプ(クララ)、ラセ・フォーゲルストラム(マルクス)、スーセ・ウォルド(グレテ)、ラース・ランゼ(ブルーン)、ほか
映画「偽りなき者」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「偽りなき者」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
偽りなき者の予告編 動画
映画「偽りなき者」解説
この解説記事には映画「偽りなき者」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
偽りなき者のネタバレあらすじ:無実の罪を着せられた男
舞台はクリスマスを間近に控えたデンマークのとある町。42歳のルーカス(マッツ・ミケルセン)は、勤めていた学校の閉鎖による失業や離婚を乗り越え、幼稚園教師として再就職し、猟友会の仲間や愛犬と共に穏やかに暮らしていた。
しかし、親友の娘クララ(アニカ・ヴィタコプ)の作り話によって、児童虐待の疑いをかけられてしまう。無実を主張するも聞き入れられず仕事を失い、同僚である恋人や親友からも疑われ、孤立するルーカスに対して、町の住人からの迫害はエスカレートしていく。
偽りなき者のネタバレあらすじ:少女の笑えない話
ルーカスは真面目で優しく、別れた妻と暮らす息子のマルクス(ラセ・フォーゲルストラム)との時間を大切にする良き父親で、教師としても園児達に慕われていた。特にクララは幼馴染みの親友テオ(トマス・ボー・ラーセン)の娘であるため、目をかけていた。
クララはいつも面倒を見てくれるルーカスに淡い恋心を抱いていた。それをキスで伝えるが、優しくたしなめられてしまう。同じ頃、歳の離れた兄に卑猥な画像を見せられ嫌な思いをしたことから、その2つの出来事が重なり、クララはある日、幼稚園で園長にポツリと話した。
「ルーカスって嫌い。おチンチンを見たの…」悪意のない作り話が、小さな町に一石を投じてしまった。
偽りなき者のネタバレあらすじ:子供が嘘をつくはずがない
事態を重く見た園長は外部から調査員を呼んだ。「どんな状態だった?」「白いものが出た?」クララはその意味も分からず、調査員の誘導尋問に首を縦に振るだけだった。さらには他の園児も被害に遭ったと言い出し、ルーカスは身に覚えがなかったが、自宅待機を言い渡された。園長は子供達の話を信じて疑わず、早速クララの両親をはじめ幼稚園の保護者達に報告する。その日からルーカスは変態教師のレッテルを貼られてしまった。仕事ぶりを知るはずの恋人も去り、テオですらルーカスの話を聞き入れない。大人達の変化に戸惑うクララが、本当は何もなかったことを母親に告げるが、母親は記憶から消そうとしていると勘違いし、抱き締めるだけだった。(子供は嘘をつかないという思い込みが冤罪を生み出す恐ろしいシーン。現実に自分の身に起きたらと思うとゾッとする。)
偽りなき者のネタバレあらすじ:周りは敵だらけ
小さな町では噂があっという間に広がってしまう。ルーカスの無実を信じるのは、息子のマルクスと彼の名付け親であるブルーン(ラース・ランゼ)ら数人の猟友会の仲間だけ。警察の捜査で子供達の証言に矛盾が見つかり、ルーカスの無実が証明されても町の住人達の態度は変わらない。それどころか、家の窓を割られ、愛犬ファニーが何者かに殺されてしまう。さらにスーパーでは出入り禁止を告げられ暴行を受ける。ひたすら迫害に耐え続けていたルーカスも限界を迎え、クリスマスの夜、教会でテオに掴みかかり「何もしていないから負い目はない」と思いをぶつける。テオは親友の真っ直ぐな眼差しから自分の過ちに気付き、ルーカスに謝罪した。
偽りなき者の結末:JAGTEN/狩り
1年後、マルクスの成人を祝いに、ルーカスと町の住人達が集まっていた。誤解が解け、笑いながら握手をし、挨拶をする。そして仲間達と狩りに出掛けるのだが、ルーカスの頭上で銃声が聞こえ、振り返る描写で終わる。
最後のシーン、一体誰が狙ったのか…。ルーカスは最後までクララを責めることなく優しく接していた。それでも憎み続ける人間がいるところが現実味を帯びていて、一度植え付けられたものは簡単に拭い去れない集団心理の恐ろしさを感じた。