ソン・ランの響きの紹介:2018年ベトナム映画。80年代のサイゴン。借金の取り立てを生業としているユンは、集金で立ち寄ったベトナムの伝統歌舞劇<カイルオン>の劇場で花形役者リン・フンと運命的な出会いを果たす。反発し合っていた2人だったが、停電の夜にユンが自宅にリン・フンを泊めた日を境に心を通わせていく。対照的だが共に悲しい過去を持つふたりの男性が孤独を埋めていく運命の3日間。ユン役のリエン・ビン・ファットはデビュー作の本作で東京国際映画祭にて新人俳優賞に値するジェムストーン賞を受賞。リン・フン役のアイザックは元ベトナムのトップアイドルグループ365dabandのメンバーだった。監督のレオン・レは本作で長編監督デビューを果たし、既に国内外で37もの賞を受賞した。
監督:レオン・レ 出演:リエン・ビン・ファット(ユン)、アイザック(リン・フン)、ミン・フーン(金貸し屋の女店主)、トゥ・タイン(ユンの彼女)ほか
映画「ソン・ランの響き」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「ソン・ランの響き」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
ソンランの響きの予告編 動画
映画「ソン・ランの響き」解説
この解説記事には映画「ソン・ランの響き」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
ソンランの響きのネタバレあらすじ:起
現在はホーチミンと名前を変えた1980年代のサイゴン。ユン(リエン・ビン・ファット)は借金の取り立てを生業とし、父親の遺影を飾った部屋にひとり孤独に暮らしていました。
ユンの取り立ては返済の遅れた客には容赦なく暴力で迫ります。周りからは“雷のユン兄貴”と恐れられていました。
ある日、ユンが借金の取り立てで向かったのは、ベトナムの伝統歌舞劇カイルオンの劇場。女座長が払えないと告げると、楽屋に準備されていた舞台衣装を積み、ガソリンをかけて火を放とうとしました。そこへちょうど入ってきた劇団の花形役者リン・フン(アイザック)が止めに入りました。
座長に借金があることを初めて聞かされたリン・フンは、自らの時計とネックレスを差し出しましたが、ユンは受け取らず「明日また来る」とだけ告げ、立ち去りました。
ソンランの響きのネタバレあらすじ:承
翌日、ユンは再び劇場を訪れました。取り立てる前に客としてカイルオンの芝居を鑑賞するため、チケットを買って席に着きます。公演は『ミー・チャウとチョン・トゥイ』という悲恋物語でした。
舞台を眺めると、幼少期の自分の姿が重なりました。ユンの父親はカイルオンに欠かせない民族楽器ソン・ランの奏者で、母親は舞台女優でした。舞台袖から両親を見つめた子供のころの日々を思い出します。
この演目の主役はリン・フンでした。妖艶な美しさと歌声に心を奪われるように魅入るユン。ユンは取り立てに向かわず劇場を後にしました。
翌日、町の食堂で物憂げにひとり酒を飲むリン・フンの姿がありました。数人の酔っ払いがリン・フンに因縁をつけ、たちまち取っ組み合いのけんかになってしまいました。数人から殴られ床へと倒れこんでしまったリン・フン。
たまたま店に居合わせたユンは黙っていられず、酔っ払いたちをやっつけ追い払いました。
ソンランの響きのネタバレあらすじ:転
気絶していたリン・フンが目覚めると、そこはユンの家でした。しかも、すでに公演は開始時間を過ぎ、舞台に穴まであけてしまいました。飲めない酒を飲んだことを後悔し、慌ててユンの家を飛び出しましたが、鍵を無くしていたことに気づき、再びユンのもとへ戻ってきました。
ぎこちない2人でしたが、一緒にゲームをしているうちに次第に打ち解けていくようになりました。これまで一切笑顔を見せなかったユンの表情もどことなく緩やかになっていきました。
すると、突然停電になってしまい、あたりは暗闇に包まれてしまいます。2人は仕方なく外へ出て屋台で麺を食べることにしました。屋台の外では流しの老人がギターを弾きながら歌っていました。
聴き入っていたリン・フンは、老人の歌がまるで自分の人生を歌っているようだと言います。するとユンは告げます。「父親はカイルオンの伴奏者だった」と。その後、ユンをひとり置いて亡くなってしまったのでした。
リン・フンの両親は役者になることを当初は猛反対していましたが、やがて許してくれました。そして迎えた初主演の舞台を見に来る途中、バスの事故で亡くなっていたのでした。意外にも似た過去を持つ、悲しみの接点を見つけ、2人の距離は縮まっていきました。
ユンの家へ戻り、リン・フンはユンの机から子供のころ好きだった本を見つけました。ページをめくるとユンの父による詩が挟まれていました。ユンはリン・フンにこの詩を歌ってほしいと言いました。伴奏がなければ歌えないと言うリン・フン。すると、ユンは民族楽器ソン・ランを持ってきて奏ではじめました。
妻が去り悲しみや苦しみを綴った歌を、ユンの哀愁漂うソン・ランの音色に合わせ、リン・フンが美しく歌い上げる。最高のひとときでした。
歌い終わるとリン・フンはユンの腕前に感動し、再びカイルオンの奏者をするよう勧めました。明日の公演で団長の前で一度弾いてほしいと。しかしユンは決めきれずにいました。
ソンランの響きの結末
互いの心に変化が生じてきました。ユンは自分の全財産を売ってお金に替えると、他人の借金を肩代わりし完全に仕事から身を引く決意をしたのです。
一方、リン・フンはここ数日行動を共にしたユンを想っている自分を知ります。今日の公演にきっとソン・ランを持ってユンは現れると確信し、プレゼントも用意しました。
こうして迎えた公演。愛情のこもったリン・フンの演技はこれまで以上に輝きを放っていました。
しかし。
劇場の前まできたユンを何者かが背後から刺殺。抵抗する間もなくユンはその場で息を引き取りました。雨が血を流し、公演が終わるころには今までとなにも変わらない風景に戻っていました。
最後の客が帰るまでユンを待ち続けたリン・フン。ユンが現れない理由は知る由もなく、静かに劇場を出ました。
以上、映画「ソン・ランの響き」のあらすじと結末でした。
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