勝利への脱出の紹介:1980年アメリカ映画。第二次世界大戦下の1942年8月にナチスドイツの占領下にあったウクライナで行われた、地元サッカー選手とドイツ兵とのサッカー親善試合、通称“死の試合”をモチーフにした戦争ドラマです。ドイツの捕虜となった連合軍兵士たちが親善試合を利用して脱走を図る姿を描きます。ダブル主演を務めるシルヴェスター・スタローンとマイケル・ケインに加えてサッカーの王様ペレなど往年のスター選手たちが多数出演しています。
監督:ジョン・ヒューストン 出演者:シルヴェスター・スタローン(ロベルト・ハッチ)、マイケル・ケイン(ジョン・コルビー)、マックス・フォン・シドー(カール・フォン・シュタイナー)、ペレ(ルイス・フェルナンデス)、ボビー・ムーア(テリー・ブレイディ)、オズワルド・アルディレス(カルロス・レイ)、アントン・ディフリング(実況アナウンサー)、ジョージ・マイケル(収容所長)、キャロル・ロール(ルネ)、アミドゥ(アンドレ)ほか
映画「勝利への脱出」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「勝利への脱出」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
勝利への脱出の予告編 動画
映画「勝利への脱出」解説
この解説記事には映画「勝利への脱出」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
勝利への脱出のネタバレあらすじ:起
第二次世界大戦下の1943年、ドイツ南部にある連合軍の捕虜たちが収容されたナチスドイツ軍のゲンズドルフ捕虜収容所では、赤十字の視察に同行したドイツ軍情報将校のカール・フォン・シュタイナー少佐(マックス・フォン・シドー)は、暇を持て余してサッカーに興じる捕虜たちを目にしました。
捕虜たちにサッカーを指導していたのは、かつてイングランドのサッカークラブ「ウェストハム・ユナイテッド」でプレーしていた元プロのサッカー選手という経歴を持つイギリス軍大尉のジョン・コルビー(マイケル・ケイン)でした。
翌日、元ドイツ代表選手だった過去を持つシュタイナーは兵士の士気高揚のためにドイツ軍チームと連合軍チームとの親善試合を開くことを思いつき、シュタイナーから提案されたコルビーは用具一式の提供や食事の改善などを条件に引き受けました。早速選手の人選に入ろうとしたコルビーでしたが、同じく捕虜である先任将校ウォルドロン大佐(ダニエル・マッセイ)や情報委員ローズ少佐(ティム・ピゴット=スミス)らは試合を利用して脱走する計画を立てました。
しかし、コルビーは脱走計画に参加せず、捕虜の中からトリニダード・トバゴ出身の名手ルイス・フェルナンデス(ペレ)、テリー・ブレイディ(ボビー・ムーア)、アーサー・ヘイズ(ジョン・ウォーク)らを選手として選出しました。アメリカ軍の軍曹ロベルト・ハッチ(シルベスター・スタローン)もコルビーのチームに加わりたいと申し出ましたが、コルビーはルールを守れないハッチをチームに加える気はありませんでした。
勝利への脱出のネタバレあらすじ:承
ドイツ軍上層部はシュタイナーの提案した親善試合をナチスのプロパガンダに利用することにし、試合会場はドイツの占領下にあるフランス・パリの郊外の町コロンブにある6万人収容のスタジアム「スタッド・オランピック・イヴ=ドゥ=マノワール」に決定しました。
コルビーはウォルドロンから試合はナチスの宣伝に使われるだけだと忠告されても気にせず、収容所内の捕虜のみならず他の収容所に送られていたトニー・ルイス(ケヴィン・オキャラハン)、ダグ・クルー(ラッセル・オスマン)、ミシェル・フィルー(ポール・ヴァン・ヒムスト)、エリック・ボルグ(セーレン・リンドステッド)、カルロス・レイ(オズワルド・アルディレス)ら有名選手をかき集めることに成功しました。
こうして集められた選手たちはコルビーの指導の下で猛特訓に励み、ハッチもトレーナーとしてチームに帯同することを許されました。そのうち、ルイスやコルビーはハッチはゴールキーパーとして起用できると判断しました。
ある日、ハッチはパリのレジスタンスと連絡を取るために一時的に収容所から脱走、汽車でパリに向かいました。そしてハッチはレジスタンスのアンドレ(アミドゥ)らと接触、アンドレはスタジアムの地下に通っている下水道から脱走が可能であることを確認しました。
ハッチはレジスタンスの一員である戦争未亡人ルネ(キャロル・ロール)と心を通わせ合いますが、アンドレはハッチに連絡要員として収容所に戻るよう指示し、ハッチはやむなくルネに別れを告げて収容所に戻りました。しかし、ハッチが脱走したことにより、収容所の警備体制はより一層厳重なものとなってしまいました。
勝利への脱出のネタバレあらすじ:転
コルビーは独房に入れられたハッチを正ゴールキーパーとして連れ出すことに成功、連合軍チームの選手たちは厳重な監視下のもとスタジアムの控え室に入りました。一方、アンドレらレジスタンスは連合軍チームの控え室から下水道に通じる脱走路を確保していました。ルネはハッチに、脱走はハーフタイムに決行すると告げました。
パリ市民ら5万人を集めた親善試合はいよいよキックオフの時を迎えますが、公平な試合を望むシュタイナーの意向とは反対にドイツ軍上層部は審判を買収して自軍チームに有利な判定をさせました。ドイツ軍は一気に4点を先行、連合軍もブレイディがゴールを決めて1-4としますが、ルイスは相手の激しいタックルを受けて負傷しベンチに下がってしまい、連合軍チームは1人少ない10人での試合を余儀なくされました。
試合は1-4のまま前半を終え、レジスタンスは予定通りに選手たちを脱走路へ向かわせようとしましたが、コルビーやルイスら選手はこの試合に勝てるという自信を持っており、サッカー選手としての名誉と誇りを優先させて脱走には応じませんでした。ハッチは
一人だけ脱走しようとしましたが、コルビーたちに説得されて後半戦も戦うことになりました。
勝利への脱出の結末
後半戦が始まり、連合軍チームは誰一人逃げることなくピッチに戻ってきました。そして反撃に転じた連合軍チームは立て続けにゴールを決めて1点差に詰め寄り、ハッチも懸命にゴールを死守しました。観客のフランス人たちは連合軍の奮闘に大いに励まされました。
そして連合軍チームは同点ゴールを決めるも無効とされてしまいますが、ルイスは怪我をおして試合に復帰すると見事なオーバーヘッドキックを決めて遂に4-4の同点に追いつきました。ドイツ軍上層部や関係者たちが集まる貴賓席で試合を観戦していたシュタイナーは連合軍の気迫と美技に心を打たれ、敵味方の区別を忘れて心から拍手を送りました。
試合終了間際、連合軍は不可解な判定によりペナルティキックを取られてしまいます。判定に怒った観客たちからブーイングが飛び交うなか、ハッチはドイツ軍キャプテンのバウマン(ワーナー・ロス)のキックを阻止し、興奮した観客たちはピッチへとなだれ込みました。
選手たちは観客たちに紛れてスタジアムから脱走し、ハッチもルネと共に脱走しました。シュタイナーはこの光景に満足した表情を浮かべていました。
以上、映画「勝利への脱出」のあらすじと結末でした。
「勝利への脱出」感想・レビュー
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さすがスタローン⁉️、単純明快なストーリーにアクション、最後にガッツポーズ。 少しシリアスでシュールな裏面も垣間見る❗
この映画「勝利への脱出」は、ジョン・ヒューストン監督による”脱走アクション映画”の傑作だ。
舞台は第二次世界大戦下の連合軍捕虜収容所。と言えば、かつてのダイナミックな脱走ドラマの大傑作「大脱走」を思い出してしまうが、この映画はちょっと違うのだ。
何とサッカーの試合の最中に、脱走しようというアイディアなのである。
1943年、ナチス占領下のパリ。連合軍捕虜収容所で、サッカーの元全英選抜選手とドイツの選手が出会った事から、ドイツ軍VS捕虜選抜チームのサッカー・ゲームが企画される。
そして、レジスタンスはこれを利用して捕虜たちの集団脱走を企てるが—-。
この映画の中心人物は三人。マイケル・ケインのイギリス将校。冷たいばかりの完璧な計算で脱走計画を推し進め、時には仲間の腕を叩き折る事さえやってのける。
スウェーデン出身の名優・マックス・フォン・シドーが扮しているのはドイツ将校。
スポーツマンとしての純粋な気持ちと共に、ドイツ捕虜収容所政策を、対外的に明るくイメージ・アップしようと考えて、サッカー試合を実現させる。
そして、もう一人は、陽気でおっちょこちょいのアメリカ将校のシルヴェスター・スタローン。
この計画に参加したいのだが、なかなか仲間に加えてもらえない。このスタローンが実にいい。
アメリカ青年らしい爽やかさと一途な正義感を素朴に演じていて好感が持てる。
「ロッキー」のイメージそのままに、典型的な”愛すべき”アメリカの青年像を体現している。
スタローンのおかげでラストのサッカー試合がぐんと盛り上がる。
試合途中の脱走計画をやめて、最後の試合を勝ち抜こうとするわけだが、ラストの描写が何とも甘いという欠点も、途中の中だるみも、このサッカー場面の迫力が、充分にカバーしていると思う。
ブラジルのサッカーの神様ペレを初め、本物のサッカーのスター選手が捕虜の兵士として試合に加わっているのも見ものだ。
かつての「大脱走」のクライマックスが、個々の力による脱走であったのに対して、この映画では”集団プレー”。
今、この時を共に戦い抜こうという、アメリカ人向けのメッセージが聞こえてきそうだ。