エルミタージュ美術館 美を守る宮殿の紹介:2014年イギリス映画。世界一の大きさを誇るエルミタージュ美術館。サンクトペテルブルクの歴史と共に生きた美術館の数奇な運命とは。
監督:マージー・キンモンス 出演:ミハイル・ピオトロフスキー館長、レム・コールハース、アントニー・ゴームリー、トム・コンティ(声の出演)、ほか
映画「エルミタージュ美術館 美を守る宮殿」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「エルミタージュ美術館 美を守る宮殿」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
エルミタージュ美術館 美を守る宮殿の予告編 動画
映画「エルミタージュ美術館 美を守る宮殿」解説
この解説記事には映画「エルミタージュ美術館 美を守る宮殿」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
エルミタージュ美術館 美を守る宮殿のネタバレあらすじ:起・戦略的理由
ロシアの歴史上、事件や戦争・革命があった中、エルミタージュ美術品は生き延びた。宮殿の趣を今に残し、皇帝たちの暮らしを思い描く事もできる。今は皇帝の代わりに、学芸員が次世代のために保存にあたっている。世代を越えてロシアに受け継がれる生きた美術館だ。その規模、収蔵品共に世界最大を誇る。
女帝エカテリーナ二世によって1864年に創立された。当時のロシアを軍事力だけでなく、文化水準も含めて西欧諸国と同等にし、また二つの戦争を控えたロシアが、この難局に絵画を買う財力が有ることを世界に示すための戦略だった。
後の皇帝たちも美術品を増やしていった。アレクサンドル一世は、ナポレオンとの戦争に勝利した際、皇妃から重要な絵画を購入した。弟のニコライ一世は、勝利した記念に、栄光の馬車と円柱の乗った建造物や、新エルミタージュを建設した。1827年に焼失の危機があったが、全焼した冬宮から、美術品は守られた。
ピョートル大帝遺跡荒しから購入した古代スキタイの黄金美術も収蔵している。これらはシベリアから出土する。また、法王クレメンス11世と聖遺物との交換でタウリスのビーナスも得ている。
エルミタージュ美術館 美を守る宮殿のネタバレあらすじ:承・美術館の危機
19世紀末から、エルミタージュは大きな社会変革を経験した。第一次大戦がはじまり、冬宮は病院や児童養護施設に使われた。ついで、十月革命の勃発で皇帝の敵はドイツ軍だけでなく、ボルシェビキだった。ニコライ二世の家族は処刑、ロマノフ王朝が終わると、肖像画は切られた。皇帝の陶磁器工場は国有化、冬宮の一部も使われた。プロパガンダに使われ、前衛作家たちが国家に作品を提供した。カンディンスキーも触発され、傑作を完成させた。
美術品は国有化され、亡命貴族の美術品も接収された。しかしゴッホ、セザンヌ、マティス、ピカソは30年代のロシアではあまり高く評価されず、退廃的とされ公開を禁止された。一方で再評価されるものもあった。自国の歴史への興味から、考古学に脚光が集まった。
スターリンの台頭後、収蔵品を売却して資金を作り国の産業化を進めようという計画が立てられて、美術品に大きな危機が訪れた。ワシントン・ナショナルギャラリーが、21点の巨匠作品を購入した。30年代の政府には誰も盾をつく事ができず、職員たちは敵とみなされ収容所に送られ処刑されたり戻って来ない学芸員たちもいた。
エルミタージュ美術館 美を守る宮殿のネタバレあらすじ:転・二次大戦と冷戦
第二次大戦時、収蔵品の盗難に備え、極秘で美術品の疎開が行われた。学芸員とその家族は冬宮の地下に避難し研究を続け、人から人へ直に知識が伝えられた。レニングラード包囲戦で破壊の危機に瀕したが、ソ連軍によって守られた。戦後、間もなくして展示が再開される。
この戦争でナチスから奪った収蔵品は、ドイツが返還を要求する中、展示できずにいたが、1995年に公開許可が下りた。スターリンが嫌ったポスト印象派は、彼の死後から公開が行われている。
冷戦中は、政府が外国の代表団へ収蔵品を贈り物にしようとすることがあり、館長は美術品を守ることを強いられた。研究は活発だったが、観光客はおらず、運営費も少なかった。
エルミタージュ美術館 美を守る宮殿の結末:社会主義の終焉
ソ連が崩壊し、街はサンクトペテルブルクに戻された。当時はお金がなく、作品の保護・補修・建物の改装もできず、保全しかできなかった。協賛者や政府予算など限られた中で、改装、作品の購入を行った。
しかし社会主義が終わり、拝金主義に陥ると、美術品は盗難の危険が出てきた。そこで、街のはずれにエルミタージュ美術館の収蔵センターを20年以上を費やして建設し、美術館に収まらない物を収蔵し、保管しながら見せる事にした。また公開されていない作品はここで修復・分析が行われている。
大事なことは、美術館は古くて退屈な資料館ではなく生きており、現代彫刻も古典彫刻も美術史の上では変わりない。新しい作品を紹介すると古い作品に注目が集まり、再評価に繋がる。エルミタージュ改造計画の一環として、現代美術の展示スペースは旧参謀本部ビルに移り、今までネヴァ川に並んでいた、美術館は今は宮殿広場を抱く形になった。
かつて皇帝が住んでいた宮殿の中を、今は大衆が歩きまわっている。ここに来ることは特別ではなく日常的な経験の一部になった。旧参謀本部の活用は歴史的建造物の価値を失わず、美術館に活用する、好例となるだろう。
エカテリーナ二世が集めた美術品を礎に創立された。エルミタージュでは歴史的な事が起こった。歴史の変わった場所である事を実感できる。ロシア人にとって重要な史跡でもある。建物も作品も含めてすべてがロシアの歴史と共に生きている。
以上、映画「エルミタージュ美術館 美を守る宮殿」のあらすじと結末でした。
エルミタージュ美術館 美を守る宮殿のレビュー・考察:歴史と共にある美術館
美術館にはそれぞれ特色があるが、ロシアと言うだけで、その大きさを彷彿とさせるエルミタージュはそれだけでイメージ戦略は成功していると思う。サンクトペテルブルクになってから観光地化が進んだとしても、たくさんの来館者を受け入れるだけの余裕を思わせる。そして、エルミタージュは今も街の中心で歴史を刻みこんでいる事を忘れないでいようと思う。
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