バルジ大作戦の紹介:1965年アメリカ映画。第二次世界大戦末期の1944年にベルギー・アルデンヌ高地で行われたナチスドイツ軍とアメリカ率いる連合軍の激戦「バルジの戦い」をドイツ側・アメリカ側の両方から描いた戦争映画の超大作です。当時としては破格の巨額な製作費(当時の日本円で約72億円)が投じられ、スペイン陸軍の協力による大規模な戦車戦の描写も見どころです。
監督:ケン・アナキン 出演者:ヘンリー・フォンダ(カイリー中佐)、ロバート・ライアン(グレイ将軍)、ロバート・ショウ(ヘスラー大佐)、ダナ・アンドリュース(プリチャード大佐)、ジョージ・モンゴメリー(デュケン軍曹)、テリー・サバラス(ガフィー軍曹)、チャールズ・ブロンソン(ウォレンスキー少佐)、ハンス・クリスチャン・ブレヒ(コンラート伍長)、ジェームズ・マッカーサー(ウィーヴァー少尉)、ピア・アンジェリ(ルイーズ)、ヴェルナー・ペータース(コーラー将軍)、カール=オットー・アルベルティ(ディーペル少佐)、タイ・ハーディン(シューマッハ少佐)、バーバラ・ウェール(エレナ)ほか
映画「バルジ大作戦」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「バルジ大作戦」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
バルジ大作戦の予告編 動画
映画「バルジ大作戦」解説
この解説記事には映画「バルジ大作戦」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
バルジ大作戦のネタバレあらすじ:起
第二次世界大戦も末期に差し掛かった頃の1944年12月のヨーロッパ戦線。アメリカ率いる連合軍の間では、ナチスドイツ軍の降伏も時間の問題だとの噂が流れ始めていましたが、アメリカ陸軍情報部のカイリー中佐(ヘンリー・フォンダ)はドイツ軍は必ず反撃を仕掛けてくるだろうと危惧していました。
そんなある時、偵察機で上空から偵察活動をしていたカイリー中佐は、ドイツ軍将校のヘスラー大佐(ロバート・ショウ)率いるドイツ軍部隊の姿を発見しました。
一方、ヘスラー大佐は敵の偵察機に怯える運転手のコンラート伍長(ハンス・クリスチャン・ブレヒ)と共に司令部に向かい、コーラー将軍(ヴェルナー・ペータース)から機甲部隊を率いての大規模な反撃作戦の指揮を託されました。
へスラー大佐はディーペル少佐(カール=オットー・アルベルティ)から、シューマッハ少佐(タイ・ハーディン)率いるスパイ部隊がアメリカ兵に変装し、天候悪化の隙を突いてパラシュート降下で敵陣に潜入するという作戦を知らされました。
しかし、コンラート伍長は主力部隊には精鋭がおらず経験の浅い若手ばかりだということに一抹の不安を感じていました。それでもヘスラー大佐は、若き戦車長らが意気高らかに「戦車の歌(パンツァー・リート)」を歌う様を見て作戦の成功を確信しました。
バルジ大作戦のネタバレあらすじ:承
ベルギー・アンブレーブの連合軍師団司令部に着いたカイリー中佐は、司令官のグレイ少将(ロバート・ライアン)にドイツ軍の件を報告しましたが、参謀のプリチャード大佐(ダナ・アンドリュース)は一笑に付すのみでした。
それでもグレイ少将はカイリー中佐に敵の反撃開始の実態を探るため捕虜を捕まえることを命じ、前線のウォレンスキー少佐(チャールズ・ブロンソン)の部隊が捕虜を捕らえましたが、捕まえたのは軽装備の少年兵でした。
プリチャード大佐は改めてドイツ軍の反撃はありえないとしましたが、機甲部隊で目覚ましい戦果を挙げているヘスラー大佐が反撃作戦に加わっていることを知ったカイリー中佐は、改めて自分の考えが正しかったと確信しました。
それから程なくして、シューマッハ少佐率いるスパイ部隊がパラシュートで連合軍陣営に紛れ込み、続いてヘスラー大佐率いる機甲部隊の本隊が進撃を開始しました。すっかりクリスマス気分に浸っていたアメリカ軍は不意を突かれ、奇襲をかけられて撤退せざるを得なくなりました。
ところが、あまりにも機甲部隊の進撃が早すぎたために地雷の除去が間に合わず、司令車両が爆破されてしまったことから、ドイツ軍の行き先がとある橋であることが連合軍に発覚してしまいます。
グレイ少将はカイリー中佐に橋の確保を命じましたが、橋の護衛を任せられたスパイ部隊は道路の標識を差し替え、アメリカ軍の橋爆破部隊を射殺していきました。敵の動きに気付いたカイリー中佐は既に橋がドイツ軍に手に渡ったことに気付いて一時撤退しました。
バルジ大作戦のネタバレあらすじ:転
その頃、ウォレンスキー部隊からはぐれてしまったウィーヴァー少尉(ジェームズ・マッカーサー)とデュケン軍曹(ジョージ・モンゴメリー)は、敵が付け替えた標識に惑わされ、他の兵士たちと共にドイツ軍の捕虜にされてしまいます。ドイツ軍は捕虜たちを銃殺しようとし、デュケン軍曹は命を落としますがウィーヴァー少尉は何とか脱走に成功しました。
カイリー中佐の見解が正しかったことに気付いたグレイ少将とプリチャード大佐は支援を要請するも敵に阻まれ、ウォレンスキー部隊を遺してやむなく撤退しました。ドイツ軍機甲部隊は勢いのままアンブレーブを制圧、ウォレンスキー少佐は捕虜にされてしまいます。
ウォレンスキー少佐はヘスラー大佐にマルメディで捕虜が虐殺されたことを糾弾し、捕虜の待遇が改善されなければ暴動を起こすと脅しました。ヘスラー大佐は虐殺によりかえって敵の戦意が増すことに恐れを抱きました。
新たな司令部を設けたグレイ少将やカイリー中佐は、ドイツ軍機甲部隊の進撃が早すぎるあまり燃料の補給が間に合わなくなっていることに気付き、敵の燃料を消耗させる作戦に乗り出しました。カイリー中佐は悪天候にも関わらず決死の偵察飛行を敢行しましたが、ドイツ軍に撃墜されて重傷を負ってしまいました。
バルジ大作戦の結末
ウィーヴァー少尉は本隊からはぐれた兵士をかき集め、廃墟と化したアンブレーブで戦車隊のガフィー軍曹(テリー・サバラス)と合流しました。
一方、遂にアメリカ軍とドイツ軍との間で遂に「バルジの戦い」が幕を明け、グレイ少将が燃料を消耗させようとしていることに感づいたヘスラー大佐はアメリカ軍の燃料基地を奪取することにしました。
ヘスラーの動きを知ったグレイ将軍は燃料基地の爆破を命じましたが、燃料基地は既にシューマッハ少佐率いるスパイ部隊が制圧しており、アメリカ軍に扮して護衛していました。しかし、基地に辿り着いていたカイリー中佐はスパイ部隊の変装を見破り、ガフィーの戦車で基地にやってきたウィーヴァー少尉に伝えました。
ウィーヴァー少尉らがスパイ部隊を全滅させたところで、そうとも知らないドイツ軍の機甲部隊が基地に近づいてきました。カイリー中佐とウィーヴァー少尉は一計を案じ、基地にある燃料を利用して機甲部隊を壊滅させることを思いつきました。
ウィーヴァー少尉は部下に命じて大量に流した燃料に手榴弾を投げ込み、狙い通りにドイツ軍機甲部隊を壊滅させることに成功しました。こうしてドイツ軍の反撃作戦は失敗に終わり、戦局は大きく連合軍側に傾くこととなりました。
以上、映画「バルジ大作戦」のあらすじと結末でした。
“オール男性スター・キャストによる戦争巨編で、莫大な製作費をかけた戦闘シーンのスペクタクルの迫力で見せる「バルジ大作戦」”
この映画「バルジ大作戦」はヨーロッパ戦線でじりじりと後退を余儀なくされたドイツ軍が、アルデンヌで大反撃を行なった、1944年12月16日の戦いで、連合国側のアメリカ軍が行なったのが、この「バルジ大作戦」で描かれている”秋の霧作戦”です。
このアメリカ軍の作戦の狙いは、ベルギーを席巻し、連合軍をアントワープまで押し戻す事でした。この”秋の霧作戦”には25万人のドイツ兵が投入され、これに対して連合軍の兵力は8万人でした。
作戦開始の翌日、歴史上有名なドイツ軍によるアルデンヌのマルメディでのアメリカ軍兵士の虐殺事件が起きます。このアルデンヌの戦いでは両軍合わせて約16万人の死傷者を出したと言われていますが、中でも特に悲惨を極めたのが、マルメディで起きたアメリカ兵捕虜129人の虐殺事件です。
この「バルジ大作戦」ではこの悲劇をかなり忠実に描いていて、この戦いには武装SSと言われる、ナチス親衛隊の武装組織も参加していましたが、彼らは連合軍捕虜は処刑すべし、とのヒットラーの命令を受けた絶滅部隊でもあったのです。
この武装SSに運悪く捕らえられたのが、ドイツ軍の破竹の攻勢の前に逃げ遅れたアメリカ兵たち—-。
この「バルジ大作戦」では捕虜となった軍曹のジョージ・モンゴメリーたちに、SS兵士たちの銃弾が容赦なく浴びせられる凄惨なシーンが描かれています。
歴史上の実際の”マルメディ事件”では、アメリカ軍捕虜は全員射殺されているのですが、映画ではただ一人ジェームズ・マッカーサー扮する若手将校だけが、虐殺現場からの逃走に成功します。
彼がこの後、軍人として別人のようにたくましく成長して、ラストでドイツ軍戦車隊の壊滅に大きな役割を果たすというシチュエーションのためには、彼を死なせる訳にはいかなかったのです。
非武装の捕虜の虐殺という、この事件は後のニュールンベルグ裁判でも徹底的に追及される事になるのです。
そして、この事件の以後、アメリカ軍は”マルメディの復讐”を合言葉に態勢の立て直しを図り、12月23日に、英語でバルジという意味のアルデンヌの”突出部”の南端に対する反撃を開始します。これが、”バルジ作戦”なのです。
この映画では、特にアメリカ軍に変装したドイツ軍コマンド部隊の活躍や悪名高いマルメデイの虐殺などが描かれていて、非常に興味深い内容でした。
また、ヘンリー・フォンダ、ロバート・ショウ、ロバート・ライアン、チャールズ・ブロンソンなどの有名スターの配役も豪華で、特にドイツ軍の不屈の意志を持った戦車部隊長を演じたロバート・ショウの好演が光っていました。
もちろん戦争映画としてのドイツ軍とアメリカ軍の戦車戦では、米独合せて600台に及ぶ戦車が使われていて、迫力十分のスペクタクル場面が展開していて映画の醍醐味を見せてくれました。