ボリショイ・バビロン 華麗なるバレエの舞台裏の紹介:2015年イギリス映画。団員と芸術監督の軋轢によってスキャンダルを招いたボリショイバレエ団。再起のために原因を探り、新体制での海外公演を目指す。
監督:ニック・リード 出演者:アレクサンドル・ブドベルグ、マリーア・アラシュ、アナスタシア・メーシコワ、ボリス・アキーモフ、ほか
映画「ボリショイ・バビロン」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「ボリショイ・バビロン」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
ボリショイ・バビロン 華麗なるバレエの舞台裏の予告編 動画
映画「ボリショイ・バビロン」解説
この解説記事には映画「ボリショイ・バビロン」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
ボリショイ・バビロン 華麗なるバレエの舞台裏のネタバレあらすじ:起・スキャンダルと失墜
ソビエト時代は崇拝の対象や政治外交に使われた、数少ないロシアブランドの一つ、ボリショイバレエ団。しかし、2013年1月、芸術監督のセルゲイ・フィーリンが顔に硫酸を掛けられるという襲撃事件に端を発するスキャンダルで、その内部対立が明らかとなった。
頻繁に役の入れ替わりがあるボリショイでは、常に生存競争が行われ、役が付かず踊りたくても踊れないダンサーも存在する。そんなダンサーたちを検察局の捜査官たちは容疑者のように扱い、犯人を捜した。
ボリショイ・バビロン 華麗なるバレエの舞台裏のネタバレあらすじ:承・分断されるバレエ団
捜査の結果、恋人を役から降ろされたパーヴェル・ドミトリチェンコの名が挙がった。しかし彼は、「殴れとは言ったが硫酸をかけろとまでは言っていない」と反論した。
さらに一部団員は、犯人は別にいると嘆願する程で、バレエ団はフィーリン派・ドミトリチェンコ派に二分され、数ヶ月後にはクレムリンが介入し、ボリショイの名声を取り戻すため、ウラジミール・ウーリンをバレエ団の新しい総裁に指名した。ウーリンは話を受ける代わりに、政府の干渉を一切断った。
ボリショイ・バビロン 華麗なるバレエの舞台裏のネタバレあらすじ:転・派閥分裂の原因
元々ボリショイのダンサーだったフィーリンは、芸術監督に就任した頃から団員とうまくいかなくなっていた。彼は就任後、新しいダンサーをバレエ団にたくさん入れた。しかしこのことで、結果的に役を追われたダンサーも多く、技術の満たない若いダンサーを優遇するフィーリンを不愉快に思うダンサーもいた。
ロシア人は指導者を信じない風潮があり、出演者側と管理側の対立構造が生まれた。片目を失明したが職に復帰したフィーリンは、後に何をやっても感謝されないハードワークで指導者としての喜びも幸せもなく、芸術監督の仕事を受けたのは間違いだったと振り返る。
そしてスキャンダルを手引きしたドミトリチェンコは禁固刑に処された。
ボリショイ・バビロン 華麗なるバレエの舞台裏の結末:再建に向けて
新総裁となったウーリンはまず、各々の仕事に対する態度を改革する事から取り掛かった。ボリショイの音楽レベルの低さを指摘し、音楽監督には辞めてもらった、そして管理側に配役の決定権はあるが、踊りたい役は申告してほしいと、ダンサー達の話をよく聞く姿勢を示した。
ウーリンはフィーリンと対立することもあったが、彼が芸術監督として能力を発揮する限り、解雇はしなかった。
賄賂などの腐敗が蔓延する国の縮図のようなこのボリショイバレエ団。変えるべきところはたくさんあるが、時間をかけてよい方向に向かう事、最も才能のあるダンサーが踊り、才能のある歌手が歌を歌うという、あくまでも芸術そのものを大切にし、興味を置いているウーリンは信じていた。
そして、スキャンダルから一年後、ニューヨーク公演を果たしたボリショイバレエ団は、スキャンダルから脱却した。
以上、映画「ボリショイ・バビロン 華麗なるバレエの舞台裏」のあらすじと結末でした。
ボリショイ・バビロン 華麗なるバレエの舞台のレビュー・考察:指導者への不信と言う皮肉
このドキュメンタリーはイギリスの製作陣によって作られているという事を前提の見なければならない。そうでなければバレエ団をロシアの国の縮図と言うたとえや、指導者への不信についての指摘は、仮にあったとしてもこのような形で明言される事はなかっただろう。スキャンダルと共に様々な汚職等が発覚するまで、ボリショイバレエ団には自浄作用がなかったとも言えるかもしれない。しかし、旧東側の体制の中で、コンテンポラリーの流行りに飲まれることなく、古典バレエや伝統を連綿と残して来たという功績やプライドが、このスキャンダルを乗り越える一因にもなっていただろう事を忘れたくはない。それはウラジミール・ウーリンの芸術そのものを大切にする姿勢に現れている。
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