ネバダ・スミスの紹介:1966年アメリカ映画。読み書きを知らずに育った青年が、活字を覚えて、精神的な成長を手にするまでを描いています。もちろんそこは西部劇。ドンパチは忙しく画面上を駆け巡ります。ナイーヴな青年を好演するスティーブ・マックィーン。脇役陣にはクセのある名優たちを配しています。第一級の娯楽作品として楽しめる本作を否定する映画評論はいまだ見つかりません。
監督:ヘンリー・ハサウェイ 出演者:スティーブ・マックィーン(マックス・サンド=ネバダ・スミス)、ブライアン・キース(ジョナス・コード)、カール・マルデン(トム・フィッチ)、アーサー・ケネディ(ビル・ボードリー)、マーティン・ランドー(ジェシー・コー)、ジャネット・マーゴリン(ニーサ)、スザンヌ・プレシェット(ピラー)、ラフ・ヴァローネ(ザッカルディ神父)ほか
映画「ネバダ・スミス」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「ネバダ・スミス」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
ネバダ・スミスの予告編 動画
映画「ネバダ・スミス」解説
この解説記事には映画「ネバダ・スミス」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
ネバダスミスのネタバレあらすじ:起
アメリカの西部開拓時代。白人の父親とインディアン(ネイティブアメリカン)の母親との間に生まれたマックス・サンド(スティーブ・マックィーン)。自宅への道順をたずねてきた男3人に両親を惨殺されます。変わり果てた両親の姿をみつけたマックスは、家を焼きはらうと、すぐその日のうちにならず者を追う復讐の旅に出ます。
見晴かす荒野のなかで3人の男たちが野宿をしています。馬の歩みを止め、マックスは奇襲を企てます。しかしよくみるとまったく違う3人組です。わけを話すと、「まぁ飯でも食え」と親切にされました。しかし明け方、男たちの姿が見当たりません。マックスの所持金8ドル、馬、ライフル銃も、ともに姿を消していました。
歩きどおしで先のみえないマックスを、夜の寒さが襲います。体力の消耗と空腹が彼を苦しめます。荒地に埋もれていた拳銃を手に、空腹を満たそうと考えたマックスは、野営中の男を襲います。しかし相手は弾の入っていない拳銃をすぐに見抜きます。すぐれた目利きをもつガンマンをまえにして、マックスはうなだれてしまいました。
男はジョナス・コード(ブライアン・キース)といって銃商人です。コードを師と仰ぐようになったマックスは、銃の名人になる教えを請います。コードはいいます。「いいか、奴らはクズだ。酒場か娼館か、間違っても、教会にはいない」。「どんな汚い手を使ってくるか分からない、おまえもドブネズミになれ」。西部で生き残るための方途と拳銃の腕をコードは授けます。
ネバダスミスのネタバレあらすじ:承
コードと別れたマックスはカウボーイ姿に身を変えて、アビリーンの町へやって来ます。彼はそこでインディアンの娘ニーサ(ジャネット・マーゴリン)を知ります。酒場ではたらくニーサは、店でポーカーをしている男がマックスの捜している男ジェシー(マーティン・ランドー)だと告げます。マックスはジェシーを追い詰めます。死闘の末、復讐を果たしますが、自らも深手を負ってしまいます。
ニーサに救われたマックスは、インディアンの集落で療養します。ニーサの手厚い看護で傷が癒えた彼はふたたび町へ戻ります。一味のほかのふたりを探そうと、ジェシーの部屋へ忍びこみます。するとジェシーの妻が現れます。ヤクザな夫を葬ったマックスに感謝する妻は、3人組のひとりビルが服役中の身であると話します。
刑務所へ向かう最短距離は銀行強盗です。銀行員に拳銃を突きつけたマックスはすぐに逮捕され、身柄は検事局から刑務所へ、とんとん拍子に送られます。終点は密林の奥地に建つ囚人キャンプでした。人里離れた地で強制労働に従事する男たち。足枷をはめられたマックスは、囚人たちのなかに一味の男ビル(アーサー・ケネディ)をみつけ出しました。
ネバダスミスのネタバレあらすじ:転
マックスは脱獄に着手します。檻の中での復讐もさることながら、檻の外では残るもうひとりが大手を振って歩いています。移監を伝えられたマックスに時間はありません。囚人キャンプに出入りする女ピラー(スザンヌ・プレシェット)に近づきます。ピラーを自分の女にしたマックスは、地理にくわしい彼女を舵取り役に、ビルとカヌーで沼地を離れます。
毒蛇の棲む沼に囲まれた囚人キャンプから脱走できた囚人はまだいません。追手が迫るなか、マックスは仲間割れを理由にビルに喧嘩を売ります。「インディアン」と口汚くののしるビルにマックスが敏感に反応すると、相手が誰だかビルはやっと理解します。マックスは狂人になってビルを殺害します。マックスを必死に愛したピラーは、不幸にも毒蛇に噛まれ永眠します。
ネバダスミスの結末
月日が流れます。青臭さを残したかつての青年マックスに逞しさが加わっています。しかも悪人の相が出ているためか、おなじ悪相をもった者たちがよく近づいてきます。悪漢たちの成敗を受けていたある日。マックスは、通りがかりのザッカルディ神父(ラフ・ヴァローネ)に救われます。その足で彼ははじめて教会へ足を踏み入れることになりました。
ザッカルディ神父のもとでマックスは安息の日月を過ごします。教会を去る日、神父は聖書をもたせますが、マックスは拒否します。その姿をかつての自分に重ねる神父は、自らの家族を語り、インディアンに殺害された家族への思いを語ります。しかし迷妄の徒であるマックスに神父の真意は届きません。感謝の言葉もそこそこに敵討ちへと向かって行きました。
マックスが追う3人目の男の名がトム・フィッチ(カール・マルデン)です。最後のひとりをみつけ出したマックスは、ネバダ・スミスを名乗ってトムの手下に潜りこみました。一味の現金強盗に加担したマックスは、隙を狙ってトムを窮地へ追いこみます。
しかしマックスに、突然心境の変化が起こります。小動物のように怯える男を前に「こんなクズ、殺す意味はない」といきなり拳銃をうち捨てます。あとは何事もなかったかのように立ち去って行きました。マックスは、自らの意思で敵討ちを放棄します。その瞬間、さらに強い男ネバダ・スミスとして生まれ変わったかのようでした。
以上、映画「ネバダ・スミス」のあらすじと結末でした。
この映画「ネバダ・スミス」は、スティーヴ・マックィーンの代表作の1本だ。
彼の素晴らしさは、何と言っても、あの行動力にあると言える。全身がバネのような機敏な運動神経、そこに我々映画ファンはしびれたものでした。
彼が出現するまでのハリウッドの映画スターといえば、重量感はあっても、ハンサムであっても、こうした爽快な行動力を持っていたスターはいなかったと思う。
TVの「拳銃無宿」でスティーヴ・マックィーンが登場して、みんながアッと驚いたと思うんですね。
実に新鮮な感じだったのではないかと想像できますね。
こうして映画界へ進出したマックィーンは、その後のハリウッドを代表する大スターへとなっていったんですね。
この「ネバダ・スミス」は、「荒野の七人」や「大脱走」という集団アクション映画で、人気を高めていったマックィーンが、単独主演して大ヒットとなり、押しも押されぬ大スターになった記念すべき映画なのだと思う。
とにかく、この映画はマックィーンの魅力を見事に結集したアクション西部劇であり、マックィーンの代表作の1本となった作品なんですね。
親の仇を求めて、次々と決闘を重ねていくマックィーンの敏捷な大アクションが存分に楽しめる作品になっていると思う。
この映画、実は初め「シェーン」のアラン・ラッドが演じるはずだったんですが、彼が亡くなってしまって、マックィーンが演じることになったんですね。
この映画がまた、マックィーンの残された傑作の1本になるとは、何かのめぐりあわせを感じずにはいられません。
この映画でのマックィーンは、次々と死を目前にした危険に見舞われることになります。
それを乗り越えていくのは、もちろん彼自身の強い意志の力なのですが、私が心打たれたのは、そんな中で、幾人かの人の優しい心に救われて、実はその度に彼は成長していくんですね。
そして、最後は、仇を殺さないで去っていくんですね。
彼は復讐の空しさをはっきりと知るまでに、大きな人間に育っていったのだと思う。
この映画のテーマは、実はここにあったんだと思うのですが、この人間像は、深読みすると、マックィーン自身の生きて来た道と重なっているような気がします。
非行少年で、子供の頃から警察に四回も逮捕されて、15歳からさすらいの旅に出て、いわば世間に反抗した青春時代を送ってきたんですね。
タンカーの乗組員や、テキサスの油田で働いたりと、いろんな仕事を経験して、そんな中で、彼に俳優になることを勧めてくれる人がいたり、いろんな人々の優しい心に助けられて、大スターへの道を進んだのです。
彼自身の一生は、映画という”虚構の夢の世界”の中のドラマを通して、私たち人間の魂の旅路を語っていたような気がしてなりません。