赤西蠣太(あかにしかきた)の紹介:1936年日本映画。伊達騒動渦中の伊達兵部の邸に密偵として送りこまれた赤西蠣太。みごと秘密を手にして国元に戻ることになりますが、邸を脱け出るのがひと苦労。さあ、どうしたものか。赤西蠣太、原田甲斐役には片岡千恵蔵が一人二役。志賀直哉原作の同名小説を、伊丹万作が脚色・演出した時代劇コメディです。
監督:伊丹万作 出演者:片岡千恵蔵(赤西蠣太、原田甲斐)、毛利峯子(さざ波)、原健作(青鮫鱒次郎)、瀬川路三郎(伊達兵部)、滝沢静子(老女沖の石)、梅村蓉子(政岡)、志村喬(角又鱈之進)ほか
映画「赤西蠣太」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「赤西蠣太」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
赤西蠣太の予告編 動画
映画「赤西蠣太」解説
この解説記事には映画「赤西蠣太」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
赤西蠣太のネタバレあらすじ:起
物語は江戸時代。麻布仙台坂にある伊達兵部の屋敷からはじまります。家来ふたりが赤西蠣太の噂ばなしをしています。最近、侍長屋に越してきた新参のあの男、夜になるといつも行灯相手に将棋を指しているよ、よっぽど将棋の腕が劣るとみえる、どうだ、ひとつ相手をしてやるか、そう言ってからかいますが、いざ相手をしてみると、まったく歯が立ちません。赤西蠣太、昼行燈のような風情でいながら、ひと癖ありそうです。
新参の赤西は、使いで書状を届けに行くことになりました。伊達藩の重臣、原田甲斐の屋敷です。対応に現れた原田家の家来は、書状を受け取ると、すぐに座を立ち別室に入ります。そこで書状を盗み見しようとしていると、赤西が現れます。「もう、ちゃんと写しを取ってあります」。
書状を広げていたのは今村半之亟です。伊達藩の重臣、伊達安芸の家来です。じつは、青鮫鱒次郎と素性を偽って原田家へ入りこんでいます。赤西は、同じく伊達藩の重臣、片倉小十郎の家来、川倉利平です。ふたりは共に間諜(スパイ)として、伊達兵部・原田甲斐の密議を暴くために国元から使わされてきています。
赤西蠣太のネタバレあらすじ:承
奉公先を超えて行き来する赤西と青鮫は、屋敷内でも目に付くようになります。そんな折、商家からさざ波という娘が伊達兵部の屋敷へ召されてきます。その美しく可憐な姿を目にした邸内の男たちは色めき立ち、さざなみの一挙一動に目が行きます。
武家社会とは、村社会に似た閉鎖空間です。変化の少ない日常の、退屈しのぎになるなら、と些細な話題でも口に上ります。赤西と青鮫との奇妙な行き交いも、捨ててはおけぬ話題です。しかし、そこはどうしたって、さざ波の美しさには勝てません。さざ波が邸内の話題をさらうようになると、赤西と青鮫との関係は、将棋友だちということで一件落着します。
さて、赤西は、そろそろ白石へ戻らなければなりません。間諜という仕事柄、仕入れた情報を上司に報告する義務を負っています。しかし、いま屋敷を出ることは得策ではありません。暇をもらうにも、唐突すぎては逆効果です。そこで青鮫が一計を案じます。さざ波に恋文を書く。赤西は袖にされ、情けなく邸を去ってゆく。昼行燈の赤西なら、誰もが納得する成り行きです。
赤西蠣太のネタバレあらすじ:転
恋に縁のない赤西は、苦労して恋文をしたためます。さざ波にじかに手渡すと、「返事は必要ですか」と問われます。赤西は「ええ」と答えますが、しかし返事が来ません。これでは屋敷を去る言い訳が立たないと、さらにもう一通したためます。今度はそれを、わざと長廊下の隅へ落とします。誰かに拾われ、衆目に知れ、失笑を買うなか、いたたまれずに屋敷を去るという寸法です。
二度目の文は奥女中に拾われ、屋敷奥女中の老女の手に渡ります。さっそく奥へ呼ばれ、老女の注意を受けた赤西は、これで口実を設けることができました。ところが、さざ波から赤西に返事が寄せられてきます。
それは一通の恋文です。さざ波は、憂いある恋情を切々と訴えています。赤西に寄せる思いは紛れもなく本心です。赤西は心を動かされますが、役目を忘れてはならない身の上です。せっかくの恋文を行灯の火で燃すと、旅支度を整えて、一路白石へ向かいます。
赤西蠣太の結末
赤西の恋文は、老女から殿様の伊達兵部へ渡り、邸内へもおもしろおかしく伝わります。原田甲斐を招いた酒席の座興でも披露されますが、甲斐は赤西を疑います。さっそく、さざ波の事情聴取が始まります。
さざ波は今も赤西に恋をしています。ならば、赤西は去る必要もなく、笑いものになるどころか、男冥利に尽きるはずです。男なら大いにヤニ下がっていいはずなのに。姿を消した。「これは怪しい」と甲斐。早速、赤西に追手を掛けることになりました。
追手は六人、いずれも屈強な侍です。しかし、少々お頭が弱いらしく、僧侶に化けた赤西を見過ごします。その後、赤西は無事に任務を終えました。
やがて伊達騒動も原田甲斐ほか重臣の死をもって終わりを迎えます。お家騒動が一段落すると、赤西はふたたび上京し、あの日以来、実家に戻っていたさざ波を訪ねます。さざ波は、声を上げて喜色満面の面持ちです。ふたり共、対座したまま一時もその場から離れません。赤西は「ゆっくりしている暇はない」と繰り返し述べながら、朝からもう夜更けだというのに一日中、居座っています。
以上、映画「赤西蠣太」のあらすじと結末でした。
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