人間の壁の紹介:1959年日本映画。市から退職を求められた小学校の若い女性教員を軸に、家庭、教室、学校、社会の諸問題にさらされながら格闘を続ける教員群像を描く。石川達三の同名小説が原作。物語のモデルは1957年の佐賀県教職員組合の、大規模人員削減との闘い。
監督:山本薩夫 出演者:香川京子(志野田[尾崎]ふみ子)、宇野重吉(沢田先生)、高橋昌也(一条先生)、宇津井健(穴山先生)、三ツ矢歌子(神倉先生)、南原伸二(志野田健一郎)ほか
映画「人間の壁」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「人間の壁」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「人間の壁」解説
この解説記事には映画「人間の壁」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
人間の壁のネタバレあらすじ:起
津田山市の大きな小学校で新年度が始まる。ふみ子は5年3組の担任になる。隣の教室の担任の沢田は、教員をしていた妻が過労で体を悪くしたために山奥の学校から転勤して来た。職員室には何事にも斜に構える一条、熱血漢の穴山、女教師はお化粧しても酒を飲んでも文句をつけられると男社会に不満を抱える神倉といった先生たちがいた。
沢田は、今日は天気がいいから日光浴に行こうと最初の時間に子供たちを、街を一望する丘に連れていき、「100万円あったらどうする?」と子供たちに問いかける。自分のために使うのが皆に役に立つように使うのか。
ふみ子は放課後、長期欠席の続く子供の家に行く。道行く子供たちにその家の場所をたずねるが、指さす方向に家は見えない。岸壁の洞穴で、炭鉱を首になった父親と生活しているのだった。ふみ子は病気にならないようにと願うしかなかった。
子供たちの身体検査の日、ふみ子は校長室に呼ばれる。市教育長がふみ子に、退職金は割り増しするから退職してほしいと言う。県財政悪化のために前年度から教員の首切りが続いていた。共働きの女の先生が狙われる。ふみ子も夫が県教組の執行委員をしていた。
人間の壁のネタバレあらすじ:承
ふみ子の学校ではふみ子と須藤が退職を勧められる。ふみ子も、子供が小さい須藤も退職を断った。組合の会議では、これを退職勧奨に遭った個人の問題にするのか、組合全体の問題として戦うのか結論が出ない。
東京での日教組の集会からの帰り、汽車の中でふみ子の夫、志野田は日教組上層部の弱腰を批判する。手近な相手を批判してのし上がる志野田の処世術に気づいている県教組委員長は腹を立てる。志野田はふみ子に県教組委員長選挙に立候補すると言う。家で妻に威張りちらす志野田とふみ子との関係は冷え切っていた。あなたはもう立派な中学教師だった昔のあなたではないからと、ふみ子は立候補に反対する。結局落選した志野田は東京へ去る。
退職勧奨問題で県教組の集まりがある。婦人部長はこれが、県の財政問題にかこけつけて教員に圧力をかけ、戦後の民主的教育を後退させようとする保守政党の策動であると主張する。県教組はようやくまとまって退職勧奨に遭っている教員を支えて戦うようになる。
人間の壁のネタバレあらすじ:転
そのころ沢田の妻が亡くなる。さらに暴風雨の朝、ふみ子のクラスの子供が駅で貨車にはねられて死ぬ。教室で子供たちに友だちの死を伝えたふみ子は、それが、貧しい子供が三円安いノートを買いに行く途中の事故だったことを知る。
夏休み中に正式に離婚が成立し、新学期、ふみ子は旧姓の尾崎姓に戻って仕事をすることになる。長期欠席の子供も学校に通い始める。志野田がこれまでと立場を変え、雑誌に日教組を批判する文章を書き始めていたのに対し、ふみ子は組合の仕事を引き受ける。
そんな時、沢田に不運なできごとが起こっていた。小児麻痺で足の不自由な内村という子を同級の三人が掃除中にからかっているのを見て、沢田は三人を叩き、内村の気持ちを考えるように諭す。
人間の壁の結末
後日、教室で沢田は内村に内村自身が書いた作文を読ませ子供たちは内村の心情をくみ取るようになる。だが、親たちの一部は沢田を、子供を殴った暴力教師であると騒ぎだす。組合の会合でも沢田の問題が取りあげられる。一条は、自民党の日教組攻撃に利用されるだけだから沢田個人の問題にしろと主張するが、ふみ子は、既に校長に退職するように言われている沢田を組合は支えるべきだと論じる。
ふみ子は沢田の家で、辞表を出したことを直接沢田から言われる。彼は子供たちが自分を評価してくれればそれで十分と考えていた。穴山が夜の浜辺を歩きながら大声で日教組の歌を歌うのを耳にして沢田は、別の職場で自分も穴山のようにがんばるとふみ子に誓う。
須藤から学校のふみ子に手紙が来る。腎臓が悪くても退職に追い込まれるのがいやで休まないで働いてきた須藤だったが、手紙にはついに辞表を出したことが書き記されていた。ふみ子は組合の力が大切なことを職員室で説き、須藤の退職が取り消されるように立ち上がろうと呼びかける。
ふみ子に続いて神倉たち女性の教員が立ち上がり、穴山たち男性の教員が続く。ふみ子たちは、校長室に入っていった。
以上、映画「人間の壁」のあらすじと結末でした。
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