アングスト/不安(別題:鮮血と絶叫のメロディ/引き裂かれた夜)の紹介:1983年オーストリア映画。この映画は、1980年にオーストリアでヴェルナー・クニーセクという男が実際に起こした殺人事件を実録タッチで再現している。1983年公開当時、オーストリアでは一週間で上映打ち切りとなり、ヨーロッパの他の国々でも上映禁止となったいわくつきの作品。日本では『鮮血と絶叫のメロディー/引き裂かれた夜』というタイトルでビデオリリースされている。制作費を自費負担した監督のジェラルド・カーグルは多額の負債を抱えてしまい、これ以降長編映画は撮っていない。
監督:ジェラルド・カーグル 撮影・編集:ズビグニェフ・リプチンスキ 音楽:クラウス・シュルツ キャスト:アーウィン・レダー(K)、シルヴィア・ラベンレイター(娘)、エディット・ロゼット(母)、ルドルフ・ゲッツ(息子)ほか
映画「アングスト/不安」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「アングスト/不安」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
アングスト/不安の予告編 動画
映画「アングスト/不安」解説
この解説記事には映画「アングスト/不安」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
アングスト/不安のネタバレあらすじ:起
人通りのない静かな道を歩いている一人の男“K”。ある一軒の家を選びドアをノックすると、出てきた老婦人に「撃ちますよ」と言って発砲。彼女は死亡し、その後現場に戻ってきたKは逮捕されます。
Kはなぜ殺人を犯したのでしょうか?K自身、自分の異常性を認識しそれを訴えますが、精神鑑定をする医師はそれを認めません。Kにはサディストの傾向があるが、精神異常ではない。それが医師の判断でした。Kがこのような性格・性癖になった原因は、過去の生い立ちにありそうです。
幼い頃、父親のいないKは主に祖母に育てられ、祖母の希望で神父になるため修道院に入れられますが、そこで動物虐待など問題を起こし追い出されてしまいます。その後は母の夫となった義理の父が教育係となり、Kを厳しくしつけるようになります。
14才のとき、45才のアネマリーという女性とつき合いますが、その女性に被虐的な性癖があったため、Kは次第にサディズムに目覚めていきます。女性を痛めつけたいと思うようになり、自分の母親をナイフでめった刺しにして逃亡。その後捕まりますが、母が生きていたため数年の刑期で済みました。
出所後は売春婦の女性とつき合い、彼女と客との行為をよくのぞき見ていたといいます。彼女は特にマゾというわけではなく、危害を加えられることもありませんでした。
Kは27才のときに見ず知らずの老婦人を射殺。そして10年近い刑期の終わりが近づき、仮出所が許されようとしています。
アングスト/不安のネタバレあらすじ:承
仮出所の日。外に出てKが思ったのは、次は捕まらないということでした。
Kは早速獲物を見つけるため町へ出ます。コーヒースタンドに立ち寄り、そこにいた若い女性客二人に興味を覚えつつソーセージを頬張ると、その感情を押し殺して店をあとにします。計画を全うするには周到な準備が必要だからです。
女性が運転するタクシーに乗り込むと、彼女を襲うという衝動を抑えられず、車を森の方へと走らせます。靴ひもをはずして首を絞めようと機を窺っていましたが、気づかれ騒がれてしまいます。あわててカバンも持たず飛び出したKは森の中を走って逃げ、やがて一軒の屋敷に目をつけます。
空き家かもしれないと思いガラスを割って中に入ると、そこには人の住んでいる気配がありました。誰かと出くわすことを想像し、Kは興奮してきました。歩き回っていると、車イスに乗った青年が現れ「パパ?」と声をかけてきます。その後、外で車の音がしました。この家の母親とその娘が帰ってきたのです。
Kが胸を高鳴らせ隠れていると、小さな飼い犬がトコトコとKのところへとやってきました。犬は吠えるでもなくただ動き回っています。娘は2階のバスタブに湯を入れ始め、青年は母に「パパがいるよ」と告げますが取り合ってもらえません。父親はとうの昔に亡くなっているのですから。
アングスト/不安のネタバレあらすじ:転
Kは行動を開始します。車イスを蹴飛ばして息子を転がし、娘を捕まえてドアノブに片足を縛り付けます。次は母親に襲いかかり首を絞めますが、なかなか思い描いたようにはうまく事が運ばず、Kは次第に疲れ、座り込んでしまいます。
歩けない息子は腕の力だけで2階へ移動し、娘は近くにあったナイフを口にくわえます。突然鳴り始めた電話の音にKは焦って立ち上がり、2階にいた息子を見つけるとその首を絞め、バスタブに顔を沈めて溺死させてしまいます。
「早すぎる。台無しだ!」Kは苛立ちます。
放置していた母親のところに行くと全く動かず、Kは死んだふりをしているのかと疑います。しかし長女の、母は病気、台所にある薬を飲ませてほしいという言葉を聞き、蘇生のためにあわてて薬を取りにいきます。
Kは、自分のトラウマである母や祖母のような女性を恐れており、彼女に愛する家族(この場合は息子)の死を見せつけることによって満足感を得ようと思っていましたが、肝心の母親が死んでしまっては元も子もありません。必死に大量の薬を口に押し込みますが時すでに遅し、母親は息を吹き返しませんでした。
残ったのは娘だけ。彼女は犯人であるKを誘惑します。Kはそう感じますが、いずれ殺すことに変わりはありません。突然室内の灯りが消え、その混乱に乗じて娘はドアの影に隠れます。Kはマッチで火をつけながら娘を探します。すきを見て娘は逃げ出そうとしますが物音をたててしまい、Kに気づかれてしまいます。
ガラスを破って屋外に出た娘でしたが、裏口に続くトンネルのような通路でKに捕まり、ナイフで何度も何度も刺され絶命してしまいます。Kは血まみれの娘の死体を抱き、そのままそこで眠ってしまいました。犬だけがまるで遊ぶように辺りを走り回っています…。
アングスト/不安の結末
目覚めたKは計画を練り直します。本当はもっと時間をかけてこの家族を苦しめたかったのですが、全員死んでしまったので仕方ありません。Kは彼らの死体を車に積み、次の獲物(たち)にそれを見せつけ、恐怖におののく様を楽しんでから殺したいと考えます。
重い死体を引きずって次々と運び、車のトランクに押し込みます。血まみれの服を脱ぎ、台所で血を洗い流したKは適当な服を選び取ってそそくさと着込み、屋敷を後にします。車のドアを閉める際、それが習慣なのか当然のように犬も飛び乗ってきました。
Kは、次なる獲物について考えを巡らせ、高揚し、焦っています。
途中で他の車と事故を起こしてしまったKは、「降りてきなさい!」と相手の高齢女性に詰め寄られパニックに。大声で叫ぶとそのまま車を発進させて逃げてしまいます。
そして向かった先は、昨日立ち寄ったコーヒースタンド。そこには昨日と全く同じメンバーがいました。目をつけていた女たちがいたことにKは歓喜し、どうやって襲ってやろうかと考えながら、黒い手袋をしたままソーセージをつかんで頬張ります。
明らかにおかしなKの様子に店員は警察を呼んでいました。Kは、車の中で吠えていた犬にソーセージを持っていって食べさせます。そしてついに、その場へ警官たちが現れ、店員や店にいた女たちの前で車のトランクが開かれるのでした。
その後、逮捕されたKは終身刑を言い渡されました。懲りずに脱獄を試みたそうですが、失敗に終わったそうです。
以上、映画「アングスト/不安」のあらすじと結末でした。
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