オーケストラ!の紹介:2009年フランス映画。名門オーケストラの元天才指揮者がひょんなことから昔の仲間とともにオーケストラを再結成、かつての栄光を取り戻そうと奮闘する姿をユーモラスに描く。
監督:ラデュ・ミへイレアニュ 出演:アレクセイ・グシュコブ、メラニー・ロラン、フランソワ・ベルレアン、ミュウ=ミュウほか
映画「オーケストラ!」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「オーケストラ!」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
オーケストラ!の予告編 動画
映画「オーケストラ!」解説
この解説記事には映画「オーケストラ!」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
映画オーケストラ!のネタバレあらすじ:清掃員となった元指揮者に降って湧いたチャンス
ボリショイ劇場の指揮者だったアンドレイは、ブレジネフ政権時代に団員のユダヤ人演奏家をかばった為にオーケストラを解雇され、今は劇場でしがない清掃員をしている。ある日、支配人の部屋を掃除していると、パリのシャトレ座から出演依頼のファックスが送られてくる。中止になった別のオーケストラの代打だが、アンドレイはかつてのオーケストラの仲間を集め、今のボリショイ楽団と入れ替わってパリで演奏をすることを思いつく。ただし、公演は二週間後。
映画オーケストラ!のネタバレあらすじ:無事にパリへいけるのか?
友人のチェロ弾きサーシャに計画を打ち明け、いざ決行しようとするがフランス語を話せる交渉役を、かつて自分からオーケストラを奪った共産党員ガヴリーロフやむなく頼む。ひそかにパリで共産党再興をもくろむガヴリーロフは乗ってくる。シャトレ座の支配人との交渉で演目は?と聞かれると、アンドレイはチャイコフスキーのバイオリン協奏曲、ソリストは若手のアンヌ=マリー・ジャケを指名。シャトレ座から依頼を受けたアンヌ=マリーはマエストロと共演できると喜ぶが、実は昔、アンドレイの楽団にいた彼女のマネージャーのギレーヌは、彼の思惑を警戒し難色を示す。さて、二週間の間に仲間をかき集めなくてはいけない。運転手からポルノ映画BGM演奏まで現在職種はさまざま、おまけにブランクは一部を除き30年。問題発生、出演料は後払いということが発覚、これではパリへ行く飛行機代がない。仕方なくサクラで出席していた披露宴で、破壊的な演奏をするチェロリストをスポンサーとしてスカウト。持っていないビザはジプシーのバイオリニストが何とかしてくれると言うので、空港で偽造パスポートを作成。なんとか舞台はパリへ。
映画オーケストラ!のネタバレあらすじ:自由すぎる団員と、不安になるアンヌ=マリー
ホテルに着くと団員たちはギャラを要求。シャトレ座のアシスタント、ジャン=ポールがカードを止められると内心泣きながら払うと団員たちはそれぞれ行きたい場所へ解散!スケジュールもろくに聞いていない。アンドレイは明日のリハーサルには来るようにと叫ぶが、翌日リハーサルへ来たのはチェロリストのサーシャ、破壊的な演奏のスポンサーしかいない。それもそのはず、パリへやってきた団員たちはメトロでの演奏など思い思いの仕事を始めていたのだ。イライラしだすアンヌ=マリーに、サーシャが無伴奏チェロ組曲を弾いてみせる。ちょっと安心した所へジプシーのバイオリニストがやってくる。訝しげな目をするアンヌ=マリーに挑戦でもするように彼はパガニーニのカプリーズを即興で演奏してみせると、どこで勉強してきたのかアンヌ=マリーは興味を持つのだが、ジプシーの彼には生活の糧であるバイオリン演奏は「勉強する」ものではなく話が噛みあわない。結局さしてリハーサルもできないまま当日を迎えることになる。 コンサートの前日、アンドレイはアンヌ=マリーはディナーの予約をしていた。神経質になっていたマネージャーのギレーヌは、そっとして置くようにとアンドレイに釘を刺す。 ディナーの最中、音楽について話がしたいアンヌ=マリーに、アンドレイはかつて自分が指揮をしていた頃の事を話し始めるが、やがて話はレアという今はいないバイオリニストの話に。レアの事ばかり話すアンドレイにアンヌ=マリーは、自分はレアの代わりではない、この公演はキャンセルすると言う。
映画オーケストラ!の結末:チャイコフスキーの協奏曲一番と共に去来する真実
キャンセル宣言した彼女の元へサーシャがやってくる、つたないフランス語で、一緒に演奏会をすれば両親が見つかるかもしれないと、ギレーヌに育てられたアンヌ=マリーに意味深な事を言う。ギレーヌは「嘘をついてごめんなさい」という手紙と、レアの残した楽譜を置いて出て行く。たくさんの書き込みがされた楽譜を読みアンヌ=マリーはシャトレ座へ向かう。一方、団員たちの下へは「レアのために戻れ」という携帯メールが届く。 無事開演とほぼ同時に団員が揃い、音あわせもそこそこにブランク30年がぶっつけ本番。うまくいくわけがない。散々な出だしのままアンヌ=マリーのソロパートへ突入、彼女の奏でるかつてレアとアンドレイの音楽に団員たちの中に30年前の音楽が蘇えっていく。そして生まれるハーモニーの中に去来する過去。アンヌ=マリーの母親であるレアはアンドレイがかばおうとしたユダヤ人演奏家の一人、しかし夫婦で収容所に送られ寒さの中バイオリンを演奏する事を思い狂いながら死んだ。当時団員だったギレーヌは楽器のケースにまだ赤子のアンヌ=マリーを隠し、フランス大使館へ逃げ込み今に至るのだった。果たして出だしこそうまくいかなかったが、協奏曲は成功する。成功を収めた一行は公演で世界一周。エンドロールへ。
「オーケストラ!」感想・レビュー
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原題はコンチェルト。
落ちぶれた楽団員たちが偽のオーケストラに成りすまして世界ツアーを行うストーリー。
劇中のテーマでもあるチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲が本当に美しい。
本当にこの人たち大丈夫なの?となる展開が多いがクライマックスは胸が熱くなる演奏を聴かせてくれる。
少し重いシーンもあるが、おちゃめな楽団員たちの姿にほっこりさせられる。 -
なんとなく馴染みがない、敷居が高そう、などと避けられがちなクラシック音楽ですが、映画からはじめてみるのはいかがでしょう?
「オーケストラ!」には誰もが一度は聞いたことがあるような有名曲がたくさん出てきます。BGMとして楽しみながら、オーケストラの団員たちのお茶目な行動をみつつ、オーケストラへの興味を持つ。クラシック好きには「こんな楽団があったら面白そう!」と思えるでしょうし、オーケストラを聴きに行ったことがない人は「こんな演奏が聴いてみたい!」と思えるかもしれません。
オーケストラが好きな人にも、そうでない人にもおすすめしたい映画です。
音楽は消えていく芸術、と言うような言われ方をすることがある。文学や美術とは違い、音は消えてしまうからだ。楽譜はあれど、あくまで音の長さと高さを表したグラフでしかない。譜面を追うだけでは演奏とは言わない。だからこそ音楽家は楽譜に解釈や解釈に基づいた演奏法を書き込み自分の演奏する曲を作っていく。ギレーヌがアンヌ=マリーに残したレアの楽譜には、レアがアンドレイと作ろうとしていた音楽が書き込まれていたのだろう。アンヌ=マリーはレアを引き合いに出されて怒ったが、楽譜を見てこの音楽を自分も作りたいと思ったのではないだろうか。自分がアンドレイと話したかった音楽やハーモニーの話をレアの楽譜を通して感じたのだと思いたい。一度はキャンセルした彼女が戻ってきた理由は、サーシャやギレーヌの説得も勿論だが、純粋にひとりの音楽家としてアンドレイと音楽を作りたかったのだと私は思っている。