その手に触れるまでの紹介:2019年ベルギー,フランス映画。ベルギーに暮らす13歳のアメッドはゲームが好きなごく普通の少年だった。しかし尊敬する導師に感化された結果、学校の先生をイスラムの敵と見なして殺害しようとした。過激な思想に囚われた若きアメッドに再び変化は訪れるのだろうか。社会問題から題材を得て心を揺さぶる作品を作り続ける、カンヌ映画祭の常連ダルデンヌ兄弟は本作でも第72回カンヌ国際映画祭監督賞を受賞。
監督:ジャン=ピエール・ダルデンヌ、リュック・ダルデンヌ 出演者:イディル・ベン・アディ(アメッド)、オリヴィエ・ボノー(教育官)、ミリエム・アケディウ(イネス先生)、ヴィクトリア・ブルック(ルイーズ)、クレール・ボドソン(母親)、オスマン・ムーメン(導師)、ほか
映画「その手に触れるまで」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「その手に触れるまで」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
その手に触れるまでの予告編 動画
映画「その手に触れるまで」解説
この解説記事には映画「その手に触れるまで」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
その手に触れるまでのネタバレあらすじ:起・ジハード失敗
ベルギーに暮らす13歳のアメッドは、放課後、クラスを出るときイネス先生とのさよならの握手を拒否した。「大人のムスリムは女性に触らない」からだ。彼は今、兄ラシッドと礼拝に通う小さな食品店の二階のモスクの導師(イマーム)の強い影響を受け、イスラム教の聖典コーランの学習に夢中で、お祈りにも熱心に取り組んでいる。
父が家を出て以来、一人で子供たちを育てている母親は夕食のとき、「イネス先生は識字障害克服の恩人よ。毎晩読み書きと計算を教えに来てくれた」と言ってアメッドが握手をしなかった無礼を咎めるが、アメッドは聞く耳をもたない。母を飲んだくれ呼ばわりし、露出の多い服装の姉を娼婦呼ばわりする。
ひと月前までゲーム好きな少年だった息子アメッドの変化に母親は困っている。イスラム過激派になって死んだ従兄のようになってほしくないと思うが、今やその従兄もアメッドには憧れの対象だった。
そんなある日、イネス先生は歌を通じて日常会話としてのアラビア語を学ぶ“歌の授業”を提案する。それを聞いた導師はアメッドに、「聖なる言葉を歌で学ぶなど冒涜的だ」と言う。そしてイネス先生を背教者であり、ジハード(聖戦)の標的だと認定する。
放課後、クラスの内容についてイネス先生は保護者との話し合いをもつ。歌の授業について、「コーランが大切。日常会話のアラビア語は後ででもいい」と言う保護者も「アラビア語ができるほうが仕事の選択肢も増える」と歓迎する保護者もいて意見が分かれる。導師に促されてラシッドとアメッドも話し合いに参加したが、アメッドは「先生の新しい彼氏はユダヤ人だ」と言って集会を出ていく。後でイネス先生は導師の食品店にいたアメッドに「コーランは異教徒の共存を認めているのよ」と教えようとするがアメッドは聞く耳をもたない。
とうとうアメッドは決意して靴下にナイフを忍ばせてイネス先生のアパートを訪ねる。ドアを開けたイネス先生に襲い掛かるが、先生は部屋に逃げ込み、先生を刺すことはできなかった。導師の所にアメッドが逃げると、導師は「まだジハードの時ではないと言ったのに」と困ってしまう。モスクを守るために導師はアメッドに、自首して、ネット導師に促されて犯行に及んだと言えと指示する。
その手に触れるまでのネタバレあらすじ:承・少年院
アメッドは少年院に送られる。少年院にはアラビア語を理解する人もいたが、礼拝の時刻を厳格に守ろうとするアメッドは最初からトラブルを起こす。
差し入れのお菓子をもって面会に来た母は、農場作業を手伝う更生プログラムも一回でやめ、心理士と話もしない頑なな息子アメッドを心配している。「イネス先生のことを背教者だと言っていた」というラシッドの証言で導師が逮捕されたという話はアメッドを悲しませる。そして母は、歌の授業を始めたイネス先生がアメッドに会いたがっているということを伝えた。
その手に触れるまでのネタバレあらすじ:転・先生との再会
やがて、アメッドは母に電話で自分もイネス先生に会いたいと思うと伝える。少年院でフランス語の出来ない子供の学習を手伝い、週一回の農場作業も再開した。農場作業では一人の教育官と一緒に酪農家を手伝う。農場主の娘ルイーズも親切にしてくれるし、礼拝の場所も確保してくれている。だが、アメッドは礼拝の後、洗面所の戸棚から歯ブラシを失敬し、少年院の自分の部屋で密かにそれを削って尖らせるのだった。
心理士との面談でアメッドの変化が確認され、イネス先生との面会が決まる。面会に先だってアメッドは立ち合いの弁護士に差し入れの品のリストと称して母宛ての、「真のイスラム教徒になってください。そうすれば僕のことが理解できます」と記した手紙を託し、尖らせた歯ブラシをトイレで靴下に隠して面会の場に臨む。
だが、アメッドを見たとたんイネス先生は泣き出して部屋を出てしまい、ジハードを決行することはできなかった。
その手に触れるまでの結末:逃亡
再び酪農家に実習に訪れる。ルイーズは何かとアメッドと二人きりになりたがっているようだった。とうとうビーツ畑でルイーズはアメッドにキスをする。アメッドは念入りに口を洗って礼拝するが、女に触れてしまったという罪の意識を逃れられない。
ルイーズの部屋に行くと、彼女は最初からアメッドを特別な人だと思っていたと言う。アメッドはルイーズにイスラム教に改宗する気はあるかときく。相手がイスラム教徒なら罪が弱まるからだ。だがルイーズは拒否する。アメッドは気になって帰りがけにもう一度ルイーズがいる納屋に行き、自分のことが好きならなぜ改宗しないのかと迫る。強制されるのは嫌と言うルイーズを突き飛ばしてしまう。
帰りにアメッドは教育官の運転する自動車からとび出す。追いかける教育官をまいてバスに乗って自分の街に帰る。ジハードのためだ。
塀を登って、二階から放課後クラスの行われている建物に入ろうとするが、屋根から落ちてしまう。歩けないアメッドは、凶器にしようと塀から外した金具でコンクリートを叩いて助けを呼ぶ。出てきたイネス先生はアメッドを見て救急車を呼び、アメッドは初めて先生に許しを請うのだった。
以上、映画「その手に触れるまで」のあらすじと結末でした。
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