おもかげの紹介:2019年スペイン,フランス映画。エレナは、元夫と旅行中の6歳の息子から連絡を受ける。「パパが帰ってこない」フランスの海辺からかかってきたその電話が息子の声を聞いた最後だった。10年後、その海辺のレストランで働くエレナの前に現れたのは、息子の面影を宿したフランス人の少年ジャン。しかし2人の関係は、次第に周りを混乱と戸惑いに巻き込んでいく。スペイン国内外で50以上の映画賞を受賞し、アカデミー賞短編実写映画賞にノミネートされた映画『Madre』のその先を描いた作品。
監督:ロドリゴ・ソロゴイェン 出演:マルタ・ニエト(エレナ)、ジュール・ポリエ(ジャン)、アレックス・ブレンデミュール(ヨセバ)、アンヌ・コンシニ(レア)、フレデリック・ピエロ(グレゴリー)ほか
映画「おもかげ」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「おもかげ」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
おもかげの予告編 動画
映画「おもかげ」解説
この解説記事には映画「おもかげ」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
おもかげのネタバレあらすじ:起
スペイン、マドリード。
美しい女性エレナには、離婚した元夫ラモンとの間に6歳の息子イバンがいました。
ラモンがイバンを連れ出し、バスク自治州やフランス・アンダイエあたりを旅行していたある日のこと。エレナの携帯が鳴ります。それはイバンからの連絡でした。イバンの人形を車へ取りに行き、海辺に戻るはずの父親が戻ってこないとのこと。
人もおらず店もない。どこにいるかも分からず泣くイバンに、エレナは必死に話しかけ手がかりを探ろうとします。近くに怪しい男がいると声を震わせ身を隠しましたが、男に見つかってしまった様子でした。
その瞬間、携帯電話のバッテリーがなくなり電話は切れました。
おもかげのネタバレあらすじ:承
それから10年後。
エレナはイバンが消息を絶ったフランスの海辺の町、ヴュー=ブコー=レ=バンでレストランの店長として働いていました。忙しく働き、空いた時間はひたすら浜辺を散歩するという単調な毎日が、“息子を失ったイカれたスペイン人”とささやく人々からエレナを守りました。
そんなある日、エレナは浜辺でイバンの面影を宿した少年ジャンと出会います。一瞬で心を掴まれたエレナは、思わずジャンの後をつけ住んでいる家を突き止めます。ジャンは両親と兄と弟の5人で夏の間だけパリから移り住んでいました。
その翌日、ジャンが店に現れました。エレナの尾行に気付いていたのでした。この時からジャンもエレナを慕い、彼女の元を頻繁に訪れるようになりました。しかしジャンの両親は、そんな2人の関係に困惑の表情を浮かべています。
おもかげのネタバレあらすじ:転
ある日曜日の午後。ジャンはエレナをお気に入りの場所へと案内しました。シダの森を抜けた先に広がるのは誰もいないビーチ。2人は何をするわけでもなく、波打ち際を微笑みながら歩きました。
2人はランチをエレナの自宅でとると、テレビを見ながらいつの間にか眠ってしまいました。するとそこへ、エレナの恋人ヨセバが帰ってきました。やましいことはないものの、ヨセバは2人の関係を良く思っていませんでした。「彼はイバンではない」と断じましたが、エレナの心はジャンを求めていました。
その頃、元夫ラモンからの「会いたい」というメールにエレナは返信を送りました。いまだ未練がある様子のラモンでしたが、会ってみるとイバンを失った悲しみがこみあげてきて、エレナは「近づいたら通報する」と激昂。その場を立ち去ってしまいました。
おもかげの結末
エレナが帰宅すると、置いたままだった携帯電話にジャンからのメッセージがきていました。「両親と話してほしい」と。何件もの着信もあり、ただ事ではないことを察知したエレナはジャンの家へ向かいます。
ジャンの家族はエレナと取り合ってくれないばかりか、彼の兄に力ずくで追い出され、けがまで負ってしまいます。見かねたヨセバは引越しを早め、急いで荷造りをしました。
そして引越し当日。エレナは家族に閉じ込められているジャンにお別れも言えずに去ってしまうことに後ろ髪をひかれる思いでいっぱいでした。
その時です。携帯電話が鳴りました。ジャンからです。
パリに帰る途中で逃げ出し、「どこの森にいるか分からない」とのこと。エレナは10年前の出来事を思い出します。探しに行こうとするエレナに、ヨセバは車の鍵を渡し「帰りは待たない」と告げました。ヨセバも我慢の限界だったのです。エレナは森に向かいました。
ジャンは森の中にいました。車に乗せ、頬をなでるエレナ。どちらからともなく2人はキスを交わしました。何かが吹っ切れた瞬間でもありました。
部屋に戻ったエレナは電話をかけました。「ラモン?」
少し間が空いて「はい」という声が聞こえると、エレナは言いました。「エレナよ」
以上、映画「おもかげ」のあらすじと結末でした。
「おもかげ」感想・レビュー
-
内容は別として、映画「おもかげ」の一番の魅力は、何といってもバカンスの国フランスの海辺にある避暑地がいたるところで紹介されていることです。シーンを見るだけで時間がゆっくり流れている様子を満喫できます。せかせかと時間に縛られて仕事をしたり、都会生活をしている人には癒しになる映画でもあります。
エレナが浜辺を散歩するという単調な毎日を過ごす一場面を見ただけでも、ゆったりと時間が流れており、せかせかと過ごす私たちには癒しの映画にも思えるかもしれません。ところが、内容はそれとは真逆に構成されており、
10年後、エレナが浜辺でイバンの面影を宿した少年ジャンに出会ったときには、サスペンス映画なのか?と思わせるほど多くのミステリアスな出来事に
遭遇する。最後には、元夫ラモンからの「会いたい」というメールをもらったり、エレナがラモンに電話をかけたりして、徐々に関係が修復していく。人間の想いや絆の大切さなど、人間関係の機微を描いた見ごたえのある映画です。