汚れた英雄の紹介:1982年日本映画。かつて角川書店の総帥として腕をふるった二代目社長の角川春樹。映画と小説をタイアップさせた宣伝で一代センセーションを巻き起こしました。時あたかもバブル景気突入の前夜。「読んでから見るか、見てから読むか」。小気味よいキャッチコピーに惹かれて映画館へ足を運んだ人が数多くみられました。映画制作者として時代の寵児となった角川春樹。いよいよ監督業に進出します。主演に草刈正雄。記念すべき監督第1回作品は、脚本の素晴らしさも手伝って、第一級のエンターテインメント作品に仕上がっています。
監督: 角川春樹 出演者:草刈正雄(北野晶夫)、レベッカ・ホールデン(クリスティーン・アダムス)、木の実ナナ(斎藤京子)、浅野温子(緒方あずさ)、勝野洋(大木圭史)、貞永敏(鹿島健)、林ゆたか(雨宮貴司)、奥田瑛二(緒方宗行)、磯崎洋介(緒方和巳)、朝加真由美(御木本菜穂子)ほか
映画「汚れた英雄」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「汚れた英雄」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
汚れた英雄の予告編 動画
映画「汚れた英雄」解説
この解説記事には映画「汚れた英雄」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
汚れた英雄のネタバレあらすじ:起
二輪ライダーのAKIOこと北野晶夫(草刈正雄)。甘いマスクに端正なたたずまいのしぐさが加わって女たちを虜にします。長身の引き締まった体は天性のしなやかさ。肢体の俊敏さは日頃の鍛錬によって磨き上げられています。晶夫と肌を合わせた女は、晶夫のもつ強靭なバネに支えられてエクスタシーに達します。たぐいまれな財を背景に持つ女たちが、晶夫の手練によって、晶夫の女になった喜びを噛みしめます。
宮城県菅生サーキット。世界選手権レースの大ケガから2年ぶりに復帰した晶夫はいま、全日本ロードレース選手権A級500㏄クラスの第8戦に挑んでいます。相棒のマシンは「TZ500」。ゼッケン62と前年度下位に甘んじた番号を負いながら、ライバルは2年連続優勝中の大木圭史(勝野洋)。そして若手有望株の鹿島健(貞永敏)。3者ともに幸先のいいスタートを切りました。
快調な滑り出しを見せたのはゼッケン62。続いてゼッケン1の大木。後続をゼッケン20の鹿島が追います。ロードレースファンが予想したそのままの展開です。しかしゼッケン62。轟音とともにゴールを目指すかに見えたラスト1周直前に、ゼッケン1に抜かれます。マシンの性能の差を見せつけたベテラン大木。みごと優勝トロフィーを手に入れます。
表彰台に立った大木は、みごとな貫禄です。しかし、敗れた晶夫に悔しさは見られません。最終戦を前にマシンの仕上がりをピークにもってきた先輩ライダーを温かく称賛します。いっぽう3位の鹿島にとって、晶夫はライバルであると同時に憧れのライダーです。晶夫とレースで競う雄姿を夢見てきた鹿島は、おなじ表彰台に立てたことを順位以上に喜びます。
汚れた英雄のネタバレあらすじ:承
ライダースーツを脱いだ晶夫は、一方で優れた情夫として女の前に現れます。経済力を誇る女を求める晶夫は、金銭の取引きを目的として女に近づきます。相手は大物デザイナーの斎藤京子(木の実ナナ)。成熟した女の魅力を放つ京子は、アメリカから帰国したその晩に晶夫の出迎えを受けました。晶夫の愛車は「BMW ALPINA」。さっそく京子は、都心一等地にある自宅豪邸で、晶夫のしなやかな体を堪能します。
翌夜。晶夫は、クリスティーン・アダムス(レベッカ・ホールデン)が主催するパーティへ京子と一緒に出席します。アメリカの大企業の経営者であった父親から莫大な遺産を引き継いで来日しているクリスティーン。傘下の日本企業を訪れています。晶夫は、京子を知る以前からクリスティーンとは挨拶を交わす仲でした。いつかは自分になびく女だと、セクシーなパーティドレスに身を包んだ女を食い入るような視線で値踏みします。
日本有数の財閥「御木本グループ」の総帥令嬢、菜穂子(朝加真由美)は、規格外の魅力をもつ晶夫に取りつかれた女のひとりです。日本選手権の第8戦にも晶夫を応援に来ていた菜穂子は、晶夫とじかに接したいと強く望んでいます。斎藤京子というビッグネームを前に、あまたの女たちが身を引くのに対し、怖いもの知らずのお嬢様は父親の執事を使って女の戦いに挑んできます。
メーカーチームにもクラブチームにも属さない晶夫は、自費でレースに臨むプライベーターです。レースの参加費用からメカニックへの支払いまで晶夫自らが管理します。そのため、資金調達は晶夫にとって大事なビジネスです。情事を資金源として利用する以上、体調管理の大切さは言うに及びません。さらに晶夫は女に美しさを求め、征服欲を満たすに足る社会的地位をもつ女であることを求めます。
汚れた英雄のネタバレあらすじ:転
全日本ロードレース選手権の最終戦を前に、晶夫を支えるメカニックは、緒方宗行(奥田瑛二)、あずさ(浅野温子)夫婦と雨宮貴司(林ゆたか)の3人です。両親をすでに亡くした晶夫にとって、彼らは家族同様の、兄弟にも似た間柄です。しかしライダーの孤独に身を置く晶夫にとって、彼等との関係が束の間のつき合いに過ぎないことも晶夫自身よく承知しています。
晶夫の視線の先には世界選手権レースが控えています。世界を制するには世界のレースを知るメカニックの協力が必要です。その人材を得るための資金源を晶夫は、日本滞在中のクリスティーン・アダムスに求めています。世界のビジネスシーンを駆けめぐる女はしたたかでしたが、戦略に長けた晶夫の愛情表現に抗いきれなくなってきます。
一夜だけと決めた情事の相手にクリスティーンは大金を提供します。しかし快楽を極めたあとの女の胸中は複雑です。クリスティーンは、幾度となく晶夫の面影に身を寄せます。斎藤京子もまた、晶夫が去っていった気配を感じとっています。晶夫はさらに財閥令嬢の菜穂子とも関係をもちます。菜穂子がどれほどの大金を投げうったのか、たぶん晶夫が必要とする資金の全額です。
汚れた英雄の結末
「これからもずっと晶夫と仕事がしたい」とメカニックの緒方あずさが口にします。全日本ロードレース選手権の前夜。チームで参加するレースは明日が最終戦となりました。勝敗のいかんにかかわらず、レース終了をもってチームは解散します。あずさの思いを知ってか知らでか、晶夫は世界選手権レースへ思いを馳せます。あずさの本音は、チーム愛よりも晶夫。晶夫の願いは、チーム愛よりも世界選手権制覇。
日本選手権レースの決勝がはじまっています。会場には晶夫の勝利を確かめたい晶夫の女たちが駆けつけています。京子、クリスティーン、そして菜穂子。もちろんあずさも。女たちから得た熱い思いをかたちにして晶夫は走りはじめています。レースは下馬評通り「大木・北野・鹿島の三つ巴」。しかしコーナーで北野が大きく転倒します。
さらにその先、大木に肉薄していた鹿島のマシンが横滑りして炎上します。大木の圧勝かと思われたレースは、しかしその後に一転します。態勢を立て直した北野が猛烈な勢いの追い上げをかけてきます。観衆の目はゼッケン62に集中します。北野はゴールを目前にした大木を追い越します。チェッカーフラッグが振られた瞬間、北野晶夫の総合優勝が決定します。
日本選手権レースを制した晶夫は、ロードレースファン注目のなか、約束通り世界選手権500㏄クラスに参戦します。ヨーロッパ主要都市を巡るレースで着々と成績を上げていった晶夫はしかし、第7戦のベルギーグランプリで不慮の事故に遭遇します。スパークさせた野心をサーキット上で叩き壊された若い戦士。彼は愛する者に見守られることなく道半ばで命を絶ちました。
以上、映画「汚れた英雄」のあらすじと結末でした。
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