ニノチカの紹介:1939年アメリカ映画。映画公開当時、資本主義国家の大国として君臨していたアメリカ。全編にわたって貧乏主義?の共産国ソビエト連邦(=現ロシア)を皮肉ります。アメリカ各都市の映画館はさぞ爆笑につぐ爆笑だったに違いなく、ロシア官僚役のガルボがけたたましく笑いだすシーンも、共産主義の頑なさに対してアンチを突きつけています。そういった意味ではレッド・パージ以前のハリウッドの姿勢を上手にコメディにし、大スター(グレタ・ガルボ)をラストへと運んでいます。
監督:エルンスト・ルビッチ 出演者:グレタ・ガルボ(ニノチカ)、メルヴィン・ダグラス(レオン・ダルグー伯爵)、アイナ・クレア(スワナ大公妃)、シグ・ルーマン(イラノフ)、)、ベラ・ルゴシ(ラジーニン)ほか
映画「ニノチカ」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「ニノチカ」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
ニノチカの予告編 動画
映画「ニノチカ」解説
この解説記事には映画「ニノチカ」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
ニノチカのネタバレあらすじ:起
ロシア革命により王室から民衆の手にわたった宝飾品を売却するため、ソビエト連邦政府から3人の男がパリへ派遣されてきました。
彼らはれっきとした官僚ですが、身なりの点では労働者。風采も上がりません。しかし、古きよき時代のパリ。超一流ホテルでは見た目で人をおとしめることを禁じています。人品のおぼつかない3人ですが、ホテルの支配人は彼らを希望通り、金庫付きの最上級の部屋へ案内しました。
ソビエト国内では食糧危機が間近に迫っていました。共産主義のお題目を堅持するためにも民衆を路頭に迷わせるわけにはいきません。そのためにも金が必要なのでした。少なくとも政府としては金がある振る舞いをしなくてはなりません。パリへ持参した彼らのカバンの中には、かつて大公妃のもとに置かれたきらびやかな宝飾品がザックザックと音を立てているのでした。
3人を部屋へ案内したホテルの給仕は、偶然にも大公妃に仕えていた従僕です。彼らの所持品が、ロシア革命の最中に大公妃から奪った品々であることを知った従僕は、その足で大公妃(アイナ・クレア)のパリの仮寓へ急ぎます。そこには大公妃の愛人のレオン(メルヴィン・ダグラス)もいました。事情を聴いたレオンは一計を案じます。宝飾品が大金に変わるまえに3人を資本主義的な方法で丸めこむ作戦です。
ニノチカのネタバレあらすじ:承
レオンの策略にみごとハマった3人は、らしからぬ快楽に溺れ高級ホテル生活を満喫しています。とん挫中の取引に業を煮やすソビエト政府も黙っていません。共産主義思想の強者でソビエト軍の元軍曹ニノチカ(グレタ・ガルボ)を特命全権大使としてパリへ送り込んできました。
ニノチカは資本主義に染まる街パリを見て軽蔑します。しかし、その街でニノチカは大公妃の愛人レオンに出会います。資本主義思想そのもののレオンをニノチカは軽蔑しますが、レオンのほうはニノチカの美しさを放っておくような野暮ではありませんでした。
ニノチカは、誰に対しても剛のイメージで押し通していますが、美しい女性です。そればかりでなく研究熱心な官僚であることから、西欧の技術力に触れ、母国へ知識を持ち帰ろうと貪欲です。夜の街の案内役を買って出たレオンの助言にも警戒心を見せながら強者らしく素直に従います。
プレーボーイのレオンにとって、甘い会話こそ女を口説く武器。ニノチカもレオンに愛をささやかれ、女心を刺激されますが、ソビエト政府の宝飾品売買に絡んで利益を得ようとしている男だとわかると、うって変わって敵対意識を燃やします。
二度と会いたくない男ですが、レオンの思いは違います。ニノチカにつきまとって離れません。パリの裏町、労働者が好むレストランへレオンが現われます。食事中のニノチカに構わずジョークを飛ばすレオンに、ニノチカは「全然おもしろくない」と澄ましこんでいます。
ニノチカの能面顔が続きます。「いい加減にしろ!」とテーブルに肘をついたレオンがその途端テーブルもろともズッコケます。店内は爆笑です。しくじったレオンにニノチカも大笑いします。レオンも大きく照れ笑いします。
ニノチカのネタバレあらすじ:転
ある日。政府役人3人と弁護士、ニノチカが打ち合わせをしています。席上、彼女が思い出し笑いを洩らします。レオンの人柄に触れ、レオンへの愛おしさでニノチカの胸はいっぱいです。パリ滞在中に是非とも、と意気込んだ電力会社見学、下水道施設見学もいまでは関心外です。ニノチカはレオンの魅力に圧倒されています。
彼女は口紅を用意してレオンの住まいを訪ねます。剛のニノチカはすでになく、可憐なワンピースを身にまとい燃える愛に身をまかせる女性がいます。彼女は一時もレオンから離れず、レオンもニノチカを離しません。ふたりは似合いのカップルとなり、芳醇な香りのシャンパンで出会いを祝福します。しかしニノチカのパリ滞在もあとわずか・・・。
シャンパンとレオンの愛情に酔って高級ホテルの自室へ戻ったニノチカは、特命全権大使としての身分を一時忘れてしまいます。不用意に金庫を開け、大公妃のものだったティアラを身に着けて寝入ってしまいました。大公妃の従僕だった部屋付きの給仕はこの機会を見逃しませんでした。翌朝ニノチカが目覚めると、ティアラもろとも宝飾品一切が金庫から消えていました。
ニノチカの結末
大公妃の登場です。宝飾品もさることながら、大公妃はレオンに執着しています。レオンを奪った憎き女。ニノチカに大公妃が告げます。自分の「落ち度」を認め、もう二度とレオンに遭わずモスクワへ帰りなさい、ならば私の手元に戻った宝飾品を売り、得た金を全額ソビエト政府に譲りましょう。レオンと引き換えにあなたの「落ち度」は帳消しです。
モスクワへ帰ったニノチカのもとへレオンから手紙が届きます。しかし西側からの手紙はどれも検閲に引っかかり、ペンで文面は消されます。ニノチカは愛する人を政府に奪われた不遇を味わいます。しかし彼女は不遇に馴染み、パリの灯を過去に置く一労働者となって、国家に忠実な人の道を踏襲していくのでした。
コンスタンティノープルへの出張を命ぜられたのはそんな折でした。例の3人組が商売に行ったまま帰ってこない、現地調査をして報告書を提出せよ、と求められたのです。
現地へ着くと、なんと3人組はレストランのオーナーになっていました。裏で糸を引いていたのはレオンです。3人組の悪い噂をモスクワへ流し、ふたたび3人の目付としてニノチカが乗りこんでくることを期待した算段です。レオンの企みはみごと的中しました。
ニノチカの前にレオンが現われます。祖国へ帰るつもりのない3人とともに、ニノチカの愛も国境を越えました。
以上、映画「ニノチカ」のあらすじと結末でした。
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