聖なる犯罪者の紹介:2019年ポーランド,フランス映画。少年院で熱心なキリスト教徒となった20歳の少年ダニエル。前科者は聖職者になれないと知りつつ神父になることを夢見ている。仮釈放が決まり少年院から遠く離れた田舎の村で就職することになった。しかし偶然立ち寄った教会で知り合った少女マルタに冗談で「司祭だ」と言ったことでそのまま司祭の代理を任されることとなった。司祭らしかぬダニエルの言動に村人たちは戸惑いつつも少しずつ彼を受け入れていく。しかし1年前に起こった凄惨な事故をめぐって、村人たちはダニエルから大きく心を揺さぶられることとなる。トロント国際映画祭ほか世界中の映画祭で上映され数多くの賞を獲得。
監督:ヤン・コマサ 出演:バルトシュ・ビィエレニア(ダニエル)、エリーザ・リチェムブル(マルタ)、アレエクサンドラ・コニェチュナ(リディア)、トマシュ・ジィェンテク(ピンチェル)、レエシュク・リホタ(バルケビッチ)、ルカース・シムラット(トマシュ)ほか
映画「聖なる犯罪者」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「聖なる犯罪者」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
聖なる犯罪者の予告編 動画
映画「聖なる犯罪者」解説
この解説記事には映画「聖なる犯罪者」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
聖なる犯罪者のネタバレあらすじ:起
20歳のダニエルは第2級殺人罪で少年院に入れられていました。少年院の中では少年同士の暴力やいじめは日常でしたが、特に大男ボーヌスの存在には皆が恐れていました。
少年院では定期的にミサが行われていました。熱心なカトリック教徒であるダニエルは、厳格なトマシュ神父に信頼され、ミサでは聖歌などを任されていました。神父に憧れるダニエルでしたが、犯罪歴のある彼は神学校の入学許可はなく、諦めるしかありませんでした。
そしてダニエルの仮退所の日が来ました。トマシュ神父と酒や薬物を断つと約束し、少年院を後にしたダニエル。向かった先はクラブでした。さっそく酒を煽り、薬物をキメると、少年院から盗んできた司祭服を身にまとい、友人に自慢げに見せるのでした。
聖なる犯罪者のネタバレあらすじ:承
翌日、新生活をはじめるため小さな村へ到着したダニエル。紹介された製材所に向かう途中、ふと小さな教会に立ち寄りました。マルタという少女に正体を尋ねられたダニエルはとっさに「僕は司祭だ」と嘘をついてしまいます。このとんでもない嘘を撤回する間もなく、その村の教会の司祭、ヴォイチェフ神父を紹介されると、ダニエルは自分のことを「トマシュ」と名乗るのでした。
翌日、ダニエルは重いアルコール依存症に悩まされていたヴォイチェフ神父より、リハビリをする数日間の間、司祭の代理をお願いしたいと依頼されました。
教会にはダニエルをトマシュ司祭だと信じて地元の住民たちが次々に告解に訪れました。ダニエルはスマートフォンを片手に必死に司祭のフリをして聖書の言葉を述べたり、少年院で見たことを真似して説教をしてみたり、“自己流”のミサを行いました。
大胆で率直な言動の風変わりなダニエルのやり方は住民の心を掴み、カリスマ的存在となっていきました。それは神父になりたいと夢見たダニエルにとって大きな喜びでした。
聖なる犯罪者のネタバレあらすじ:転
村には6人の若者の写真が飾ってある献花台がありました。1年前に起こった悲惨な車の衝突事故により7人が死亡。若者たちが乗っていた車にはマルタの兄も乗っていました。献花台の写真が1枚足りないのは、衝突した車を運転していたスワヴェクの飲酒運転が原因で事故を起こしたと遺族たちが信じていたためでした。
スワヴェクの遺灰は司祭から埋葬を拒否され、妻エヴァが自宅に持ち帰っていました。しかし、マルタしか知らない真相は、お酒を飲んでいたのは兄を含め若者たちのほうだったのでした。
真相を明らかにしたいダニエルとマルタは、事故をきっかけに住民から忌み嫌われ引きこもっていた、未亡人エヴァの家を訪ねました。エヴァから渡された段ボールには、死んだ夫への怒りや憎しみが込められた遺族からの手紙がたくさん入っていました。さらにエヴァは、夫のスワヴェクは4年間断酒をしており検死でも陰性だったという衝撃の事実を明かしました。
そんなある日、ダニエルを脅かす人物が告解に訪れました。同じ少年院に入っていたピンチェルでした。ダニエルが働く予定だった製材所にいるピンチェルは、司祭をしているダニエルを知り脅しに来たのでした。「少年院に戻ったらボーヌスに殺されるぞ」と口封じに大金を要求してきました。
その翌日。ダニエルはミサで「私は人殺しです」と皆の前で告白しました。それを聞いた住民たちは動揺しましたが、ダニエルの説教に感動もしていました。しかし、聖体祭の晩、ダニエルは皆に衝撃を与えます。ミサで集めたお金を「まだ埋葬されていないスワヴェクの葬儀に使う」というのです。遺族たちは「善良な住民に対してひどい!」と大反対し、ダニエルを強く非難しました。すると、マルタがエヴァから受け取った罵詈雑言が書かれた手紙を遺族たちに配りました。まるで、「これが善良な住民なの?」と言わんばかりに。
その晩、マルタはダニエルの家で一夜を共にしました。
聖なる犯罪者の結末
村の有力者を交え、マルタの母とエヴァとで話し合い、ついにスワヴェクの葬儀が行われることになりました。遺族や住民たちが複雑な表情で見つめる中、ダニエルは葬列を率いました。
そんなダニエルを複雑な表情で見つめる人物がもう一人いました。本物のトマシュ神父です。トマシュ神父は悲しみと怒りを露わにし、ダニエルにすぐ荷造りをするよう促しましたが、目を離した隙に抜け出したダニエルは、葬儀ミサの準備のため教会の聖具室に向かいました。トマシュ神父はなんとか阻止しようと、ダニエルをなだめ、代わりに自分がミサを行うことにしました。
しかしミサがはじまろうとしたその時、トマシュ神父を紹介するはずだったダニエルは参列者の前で上半身裸になり、タトゥーの入った身体をさらし堂々と教会を去ったのでした。誰もダニエルを責める者はいませんでした。正体を隠してはいましたが、皆が彼に心を動かされていたのでした。
少年院に返されたダニエルを待っていたのはボーヌスでした。過去にダニエルに弟を殺されたボーヌスは、敵意をむき出しにしてボコボコに殴り続けました。しかしダニエルは一瞬の隙をつきボーヌスに馬乗りになると、ボーヌスの顔面の骨が砕けるほど頭突きを食らわせました。
誰かが火を放ち、少年院は炎に包まれます。ダニエルは狂気的な目つきで少年院から逃げ出しました。
一方、ダニエルが去った村の教会では、ヴォイチェフ神父が治療から復活し再びミサを行っていました。そこには、住民に受け入れられたエヴァの姿もありました。
以上、映画「聖なる犯罪者」のあらすじと結末でした。
「聖なる犯罪者」感想・レビュー
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話の筋としては、実際にはなかなかあり得ないと思われますが、素直に受け取るならば、この映画には考えさせられることが多々ありました。私見では、この主人公の神学校入学を法王庁は許可すべきです。過去にどんな罪を犯そうとも心底から悔い改め洗礼を受けるなら、再び新しい命を与えられ、本人が望むなら聖職への道を開くべきです。キリストも聖書の中でそう語っています。彼が神父に相応しいことは、村での(偽)司祭としての日々が証明しています。
刑務所を出獄したばかりの男が、ふとしたことから教会の牧師になるという物語です。ご都合主義的なストーリーではありますが、それほど違和感はなく、かれが聖職者として人々を導く姿は小気味よいスパイスがありました。