カルネの紹介:1994年フランス映画。父と娘の異様な関係を独特のタッチで描くカルト映画。パリ郊外で馬肉店を営む男は、一人娘シンシアを溺愛していた。彼女は一度も口をきいたことがなく、自分の殻に閉じこもっていて、テレビと木馬にのみ興味を寄せている。そんなある日、シンシアは初潮を迎えた。血でスカートを汚した娘を見た肉屋は、誰かに強姦されたのだと勘違いする。そして無関係の男に肉切り包丁で襲い掛かり、刑務所送りになるのだった。
監督:ギャスパー・ノエ 出演者:フィリップ・ナオン(肉屋)、ブランディーヌ・ルノワール(シンシア)、フランキー・バン(カフェの主人)、マリエ・ベルト(シンシアの母親)、エレーヌ・テステュー(家政婦)ほか
映画「カルネ」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「カルネ」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
カルネの予告編 動画
映画「カルネ」解説
この解説記事には映画「カルネ」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
カルネのネタバレあらすじ:起・歪んだ父と娘の関係
これはパリ郊外で馬肉を売る男の物語。フランスは世界で最も馬肉を好む国です。赤身肉の中で最も健康的と言われる馬肉ですが、その色と安さを軽蔑して人は「カルネ」と呼んでいます。
――1965年3月23日の夕方、馬肉店を営む男は女を抱いていました。彼女は処女だったので出血しました。女は妊娠し、12月25日に女児を出産します。しかし元々子どもを産みたくなかった女は子育てを嫌がり、数ヵ月後に赤ん坊を残して姿を消します。シンシアと名付けた娘を、肉屋は溺愛して育てました。
月日は流れ、1979年。シンシアは不思議なほど無口に育ちました。全く口をきかず、いつもぼうっとしていて、関心があるのはテレビと木馬くらいのものです。しかし体つきはすっかり娘らしいものになりました。肉屋はシンシアの丸みを帯びた体を洗ってやりながら、そんなことを考えます。
肉屋は貧乏でしたが、シンシアを1人には出来ないため、店に出ている間は家政婦を雇っていました。
カルネのネタバレあらすじ:承・初潮
肉屋は毎日豊満な体つきの女主人が営むカフェ「カフェ・ド・パリ」でコーヒーを飲みます。心の中では、今に女主人と寝てやろうと思っていました。肉屋はシンシアに栄養をつけさせるため、毎日馬肉を食べさせています。
ある夜、シンシアを着替えさせた肉屋は、そのプロポーションに満足そうに頷きます。寝転がったシンシアを見つめる肉屋は、最近彼女の脚の形が変わってきたと感じていました。短いスカートから伸びる脚は程良く肉付き、魅惑的です。肉屋は、シンシアも今に大人の女になるのだと思いました。そして彼女に対し、「俺の血が流れてる 本当に俺の?」と考えます。
1月17日夕方。シンシアは初潮を迎え、腹痛に顔を歪めながら外に出て行きました。そして偶然出会った青年に連れられて空き地へ行き、強引にキスをされます。それを見ていた隣人がシンシアを店に送り届けました。男と空き地にいたと説明された肉屋がシンシアを見ると、スカートに血がついています。それは初潮の血でしたが、肉屋はシンシアが強姦されたのだと勘違いしました。
激高した彼は肉切り包丁を掴んで空き地へ向かいます。彼はたまたまそこにいた男の口に肉切り包丁を突っ込み、馬乗りになって殴り続けました。騒ぎに気付いた人達が、人違いだと慌てて肉屋を止めに入ります。
カルネのネタバレあらすじ:転・離れ離れの日々
肉屋は逮捕され、シンシアは施設に送られることになりました。被害者は障害を抱えることになったらしく、肉屋は賠償金を請求されます。刑務所に長くいたくない肉屋は、店とアパートを手放すことにします。肉屋はシンシアに焦がれ、欠かさず手紙を書いていました。肉屋は刑務所で知り合ったジェラールというゲイと肉体関係を持ちます。
7月23日、肉屋は釈放されました。肉屋はジェラールのことを思い出し、過去は全て消してしまおうと考えます。刑務所を出た肉屋には何も残されていませんでした。肉屋はカフェ・ド・パリで雇って貰い、女主人の使用人として働くことになります。しかし娘への手紙には、店を再開したので金が貯まったら迎えに行くと綴りました。
使用人になった肉屋を冷笑する人間は少なくありませんでした。肉屋は怒りを覚えますが、かつてのように暴力で訴えることはしません。刑務所暮らしは彼の中の何かを変えたようです。どうにかして金を作り、シンシアを引き取ろうと考える肉屋。しかし具体的な行動は起こしません。
そんなある夜、女主人に誘われ2人は男女の仲になります。肉屋の心に愛はありませんでした。彼は「シンシアを思い出せ」と唱えながら女主人を抱きます。
カルネの結末:望まぬ未来
肉屋は女主人が望むまま彼女を抱き続けました。そして思いがけず妊娠を告げられます。女主人は田舎に移り、2人でやり直そうと言い出しました。彼女はシンシアを引き取るつもりなど毛頭無く、肉屋に自分で話をして来いと言い捨てます。肉屋は施設に行って面会を希望しましたが、禁止されていると断られてしまいました。
何とか認められた面会で、久しぶりにシンシアを見た肉屋は感極まって強く抱きしめます。激しくキスをする肉屋を施設の人間が引き剥がしました。シンシアは相変わらず何も言いません。肉屋は一度だけでもシンシアに「パパ」と呼ばれたいと思いました。
「あの娘の血は俺の血 肉は俺の肉だ」と考える肉屋。彼は、人生には勝ち残った者にだけ意義があるのだと考えます。肉屋は本当に女主人に捕まったままの人生で良いのかと問いかけました。彼は女主人と生きる気などありませんでした。そして生まれて来る子を、生きる苦難から救ってやろうと考えます。肉屋は後ろから女主人に取り付き、流産させようと乱暴に彼女を抱きました。
パリに雨が降り注ぎます。肉屋は車を運転していました。隣には女主人の姿があります。2人がパリを去っていく中、歪んだ関係は続編「カノン(1998年)」へ継承されます。
以上、映画「カルネ」のあらすじと結末でした。
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