空海の紹介:1984年日本映画。真言宗の宗祖、弘法大師空海の生涯が、超人的なエピソードを絡め、人間味豊かに紹介されています。奈良の大学に通っていた青年空海は、政治に、宗教に、多くの「なぜ」を抱えていました。在来の学問に飽き足らない空海は、下界を離れて深山幽谷に身を置きます。青年らしくエネルギッシュな修行を経たのち、彼はさらに未知の教え「密教」をもとめて唐の都長安へ旅立ちます。
監督:佐藤純彌 出演者:北大路欣也(空海)、加藤剛(最澄)、小川真由美(藤原薬子)、西郷輝彦(嵯峨天皇)、中村嘉葎雄(平城天皇)、石橋蓮司(橘逸勢)、西村晃(佐伯田公)、丹波哲郎(桓武天皇)、森繁久彌(阿刀大足)ほか
映画「空海」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「空海」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
空海の予告編 動画
映画「空海」解説
この解説記事には映画「空海」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
空海のネタバレあらすじ:起
俗名眞魚(マオ)こと少年空海は、讃岐国から奈良へ上京し、当時最先端の学問を学んでいました。そんな折、北へ向かう大きな行列に遭遇します。行列の主は帝(ミカド)です。帝は自ら行列にハッパをかけます。「皆の者、新しい都へ!」。帝の乗る牛車のあとを、平城京を離れた役人たちの列が続いて行きました。
眞魚には、都に住む帝がなぜ奈良へ移るのか理解できません。茫然と行列を見送る眞魚に、学者の叔父、阿刀大足(アトノオオタリ)が答えます「大きくなり過ぎたのだよ」。~仏教が普及するにつれ、僧侶が政治に介入してきた。その結果、面倒なことが多く起きている。帝は、僧侶たちから距離を置き、政治を一新する覚悟を決めたのです。
それから6年後、眞魚は世間から突如姿をくらませます。西暦802年。大噴火を起こした富士山のふもとに、眞魚はまた突然あらわれます。救済。深山幽谷の場で修行中だった眞魚は、噴火に逃げ惑う人びとの声を聞きつけ、この地へやって来ます。これをきっかけに、眞魚はライフワーク、「人を救う仕事」に向かって歩みはじめます。
空海のネタバレあらすじ:承
804年。空海と名を改めた眞魚は、遣唐使の一員として長安へ向かいます。空海の目的は、密教を大和国に持ち帰ることでした。4艘仕立ての遣唐船は、沖へ出るとすぐに嵐に遭います。猛烈な時化の中、2艘が行方不明、空海の乗る船と、もう1艘が1か月後、航路をはずれて唐へ漂着します。そこから陸路50日かけて長安へたどり着きました。
長安・西明寺。空海はここで、唐国を行き来する様々な文化・思想に出会います。そのつかの間の憩いをシルクルードに遊んだ空海は、西から東へ吹いてくる風の、その風を運ぶ人たちの息づかい、多種多様な民族性、たくましさに接して気圧されます。
長安・醴泉寺。密教を短時日で学ぶ道をめざす空海は、密教の原語「梵語」の習得に取り組みます。少なくとも3年はかかるといわれた言語習得を、空海はわずか3か月で修めます。空海が先を急いだのは、密教の本山、青龍寺の老師、恵果阿舎利(ケイカアジャリ)に帰依したいと願っていたからです。
空海のネタバレあらすじ:転
恵果阿闍梨は、自らを老人と称して、空海の遅すぎた訪問を喜びます。これには意味があります。「わたしには、もう先がない、空海よ、よく来た、おまえに密教のすべてを授ける、それを東の国へ持ち帰りなさい」。老師の言葉に空海は深々と頭を下げました。
真義をつかむのに20年はかかるといわれる教えを、3か月で会得した空海は、恵果阿闍梨亡き(入滅)後、大和国へ帰ります。帰朝した空海を待っていたのは、以前にも増して顕著になった政治の混乱です。遷都を断行した桓武天皇は崩御し、後継の平城天皇を籠絡する藤原薬子(フジワラノクスコ)が、裏から天皇家を操ろうと画策しているのでした。
これに端を発した天皇家の争いは、横道にそれた兄の平城天皇に弟の嵯峨天皇が勝利して幕を引きます。薬子は自害しますが、争いの収束の裏には、嵯峨天皇を擁護する空海の、大日如来に帰依した命がけの祈祷(きとう)があったと言われています。
さらに空海は、より実践的な布教を求めて京を離れます。空海が向かった先は、日々の生活に不安や恐怖を抱えて生きる農村や漁師の人たちが住む地域です。
空海の結末
いつの世でも、突如湧いたように疫病が流行し、人びとを不安の底に陥れます。また、地震、津波、嵐といった災害も、人びとの心に恐怖心を植えつけます。空海は、これらはみな、人びとの心の闇から発していると訴えます。何ごとにも悲観せず、自ら救いを求め、幸せを願うこと。弱さを打ち消して、強くたくましく生きる必要性を説いています。
空海はその後、高野山中に自らの教えを説く道場を建立します。嵯峨天皇は、資金援助を申し出ますが、空海はこれを空海なりの理由で断ります。瓦1枚、板1枚を信者のお布施で建立してこそ、官の束縛のない真の信仰の場を打ち立てることができるのだと主張します。
時は流れ・・。空海ゆかりの四国八十八か所にはいまも多くのお遍路さんが訪れます。この世で、空海の導きを得ようと、訪ねてくる人たちは、歩を重ねるごとに重さを増す空海の声に耳を澄まします。「幸せになれ。強くなれ」。時にきびしく、やさしく接してくれる祖師の声に励まされ、人々は心の平安に導かれていくのです。
(完)
以上、映画「空海」のあらすじと結末でした。
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