いちばんきれいな水の紹介:2006年日本映画。古屋兎丸の同名漫画を映画化。11年ぶりに目を覚ました姉と、12歳の妹の交流を描くドラマ作品。小学校6年生の夏美には19歳になる姉・愛がいる。しかし愛は難しい病気のため8歳から11年もの間眠り続けていた。ある夏の日、両親の不在中に愛が突然目を覚ました。肉体的には19歳だが心は8歳のままの愛は自由奔放に行動し、夏美を大いに振り回す。そして愛は塾で忙しい夏美の手を引き「いちばんきれいな水」のある場所へ連れて行くのだった。人気若手女優、加藤ローサの映画初主演作品。
監督:ウスイヒロシ 出演者:加藤ローサ(谷村愛)、菅野莉央(谷村夏美)、カヒミ・カリィ(真理子)、南果歩(谷村陽子)、田中哲司(谷村薫)ほか
映画「いちばんきれいな水」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「いちばんきれいな水」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「いちばんきれいな水」解説
この解説記事には映画「いちばんきれいな水」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
いちばんきれいな水のネタバレあらすじ:起・突然の目覚め
小学校6年生の谷村夏美は、両親の薫と陽子、そして19歳の姉愛と4人で暮らしています。愛は難しい病気を患っており、8歳から現在までの11年間ずっと眠り続けていました。夏美は成績優秀で、夏休み初日から塾での勉強に熱を入れています。夏美の住む町は開発が進み、工場が減って新しいマンションが次々と建設されていました。
そんなある日の朝、谷村家に突然外務省から電話がかかってきました。陽子の妹で写真家の真理子が、南米でバスの事故に遭ったらしいのです。両親は真理子の安否を確かめるため、すぐに日本を発つ準備を始めました。しかし夏美にはパスポートがありません。加えて愛の世話も必要なことから、夏美は留守番を買って出ました。両親は夏美のことを何度も心配しながら出発します。
その夜。愛のベッドに向かった夏美は、思わぬ光景を目にしました。愛が目を覚まし、ベッドの横に立っていたのです。夏美は自己紹介し、愛が11年間眠っていたことを説明しました。夏美が目を離した隙に愛は外に出てしまい、ショーウインドウに映った19歳の自分を見て驚きます。夏美は愛を慌てて追いかけ、疲れたと言う彼女をおんぶして帰宅しました。
いちばんきれいな水のネタバレあらすじ:承・精神年齢8歳の姉
翌日、夏美は下手なピアノの音で目を覚まします。ずっと起きていたらしい愛が鍵盤を叩いていました。11年眠り続けた愛は、見た目こそ19歳ですが精神的には8歳のままです。その子どもっぽさと自由奔放さで夏美を大いに困惑させました。
夏美が塾に行っている間、愛は家の中を見て回ります。そして帰宅した夏美と服を選んだり、化粧をしたり、一緒に風呂に入ったりと好き放題しました。夏美は疲れ果てますが、天真爛漫な愛を憎みきれず、何よりずっと話してみたかった姉との会話を楽しみます。愛は夏美が想像していたような、年相応の姉ではありませんでしたが、姉妹として確かな親愛を感じていました。
翌日、寝坊した夏美は焦って跳ね起きます。今日は塾のクラス分けを決める大事なテストがある日でした。愛の相手もそこそこに家を飛び出した夏美は、落ち着いてテストを受けようとします。ところが、塾に愛がついて来てしまいました。事情を知った塾の先生は夏美に早退を勧めますが、夏美は大事なテストを放棄したくありません。苛立った夏美は愛に「あなたなんか知らない」と言い放ち追い返してしまいました。
しかしショックを受けた様子の愛を忘れられず、夏美の心は落ち着きません。テスト終了と同時に塾を飛び出した夏美を呼び止めたのは、服を泥だらけにした愛でした。彼女は変わらぬ笑顔で指輪の箱を持っています。愛が昔公園の木の下に埋めたもので、本人は本物のダイヤの指輪だと信じていました。呆れた夏美はすぐ家に帰ろうとしますが、愛が引き止めます。
そしてこの夏は1回きりなのだから、楽しいことをしようと提案しました。
いちばんきれいな水のネタバレあらすじ:転・秘密の場所
姉妹は連れ立ってお祭りに出かけました。愛が夏美の手を引き、大道芸を見たり、外国人労働者のパーティーに紛れ込んだりします。夏美が怯むような場所でも愛はどんどん進んで行きました。散々夏美を引っ張り回した愛は、夜になり廃工場に忍び込みます。
地下へ降りて行くと、そこには素晴らしい光景が広がっていました。光が差し込み、湧水の水面を美しく照らしています。愛はこの水を「いちばんきれいな水」と呼んでいました。夏美もこの場所に覚えがあります。すると愛は突然水に飛び込み、夏美を誘いました。夏美も意を決して飛び込み、姉妹は水遊びを楽しみます。
夏美は愛のことを凄いと思いました。彼女は色々なところに飛び込む勇気を持っています。逆に夏美は家と学校、塾以外の場所をほとんど知りませんでした。知らない場所へ行ったり、知らないことをするのが恐ろしいのです。
それを聞いた愛は指輪を夏美にプレゼントしました。これは勇気が出る指輪なので、もう夏美はどこへでも行けるし、何だって出来るのだと笑います。
いちばんきれいな水の結末:それぞれの命
翌日、夏美は愛と同じベッドで目を覚ましました。愛は眠っていた11年間を取り戻すかのようにずっと起きていたのですが、今は眠っています。夏美は優しく愛に話しかけました。しかし反応がありません。夏美が何度呼びかけても、愛が目を覚ますことはありませんでした。彼女は再び深い眠りに落ちてしまったのです。
夏美は塾を休み、愛が散らかした部屋を片付け始めました。そして愛のノートを見つけます。何枚か絵が続いた後、平仮名ばかりの文章が綴られていました。それは8歳の愛が書き残したものです。
当時の彼女は自分を蝕む病に強い恐怖を感じていました。大事なお姫様の命を捧げ船乗りの命を救った絵本を思い出した愛は、まだ赤ん坊の夏美を抱いて工場へ向かいます。愛は自分が助かるために、大事な妹の命を捧げようとしていました。しかしいちばんきれいな水の前にやって来た愛は、自分の考えが恐ろしくなります。そこに現れたのは真理子でした。
愛は真理子に、死ぬのが怖いこと、誰かに身代わりになって欲しいことを泣きながら伝えます。すると真理子は、愛が頑張ることは愛にしか出来ないのだと話しました。愛は愛の命を、夏美は夏美の命を頑張っていくしかないのだと。
真理子は勇気が出る指輪だと言って、愛にダイヤの指輪を贈りました。愛は夏美を身代わりにしようとしたことを反省し、いつか夏美が大きくなった時はきちんと謝りたいと日記に残します。更に先のページには、ここ数日に起こった夏美との思い出が描かれていました。夏美は涙を流しながら愛の気持ちを受け止めます。
少しして、両親が南米から帰国しました。真理子は幸い怪我もなかったそうです。夏美は勇気を出し、少しずつ知らない場所、知らないことに挑戦していました。自由で開放的な雰囲気を持った彼女は、どこか愛に似ています。
夏美は穏やかに眠り続ける愛を覗き込みました。そして、今度は楽しい場所や楽しいことを、自分が愛に教えてあげると約束します。夏美が微笑み、この映画は終わりを迎えます。
以上、映画「いちばんきれいな水」のあらすじと結末でした。
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