雁の紹介:1966年日本映画。明治時代、東京の下町。老いた父親の身を思って高利貸しの妾になったお玉。だが偶然出会った一人の医学生に心をときめかせてしまう。森鴎外原作の白黒・スコープ作品。監督は『ひとり狼』等の市川雷蔵主演作などで名高い池広一夫。脚本は成沢昌茂だが、同じく成沢昌茂脚本による、豊田四郎監督・高峰秀子主演の『雁(1953年)』も映画化されている。
監督:池広一夫 出演者:若尾文子(お玉)、山本学(岡田)、姿美千子(お梅)、小沢栄太郎(未造)、山岡久乃(お常)、伊井友三郎(善吉)、井川比佐志(木村)、ほか
映画「雁(1966年)」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「雁(1966年)」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「雁(1966年)」解説
この解説記事には映画「雁(1966年)」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
雁のネタバレあらすじ:起・お見合い
口入屋[人材斡旋業]のおばさんがお玉に妾の話をもってきた。呉服店をもち、妻に死なれた男だ。いずれ本妻になれると言う。一度妻子ある男に騙されて傷物になった身だし、老体に鞭打って飴売りをする貧乏な父親への孝行になるならと、見合いを承知する。
だが、相手の男末造は実は強欲な高利貸しで、妻と幼い子供たちがいた。商売熱心な末造は見合いの会場の料亭に、彼の客である学生が同窓会ということで多数来ているのを見て、借金の請求をする。
その様子に気分を害した医学生、岡田は座敷から庭に出る。その岡田の姿を、父善吉と共に別の座敷で未造の到着を待っていたお玉が認める。
雁のネタバレあらすじ:承・高利貸しの妾
お玉は無緑坂に住むようになる。旦那様の未造が来ると、未造は女中のお梅に湯代を渡して銭湯に行かせる。父善吉にも近くに家と食いしん坊の女中があてがわれた。末造はお玉には優しくしてくれて、お玉は幸せだと思った。
だが長くは続かなかった。まず、お梅が近所の魚屋で「高利貸しの妾に売る魚はない」と言われて切り身を売ってもらえず、旦那の職業をお玉は知ることになる。そして未造がつい本妻の存在をほのめかしてしまうのだった。
やがてお玉は家の前で自分の日傘と同じ柄の日傘をさした女を見る。妾の存在に気づいた未造の本妻お常だった。
ある日、お玉は未造に彼のついた嘘について嫌味を言うが、未造は、昔は大学のこづかいをしていて学生の使い走りをして貯めた金で今の地位を築いたこと、お玉のおかげで初めて人間らしい幸せを得られたことを話す。
雁のネタバレあらすじ:転・医学生岡田
ある日、お玉の家の鳥かごを見ている学生がいた。お玉が見ているのに気づくと学帽をぬいでペコリと頭を下げて去って行った。それは見合いの日に見かけた学生、岡田だった。別の日、鳥かごに大きなヘビが這い、鳥を狙っていた。誰か男の人を頼んでとお玉に言われたお梅は岡田を連れてくる。
ヘビを捕まえた岡田にお梅が、いつも午後に散歩するでしょ、あなた岡田さんねとペラペラしゃべるので、お玉は学生の名を知ることになる。岡田はお玉の家の隣の仕立ての師匠の生徒たちのあこがれの的だったのである。岡田が立ち去った後、直ちに強い雨が降り出し、お玉は傘をもって岡田を追い、不忍池の前で傘を貸す。
だが、その後もお玉は岡田の跡をこっそりとつける。雨が上がるころ、岡田が入ったのは未造の店だった。岡田は未造をおだてて金を借りようとしていた。希望の額を借りられなかった岡田は隣の古本屋に入って洋書を売る。お玉は岡田のためにその洋書を買った。
雁の結末:馬車が通り過ぎる
お玉が寝坊をした朝、岡田が傘を返しに来る。お梅に岡田を待たせるように言って、お玉は化粧を直すが、そのうちに未造が現れ、岡田はびっくりして帰ってしまう。未造は千葉に行くと言いに来たのだったが、岡田の洋書があるのに気づき、それをもっていってしまう。
しかしその晩、未造が来ないと分かったお玉は、お梅に一晩暇を出して実家に帰し、部屋を掃除して夕飯の準備をする。岡田にヘビを退治してくれた礼のご馳走をするなら今晩だからだ。岡田がいつも散歩に通る4時を待つが、岡田はなかなか来ない。やっと岡田が来たときは、文科の学生、木村といっしょなので誘いそびれてしまった。
がっかりしたお玉の前に今日は来ないはずの未造が、岡田の洋書をもって現れる。岡田は試験に通って外国の教授の助手としてヨーロッパに渡ることが決まり、今日は未造に金を返しに来たと言う。それを聞いて、お玉は洋書をもって家を飛び出す。岡田には会えず木村に洋書を託す。
岡田は今晩教授と食事をするが、その後学生たちが、お玉と未造が見合いをした店で送別会をすることを知る。祝いの鯛を届けるように魚屋に言ってから帰宅したお玉に、未造は怒る。魚屋のもってきた鯛を、こんなものを買うために金をやっているのではないとひっくり返す。
学生を想ったところで無駄だとお玉に言い聞かせようとするが、お玉は岡田に会いたい一心で外へ出る。だが不忍池の前で、お玉の前を一台の馬車が通り過ぎた。お玉はそこに外国人と談笑している岡田が乗っているのを見た。
お玉がいたことに岡田は全く気づかない。その時、一羽の雁が不忍池から飛び立つのだった。
以上、映画「雁」のあらすじと結末でした。
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