モンパルナスの灯の紹介:1958年フランス映画。生前に評価されることなく若くして逝去した画家モディリアーニが、愛する人と出会いながらも絶望のどん底で死に至るまでの半生を描いた、伝記的映画。
監督:ジャック・ベッケル 出演:ジェラール・フィリップ(モディリアーニ)、リノ・ヴァンチュラ(モレル)、アヌーク・エーメ(ジャンヌ・エビュテルヌ)、レア・パドヴァニ、ジェラール・セティ、マリアンヌ・オズワルド、リラ・ケドロヴァ、リリー・パルマー(ベアトリス)、ほか
映画「モンパルナスの灯」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「モンパルナスの灯」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
モンパルナスの灯の予告編 動画
映画「モンパルナスの灯」解説
この解説記事には映画「モンパルナスの灯」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
モンパルナスの灯のネタバレあらすじ:起・貧しい画家
1917年のパリ、モンパルナス。売れない画家モディリアーニ<モディ>(ジェラール・フィリップ)は、カフェで似顔絵描きをして小金を稼ごうとするが、彼の画風は人々に受け入れられなかった。
持病をかかえ貧困の中で酒に溺れる彼は、愛人ベアトリス(リリー・パルマー)の庇護と、唯一彼の才能を認める友人で画商のズボロウスキーの助けで、なんとか暮していた。
そんな彼はある日、久しぶりに訪れた画塾でひとりの女性ジャンヌ(アヌーク・エーメ)と出会う。彼女の美しさと裕福な家庭で育った純真さに一目で惹かれたモディと、以前から彼に想いを寄せていたジャンヌは、出会ってすぐ恋に落ち、結婚を誓い合う。
モンパルナスの灯のネタバレあらすじ:承・愛する人との生活
ジャンヌと出会ったことで酒を断ち、制作への意欲を取り戻したモディ。しかし、彼との暮らしを決意し家出を試みたジャンヌが、厳格な父親によって監禁され、愛する人と引き離されたモディは再び酒に溺れ、門前払いされたジャンヌの家の前で倒れてしまう。
酒と持病で健康状態が悪化していたモディは、医者からのすすめによって南仏ニースで静養していた。この地で娼婦をモデルに制作を続けていた彼のもとに、待ちわびた恋人ジャンヌがやってくる。
再会した2人はニースで幸せなひと時を過ごし、モディは彼女をモデルに精力的に絵を描き始める。
モンパルナスの灯のネタバレあらすじ:転・度重なる挫折
やがて2人はパリに戻り、モディはズボロウスキーや彼に理解を示す画廊のオーナーの協力で初の個展を開くことになる。しかし、初日は友人知人が多く集まったものの、2日目になると誰一人として画廊を訪れる者はなかった。
そこへ業界で忌み嫌われている画商モレル(リノ・ヴァンチュラ)が現れ、モディの才能を認めているが、その作品は彼が生きている間には価値が出ない、彼は健康を害していて長くないだろうから、その時を待って買い上げると言い放ち、ズボロウスキーを激怒させる。
個展が失敗に終わり、再び制作への意欲を失い酒に溺れるモディと、生活のため絵葉書の絵付けの内職をするジャンヌ。そんな2人のもとにズボロウスキーが、彼の絵を気に入ったというアメリカの富豪に絵を売る話を持ち込んでくる。
絵を数点持ってパリのホテルに滞在中だといういその富豪の元を訪れた3人だったが、モディはセザンヌを絶賛する成金の富豪に難色を示し、買った絵を商用すると聞いた彼は、その話を蹴ってしまう。
モンパルナスの灯の結末:死神の影
落胆するズボロウスキーとジャンヌとともに、無言のまま絵を持ち帰ったモディ。彼は部屋に散らばるデッサン画を手にすると、稼いでくると言い残して街に出る。
デッサン画を1枚5フランで売り歩くが、彼の絵に金を払う人は誰もいない。当てもなく夜の街をフラフラと歩き続け、力尽きて倒れた彼の傍らには、狙いをつけたように彼の後をつけていたモレルがたたずんでいた。
病院に運ばれ、今わの際の苦しみにあえぐモディを前に、モレルは医者にも警察にも彼の素性を知らせなかった。ほどなくモディの命の灯が消えると、その足でモレルは彼の部屋を訪れる。
そして、ジャンヌに彼の死を告げることなく全ての作品を買い上げる。何も知らずに愛する人の帰りを待つジャンヌは、やっと苦労が報われたことに喜ぶモディのことを思い、涙するのだった。
以上、映画「モンパルナスの灯」のあらすじと結末でした。
「モンパルナスの灯」感想・レビュー
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画家モジリアーニの伝記映画で、モジリアーニをジェラール・フィリィップが演じた。
妻の役を「男と女」のアヌーク・エーメが演じたが、この頃のアヌーク・エーメは若くて本当に美しい。1910年代のモンパルナスが主な舞台で、モジリアーニはすっかり自信を失い、酒におぼれる日々を送っていた。同じアパートに住む画商のスボロウスキーだけが、彼の才能を認めていた。
ある日、モジリアーニは自分が通う絵画の学校で、ジャンヌ(アヌーク・エーメ)を見かけ、好きになってしまう。ジャンヌも美貌のモジリアーニを好きになるが、厳格なジャンヌの父親は、2人の結婚を認めなかった。
再び酒におぼれ、極度に健康を害したモジリアーニを、スボロウスキーは南仏のニースで休養させる。ところがそこへ父親から逃れたジャンヌがやって来て、2人は結ばれる。
2人で海辺を歩き、愛を語るシーンは美しい。
しかしパリに戻って開いた個展は失敗し、彼の絵に興味を示しているというアメリカの多忙な画商を訪ねると、モジリアーニの絵を、商業ポスターに使うか、あるいは香水のラベルにしてもいいと話し、モジリアーニは深い落胆を味わう。
(そうじゃない。私の絵は芸術なんだ、と。※作者注)妻との生活の糧を得るため、夜ごと町の酒場をさまようモジリアーニ。「画家のモジリアーニです。1枚〇〇フランです」と、自分のデッサンを売り歩くのだ。
そして倒れ、モジリアーニは死んだ。
実は死の商人とでも言うべき画商(リノ・バンチュラ)がいて、彼はモジリアーニは死後、初めて認められるであろう事を見抜いていた。その画商がジャンヌのもとを訪れる。彼女はまだモジリアーニの死を知らない。
画商は部屋に置いてあるモジリアーニの絵を次から次へと物色し、買い占める。
何も知らないジャンヌは「主人も喜びます」と、涙ながらに死の商人に感謝するのであった。全編を通じてやや暗いが、古き良きパリの市井ムードは捨てがたい。
映画には描かれていないが、ジャンヌは余程モジリアーニを愛していたのだろう。こののち、モジリアーニの後を追って自殺したと聞く。
1人の芸術家の生き様を描いて、静かな感動を呼ぶ、愛すべき1編である。
可哀そう、悲しすぎる。ジャンヌのその後の生涯が気がかり。物語で良かった。