エルヴィスの紹介:2022年アメリカ映画。ルイジアナの小さなライブに出演し、当時誰も聴いたことのなかった“ロック”とセンセーショナルなダンスを披露する若き日のエルヴィス。若者たちは魅了され、熱狂で全米が揺らいだ。「次歌ったら、動いたら逮捕する」-エルヴィスは社会を乱したとして、多くの逆境に遭うこととなる。破天荒な日々の裏側にあった危険な真実を知るのは、強欲なマネージャーであるトム・パーカー大佐だった。人気絶頂の彼を殺したのは何だったのか?世界史上最も売れたソロ・アーティスト、エルヴィス・プレスリー。彼がいなければ、ビートルズも、クイーンも存在しなかった。エルヴィスの誰も知らなかった真実の物語。時代を背負うアイコンとなり世界を変えていくエルヴィスの生き様が多くの伝説的ライブと共に描かれる。
監督:バズ・ラーマン 出演:オースティン・バトラー(エルヴィス)、トム・ハンクス(トム・パーカー大佐)、ヘレン・トムソン(グラディス)、リチャード・ロクスバーク(ヴァーノン)、オリヴィア・デヨング(プリシラ)、ヨラ(シスター・ロゼッタ・サープ)、ションカ・デュクレ(ビック・ママ・ソーントン/ペンテコステ派シンガー)、アルトン・メイソン(リトル・リチャード)、ケルヴィン・ハリソン・Jr(B.B.キング)、ゲイリー・クラーク・Jr(アーサー・“ビッグ・ボーイ”・クルーダップ)、デヴィッド・ウェンハム(ハンク・スノウ)、ルーク・ブレイシー(ジェリー・シリング)、ディカー・モンゴメリー(スティーブ・ビンダー)、コディ・スミット=マクフィー(ジミー・ロジャース・スノウ)ほか
映画「エルヴィス」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「エルヴィス」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「エルヴィス」解説
この解説記事には映画「エルヴィス」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
エルヴィスのネタバレあらすじ:起
1953年、夏。
カントリーの人気歌手ハンク・スノウのマネージャーを務めていたパーカー大佐は、ハンクの息子ジミーが持ってきたレコードから流れる白人青年の声に衝撃を受けました。その青年の名はエルヴィス。1935年、ミシシッピ州の東トゥペロで生まれたエルヴィスは双子の兄ジェシーを生後間もなく亡くし、母グラディスの愛情を受け育ちました。
しかし一家は貧しく、家計が苦しくなったため1948年に黒人が多く住むテネシー州メンフィスへと引っ越すことになりました。幼少期のエルヴィスはメンフィスでゴスペルやブルースなどの黒人音楽に触れ、自然と音楽性を磨いていきました。
そして1954年。エルヴィスはサン・レコードからデビューし、やがてハンクの前座を務めるまでになりました。しかし、初の大きなステージでは緊張からなかなか声が出せず観客にヤジを飛ばされます。
その瞬間エルヴィスの中で何かが吹っ切れました。大きく息を吸うと、圧倒的な歌唱力とセクシーに腰を振るダンスで歌い上げる『ザッツ・オールライト』が女性観客を虜にします。この反応を見たパーカー大佐はすぐさまエルヴィスにハンクの巡業ツアーに帯同する話を付けました。
エルヴィスのすさまじい人気でライブは大盛況でした。しかしハンクは彼の信者である息子ジミーとは対照的に、エルヴィスに強い嫉妬心を抱いていきます。そんなハンクを差し置いてパーカー大佐はこっそりエルヴィスに大手レコード会社RCAビクターと独自契約の話を持ち掛けました。
パーカー大佐はさっそくプレスリー・エンタープライズを設立。はじめはこの話に不信感をいただいたエルヴィスの両親も、経営者に迎えられたことでパーカー大佐を信用していきます。
エルヴィスのネタバレあらすじ:承
次々とヒット曲を出し、パーカー大佐が作ったグッズが飛ぶように売れ、エルヴィスは名声を手にしていきます。メンフィスの郊外には豪邸を建て、かねてからの夢だったピンクのキャデラック購入し、母グラディスへプレゼントしました。
しかしその一方で、世間からの反発や批判が相次ぎます。火付け役となったのはミシシッピ州上院議員のジェームズ・イーストランドでした。白人至上主義者で公民権運動に反対していたイーストランドは、エルヴィスは黒人音楽によって白人社会を脅かすと糾弾。パフォーマンスを改めなければ、収監も辞さないと警告しました。
エルヴィスは自分の音楽を封印された怒りを鎮めるために、ダウンタウンのクラブが立ち並ぶビール・ストリートまで車を走らせました。音楽仲間B.B.キングから「お前は白人だから俺たちとは違って逮捕なんてされない。やりたいことをやれ」と励まされ、最近仲間入りした駆け出しのリトル・リチャードの踊れるナンバー『トッティ・フルッティ』にパワーをもらい、翌日ラスウッド・パークスタジアムで行われるライブに臨みました。
これまで通りのパフォーマンスで『トラブル』を歌い上げたエルヴィスはパーカー大佐に止められライブは中断。警察に拘束されてしまいました。
この騒動を受け、1958年3月、エルヴィスはアメリカ陸軍に入隊。不本意な選択ではありましたが、収監を逃れるためと愛国心のアピールというパーカー大佐の意向によるものでした。除隊後は映画進出する計画もあり、エルヴィスは少なからず俳優としてのキャリアも期待を持っていました。
ところが数か月後、最愛の母グラディスが倒れ亡くなってしまいます。突然の訃報に泣き喚くエルヴィスに父ヴァーノンは成すすべがありませんでした。パーカー大佐はそんなエルヴィスに寄り添い抱きしめました。
エルヴィスのネタバレあらすじ:転
1960年、アメリカ陸軍を正式に除隊したエルヴィスは従軍していていた西ドイツで知り合った軍隊長の娘プリシラと恋に落ち、グレイスランドで同居を始めました。
しかしその後のエルヴィスはパーカー大佐の計画通り、映画俳優に転向するもののヒットはせず低迷。さらにパーカー大佐は全米ネットワークテレビ局NBCとクリスマス特番『エルヴィス』の制作を契約し、スポンサーの意向通りエルヴィスに全編クリスマスソングを歌わせることを決めました。次第にエルヴィスはパーカー大佐へ不満を募らせていきます。
そんな中、エルヴィスは特番を担当するプロデューサー兼ディレクターのスティーブ・ビンダーとプロデューサー兼エンジニアのボーンズ・ハウに密かに会います。プレスリーの「自分のキャリアはどこにあるか」という問いに対し、ビンダーは「今はトイレだ」と答え率直さを見せました。すぐに意気投合した3人はこの特番を制作することにためらいを持ち、ただのクリスマス番組にしないことで決意を一致させます。
しかし徐々にアメリカは暗い影に覆われていきます。
4月に暗殺された公民権運動の指導者マーティン・ルーサー・キング牧師に続き、6月には大統領選に出馬していたロバート・ケネディ上院議員が暗殺されました。大きなショックを受けるエルヴィスでしたが、パーカー大佐は「気にすることはない」と言い放ちます。
その日、エルヴィスは自身の思いを込めて徹夜で曲を仕上げました。
翌日、収録当日にクリスマスムード一色となったセットの横に、白スーツで登場したエルヴィスは完成させたばかりの『明日への願い』を熱唱しました。
反骨精神を見せていたエルヴィスとプロデューサーに不満を持っていたスポンサー陣もこの曲に感動し拍手を送りましたが、何も知らされていなかったパーカー大佐は苛立ちを隠せずにいました。
エルヴィスの結末
クリスマス特番は高視聴率をマークし、完全復活となったエルヴィスは本格的にライブ活動を開始しました。その頃からアメリカを出てヨーロッパや日本を回るワールドツアーの話が持ち上がりますが、パーカー大佐はセキュリティの問題を理由にこれを却下。代わりにラスベガスにオープンしたばかりのインターナショナル・ホテルでワンマンライブを行う契約を取り付けました。
しかしこの契約には裏がありました。それは、パーカー大佐がカジノで作った借金が帳消しになり、さらには無期限で融資を受けることができるというものでした。
インターナショナル・ホテルでの華々しい舞台をこなす一方で、殺害予告が届くようになったエルヴィスは、不安と恐怖から精神安定剤を過剰に摂取するようになり、ホテルのペントハウスに閉じこもるようになりました。ついにプリシラからも別れを告げられエルヴィスは孤独に追い込まれていきました。
ワールドツアーを行わないのはエルヴィスの命を守るためだと説明するパーカー大佐でしたが、本当の理由は違いました。パーカー大佐の本当の姿はアンドレアス・コルネリス・ファン・カウクというオランダ人だったのです。アメリカ市民権を有さない密入国者だったことを隠すために、アメリカ国外へ行くことができなかたのです。その事実を知ったエルヴィスは、ステージ上からパーカー大佐を非難しクビを言い渡しました。
しかしその日の夜、父ヴァーノンよりパーカー大佐から借りていた多額の借金の返済を迫られていることを知らされます。エルヴィスがこれまでに稼いだ金は派手な衣装や車にすべてつぎ込み残っていません。エルヴィスはやむなくパーカー大佐のクビを取り消しました。
しかし、薬物は徐々にエルヴィスの身体を蝕んでいきました。
そして1977年。心臓発作で倒れたエルヴィスは42歳という若さでこの世を去りました。
生前、最後に行ったホテルのライブでは衰弱し立つことさえできなかったエルヴィスでしたが、仲間にマイクを持たせながら『アンチェインド・メロディ』を弾き語りました。それは病などまるで感じさせないパワーみなぎる歌声でした。
パーカー大佐によるエルヴィスへの金銭的搾取は、エルヴィスの死後訴訟という形で明らかとなりました。仕事を失ったパーカー大佐は、わずかな財産をラスベガスのスロットにつぎ込み晩年を過ごしました。
エルヴィス・プレスリーは、世界で最も成功したソロ・アーティスト であり、彼の音楽への影響と遺産はこれからも続いていくこととなるでしょう。
以上、映画「エルヴィス」のあらすじと結末でした。
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