夕霧花園の紹介:2019年マレーシア, イギリス映画。マレーシアの女性裁判官として活躍するユンリンはかつて愛した中村という庭師にスパイ疑惑が湧いていることを知り、彼の潔白を証明するために中村との思い出を辿っていく。謎めいた庭師中村を阿部寛が好演しています。
監督:トム・リン 出演:阿部寛(中村有朋)、リー・シンジエ(1950年代ユンリン)、シルビア・チャン(1980年代ユンリン)、ジョン・ハナー(マグナス・ゲメル)、ジュリアン・サンズ(1980年代フレドリック)、デビッド・オークス(1950年代フレドリック)、ほか
映画「夕霧花園」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「夕霧花園」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「夕霧花園」解説
この解説記事には映画「夕霧花園」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
夕霧花園のネタバレあらすじ:起
1941年、日本軍はイギリス領であるマラヤ(マレーシア)に侵攻し、わずか2ヶ月で日本の支配下におきました。
1980年代、62歳のテオ・ユンリンはマレーシアで史上二人目の女性裁判官として活躍していました。ユンリンは知人のフレドリックに会い、1950年代にいた中村有朋(阿部寛)という庭師の話を聞きます。
ユンリンはかつて中村と恋愛関係にありました。すでに別れて会うことはありませんが、今、中村が戦時下にスパイだったのではという容疑がかかり、ユンリンまで疑われることになるのでその疑いを晴らすため、ユンリンはやってきたのです。フレドリックから中村の写真を見せられたユンリンの脳裏に、中村との記憶が浮かびます。
1950年代、ユンリンが33歳だったときの頃、戦犯法廷の仕事をしていたユンリンは、キャメロン高原で仕事をしている中村有朋という男のことを知り、会いに行きます。
「夕霧」と書かれた表札の家にやってきたユンリン。中村と対面を果たします。早速ユンリンはクアラルンプールに所持している土地に日本造園を作りたいという依頼をしますが、中村に造園の依頼は受けないと断られてしまいます。
夕霧花園のネタバレあらすじ:承
ユンリンは中村の気持ちが変わらないかと、自分が日本軍に強制連行されて、戦争後に爆破された収容所の生き埋めになり亡くなった妹の供養のため日本庭園を作りたいのだと泣き落としにかかります。しかし中村は動じませんでした。今手掛けている「夕霧花園」の完成までまだ時間がかかるとのことでしたが、ユンリンは待つと話します。
翌日、中村に呼び出されて喜んで向かったユンリンは、中村から「君が望むならここで働いてもいい。手伝いをしながら庭園作りを学びなさい。そうすれば夕霧花園が出来る頃には自分で妹の庭園を作れるだろう」と伝えられ、翌日から働くことになりました。
1つの石を置くのにも長時間考え、人を使うだけで自分は動かない中村に、ユンリンは不満を覚えます。それに対し中村は、借景という和室から見える景色の中に絵を描く造園技法があるということをユンリンに説明しました。
夕霧花園のネタバレあらすじ:転
1980年代、ユンリンは誰もいない夕霧花園にやってきて中村との思い出を辿ります。中村は本当にスパイではないのか証拠を集めている内に、なぜ黙って自分の前から中村は消えたのか、ユンリンの中に次第にその思いが強く浮かぶようになりました。
1950年代、色々と衝突がありましたが寡黙な中村をユンリンは理解し、中村もユンリンを受け入れるようになっていきます。ユンリンは折り鶴を中村から教わったり、中村の趣味である入れ墨を理解したりして心を通わせます。
やがて、予てよりユンリンに思いを寄せていたフレドリックから愛の告白をされますが、中村に心を惹かれていたユンリンはそれを断りました。ある日、ユンリンは中村に過去に妹を見殺しにした後ろめたさがあることを話します。中村は黙って聞いていました。その後、ユンリンは中村に入れ墨を入れるようお願いし、中村も承知しました。
痛みに耐え、入れ墨を入れたユンリン。中村はそんな彼女を労ります。やがてユンリンと中村は体を重ねました。雨季の仕事が出来ない間、二人はずっと寄り添って過ごし、色んな話をしました。
中村と一緒に寝ていたユンリンを、何者かが襲います。埋蔵金があると聞きつけたゲリラ一派の仕業でした。そんなものはないと宥めますが、納得せずゲメルが撃たれて亡くなってしまいます。
夕霧花園の結末
中村は夕霧花園の片隅にユンリンの妹のユンホンが考えた庭の設計図を再現します。ユンリンが中村に礼を言うと、中村も自分に愛情をくれたユンリンに礼を言います。そして中村は翌朝、何も言わず姿を消してしまうのでした。当時のユンリンにはどうしてか全く理解できませんでした。
1980年代、ユンリンは当時とは姿を変えてしまった夕霧花園を見て、中村がユンリンの背中に彫った入れ墨がキャメロン高原の地図だということに気づきます。フレドリックに背中を見てもらい確認しながら、さらに桜の花の場所が強制収容所で、妹が眠る場所であることを知りました。
そしてユンリンは中村がいなくなった理由を知ります。ユンリンの背中に地図を描くことは中村にとって日本国への裏切りでした。ユンリンに何も言わなかったのは、その真意を後に気づいてもらうためだったのです。中村の真意を30年かけて知ったユンリンは、涙を流して笑いました。
翌朝、ユンリンはフレドリックと朝食をとりながら、中村はスパイなんかではないと反論するという決意を告げます。そして帰る前に夕霧花園をもう一度見に行くと話しました。
夕霧花園の和室に立ち、借景から見る景色を目に焼き付けたユンリン、その景色にはあの当時の中村がいるように見えました。ユンリンは思い出した中村の姿に静かに投げキッスをします。
以上、映画「夕霧花園」のあらすじと結末でした。
この映画の感想を投稿する