バーディの紹介:1984年アメリカ映画。ベトナム戦争で重度のPTSDを発症した青年と、彼の心を癒そうと懸命に努力する親友の姿を描く。悲惨な戦争を背景に、2人の友情と複雑な葛藤を表現したヒューマンドラマ。1985年のカンヌ国際映画祭で審査員特別グランプリを受賞した。
監督:アラン・パーカー 出演者:マシュー・モディン(バーディ)、ニコラス・ケイジ(アル・コランバトー)、ジョン・ハーキンス(ワイス少佐)、カレン・ヤング(ハンナ)ほか
映画「バーディ」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「バーディ」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「バーディ」解説
この解説記事には映画「バーディ」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
バーディのネタバレあらすじ:心と体に傷を負った2人の青年
舞台は1960年代、ベトナム戦争時のアメリカ。戦場で顔面に大きな傷を負い、包帯を巻いた青年アル・コランバトーが精神病院へやって来ます。彼は戦場で心を壊してしまった親友バーディを救うため呼ばれました。アルとバーディの出会いはハイスクール時代。弟のナイフをバーディに盗まれたアルが、取り返そうと起こした一悶着がきっかけでした。結局誤解だと判明し、これを機に2人は仲良くなっていきます。アルは社交的で女の子にも興味津々、一方バーディは内向的で鳥に夢中な変人です。正反対の2人は一緒に様々な冒険に繰り出しました。体中に鳩の羽をくっつけ工事現場に忍び込んだり、廃車を一生懸命修理したりと無茶でも楽しい思い出がたくさんあります。バーディの主治医である軍医少佐ワイスは、アルならバーディを正気に戻せるかもしれないと考え、彼を呼び出したのです。バーディは戦闘中1ヶ月行方不明になり、発見後はまるで自分を鳥だと思い込んでいるかのような状態が続いていました。彼が隔離されている病室に入ったアルが懐かしい思い出話を語って聞かせますが、バーディに変化はありません。
バーディのネタバレあらすじ:アルの奮闘
アルは連日バーディの病室を訪ねては、ハイスクール時代の思い出をおかしそうに喋ります。初めて行った海のこと。異性に興味を持たないバーディを叱ったこと。そんなバーディが興味を示し「パータ」と名付けた美しいカナリアのこと。しかし何を話しても心を閉ざしたバーディには届きません。アルは「お前は鳥になったんだろ」と言って、苛立ちながら病室を出ていきます。脳裏に蘇る戦場の記憶がアルを苦しめていました。アルは治療には長い時間が必要だとワイス少佐に訴えますが、少佐はあまり良い顔をしませんでした。アルがバーディのそばにいられる時間は、刻一刻と磨り減っていきます。
バーディのネタバレあらすじ:鳥の世界
ハイスクール時代のバーディは、異常な程鳥にのめり込んでいきました。大きな翼の模型を作り飛行を試みる一方、アルと野犬狩りのバイトに挑戦しました。しかし集めた野犬が感電死させられ、肉や皮を剥ぎ取られていると知った2人は犬を逃がして自分達も走り去ります。人間に失望するバーディは鳥への憧れを強烈なものにしていきました。――いくら病室で思い出を語っても回復の兆しが見えないバーディに、アルは苛立ち始めます。ワイスはアルに自分の基地に戻るよう告げました。焦るアルはバーディを怒鳴り、必死に反応を引き出そうとします。そこへ看護師のハンナがやって来てアルに注意しました。アルは悲痛な声で「そいつ(バーディ)は俺の人生の一部だ」と言って病室を出ていきます。夜、全裸のバーディは鳥を真似た体勢でじっとしていました。鳥に執着するバーディは以前にも似たような行動を起こしていました。ハイスクールで誘われるまま参加したプロム。しかしバーディの興味を引くものはありません。帰宅したバーディは全裸で鳥小屋に入り、丸くなって眠ります。バーディは「死んで鳥に生まれ変わりたい」と強く思うようになっていました。鳥にばかり夢中なバーディに、アルは「気味が悪いな」と言って、困惑と嫌悪を見せたのでした。
バーディのネタバレあらすじ:壊れた心
ベトナム戦争が始まり、アルは一足先に出征します。その姿を部屋から見送っていたバーディ。すると窓の隙間からパータが飛んでいってしまいます。バーディは焦って窓を開けようとしますが、壊れているのか隙間は広がりません。制止をかけるバーディの叫びも虚しく、戻って来たパータは窓ガラスを突き破り死んでしまいました。バーディはパータの亡骸を抱き泣き崩れます。そこに重なる戦場の記憶。バーディはベトナムの戦場で、負傷兵と共にヘリコプターに乗っていました。しかしヘリコプターはコントロールを失い墜落。傷だらけのバーディが目を開けると、大きな鳥が目の前にいました。たくさんの鳥が飛び交う中、爆発が連続して起こります。空一面の鳥を見上げながら、バーディは絶叫し続けました。
バーディの結末:帰還
ついにバーディを正気に戻せなかったアル。「もう一人にはしない」と言ってバーディを抱きしめたアルは、ワイスからの呼び出しを伝えに来たハンナに、ここに残ると言い張ります。ここにいれば悲しみも顔の傷も、それによって変わってしまう自分への恐怖も気にしないで済みます。ずっとここに隠れていようと呟くアル。するとバーディが、突然アルの名前を呼びました。アルはやって来たワイスにバーディが喋ったことを報告しますが、ワイスは取り合わず2人を引き離そうとします。アルはワイスを乱暴に押しのけ、バーディを連れて屋上へと逃げ出します。屋上に到着したバーディは、両腕を広げ鳥が飛び立つように身を投げてしまいました。アルは叫びながら走り寄ります。しかしバーディが飛び降りた場所は実はただの段差で、すぐ下に着地していたバーディは何でもない顔で振り返ります。バーディがアルに「何だい?」と問いかけ、この映画は終わりを迎えます。
以上、映画バーディのあらすじと結末でした。
「バーディ」感想・レビュー
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この映画「バーディ」は、ウィリアム・ワルトンのベストセラー小説を、「ミッドナイト・エクスプレス「ミシシッピー・バーニング」の名匠アラン・パーカー監督が映画化し、鳥を熱愛し、それと同化しようとする青年の心象風景を鋭く映像化した異色の傑作で、1985年度の第38回カンヌ国際映画祭で審査員特別グランプリを受賞していますね。
主人公の青年バーディは、ヴェトナム戦争に出征して、前線で錯乱状態に陥り、今ではアメリカの精神病棟の一室で、まるで飛べない鳥のように身をかたくして座り込み、一日中、金網のついた窓から見える空を眺めているだけです。
そう、バーディは、ヴェトナムの戦場で精神錯乱になって、”鳥”になってしまったのではなく、鳥が大好きな人間であった彼は、しだいに病がこうじて、鳥に”自己同一化”してしまったんですね。
そして、鳥になって町の上を飛びまわる幻覚を見るのです。
それは鳥に憧れ続けた彼にとっての”夢の成就”でもあったのです。
このバーディの視線を追った低空俯瞰撮影が実に見事だ。ヴェトナム戦争が、バーディに与えた残酷な傷とは、せっかく”鳥”として大空を飛べるようになったのに、ヴェトナムの戦場は、なんとそこでバーディは、ヘリコプターで空を飛ぶのですが撃墜され、彼の精神錯乱は決定的なものになり、彼を飛べなくなった鳥にしてしまうのです。
そして、コンクリートの病室の中に閉じ込められた金網越しの窓から、空を眺め続けるバーディの姿は、無慈悲にも破壊させられた”夢の残骸”そのものなのかも知れません。
ベトナム戦争で今でいうPTSDになったバーディ。幼馴染で同じく戦争で傷を負ったアルが彼との思い出を振り返りながら、心の傷を癒そうと苦闘する話です。戦争の悲劇を忘れてしまったように見える現代人に見て欲しい映画です。心に負った気がは、時に体に負った傷よりも深く、激しい痛みを与えます。また音楽は元ジェネシスのピーター・ガブリエルが担当し、素晴らしい出来です。