エイブのキッチンストーリーの紹介:2019年アメリカ,ブラジル映画。イスラエル系の母親とパレスチナ系の父を持ち、ブルックリンで生まれた12歳の少年エイブ。文化や宗教の違いで対立する家族に頭を抱えていたが、料理を作ることが唯一の心の拠り所だった。ある日、エイブは世界各地の味を掛け合わせて「フュージョン料理」を作るブラジル人のシェフ、チコと出会う。フュージョン料理を自分の複雑な家庭環境と重ね合わせたエイブはオリジナル料理で家族を1つしようと決心する。
監督:フェルナンド・グロスタイン・アンドラーデ 出演:ノア・シュナップ(エイブ)、セウ・ジョルジ(チコ)、ダグマーラ・ドミンスク(レベッカ)、アリアン・モーイエド(アミール)、マーク・マーゴリス(ベンジャミン)、セーラム・マーフィー(エイダ)、トム・マーデロシアン(サリム)、ダニエル・オレスケス(アリ)ほか
映画「エイブのキッチンストーリー」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「エイブのキッチンストーリー」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
エイブのキッチンストーリーの予告編 動画
映画「エイブのキッチンストーリー」解説
この解説記事には映画「エイブのキッチンストーリー」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
エイブのキッチンストーリーのネタバレあらすじ:起
パレスチナ系の父とイスラエル系の母を持ち、ブルックリンで生まれたエイブ(ノア・シュナップ)は料理が大好きな少年です。料理を作ってはSNSにアップして、ネット上の友達とやりとりをすることを楽しむ毎日を送っていました。
12歳の誕生日。エイブは自分でバースデーケーキを作り、父アミール(アリアン・モーイエド)と母レベッカ(ダグマーラ・ドミンスク)、そしてそれぞれの親族も集まって誕生日パーティーを開きました。
しかし、親族が集まると宗教や文化の違いからいつも決まって言い争いが始まり、喧嘩に発展してしまいます。エイブは逃げるようにネットで見つけたフードフェスへと繰り出しました。
エイブのキッチンストーリーのネタバレあらすじ:承
会場に着くと、エイブはこれまでに見たことのない食材や、感じたことのない匂いや音にすっかり魅了されました。それは今まで1人でキッチンに立ちSNS上の友達に発信することしか知らなかったエイブの世界を大きく広げてくれた体験でもありました。
すると、ふと足を止めた屋台で料理をしていたチコ(セウ・ジョルジ)というブラジル人に出会いました。チコは料理をうらめしそうに見ていたエイブに”アカラジェ”という料理をくれました。
それはエイブの祖母がよく作ってくれた中東料理”ファラフェル”をジャマイカ風にフュージョンさせた食べ物です。エイブはこの料理に自分の背景を重ね、衝撃を受けました。
エイブのキッチンストーリーのネタバレあらすじ:転
夏休みに入るとエイブは母の勧めで料理のサマーキャンプに参加することにしました。しかし、キャンプではナイフ使用禁止の子供向けのレッスンが行われており、一流を目指すエイブにはあまりにもレベルの低い内容。そこでエイブは両親に内緒でキャンプを辞め、チコがいるレンタルキッチンへと向かいました。
エイブは働かせてもらうためにチコに自慢の”ラーメン・タコス”を差し出し、味見をしてもらおうとしました。ところが受け取ったチコは匂いを嗅ぐと「最悪だ」と言い放ち、手をつけることなくエイブに突き返しました。
それでもどうしても働きたいと言うエイブに、一度は断ったチコも、彼の料理の知識を買いレンタルキッチンの手伝い承諾したのでした。
レンタルキッチンの仕事はくる日も来る日も皿洗いやゴミ捨ての毎日でしたが、次第にナイフを使った料理を教えてもらったり、まかないを任されるまでになりました。チコは「料理を掛け合わせることで、人々を結びつけることができる」とエイブに教えてくれました。
その言葉をヒントにエイブは、パレスチナとイスラエルの味をミックスした料理を作れば家族を一つにまとめることができる!と考えました。早速レシピを考え、会食会の招待状を親戚へ配りました。
エイブのキッチンストーリーの結末
家族の絆を取り戻したいという想いが込められたイスラエルとパレスチナのフュージョン料理がテーブルに次々並びます。家族が揃い、最後の一品のターキーを出そうとしたその時。やはり喧嘩は始まってしまいました。
その場にいることが耐えられなくなったエイブは、エプロンを床に叩きつけると家を出て行ってしまいました。キッチンではエイブがいなくなったことすら気づかない家族たちが言い争いを続けています。
エイブがいないことにやっと気付いた家族は大慌てで近所を探しましたが、どこにも見当たりません。家族全員がエイブを心配し、自らの言動を反省しました。母レベッカは義母に寄り添い、父アミールは義父と車でエイブを探しに出ました。
すると、両親はエイブのインスタグラムからチコのレンタルキッチンを見つけます。エイブはそこにいました。両親は強く彼を抱きしめました。
家に戻ると、再びエイブの料理がテーブルに並べられていました。今度は全員で喧嘩することなくテーブルを囲み、お皿を綺麗に平らげました。それはみんなの顔に笑顔をもたらせ家族を一つにしてくれる素晴らしい料理でした。
後日、フードフェスの屋台にエイブの姿がありました。近くに設営されたテーブルには大好きな家族たち。エイブが特製のアイスを家族に配ると、チコも来て様々な文化や宗教を持つ人々で幸せなひと時を過ごすのでした。
以上、映画「エイブのキッチンストーリー」のあらすじと結末でした。
食べ物と異文化がテーマの映画に何故か心が惹かれる。ちょっと前の作品だと『マーサの幸せレシピ(Mostly Martha)』。ドイツ人女性シェフが事故死した姉の子を引き取るが、イタリアとのハーフの姪はなかなか心を開かない。ある時彼女を職場に連れてゆくと、同僚のチャラ男イタリア人シェフの機転で、賄いのパスタを美味しそうに頬張り笑顔を見せるようになった(その先にも紆余曲折あり)…という話。
さて先日観た『エイブ〜』の主人公エイブは、ブルックリン在住のパレスチナ系とユダヤ系のハーフ。誕生日や新年に双方の家族が集まると、食卓がおのずと論争の場になりヒートアップ、誰もが天を仰ぐ始末。それは皆、孫可愛さ故でもあるのだけど、当のエイブにとってはストレスフルでやるせないだけ。何とか皆を喜ばせたい、その一心で12歳の少年は大好きなクッキングに活路を見い出す。夏休み中の料理キャンプのレベルの低さに途中で抜け出し、ネットでたまたま興味を持ったフュージョン料理店に潜入。軽くあしらわれつまみ出されつつも、ブラジル人シェフのチコにはなかなかよい舌を持っていると気付かれる。翌日からキャンプ代わりに店に通い始め、皿洗いからスタート。大人と共に働く事を通して様々なヒントを得て、来たるサンクスギビングの為に腕をふるおうと胸をときめかせていたが…こちらも紆余曲折あり。イマドキの子供らしく、料理のインスタ投稿写真も話の展開に程よいスパイスを効かせている。
パレスチナ系とユダヤ系の対立にまつわる映画として思い出すのが、実話を元に数年前公開された『もうひとりの息子(Le Fils de l’Autre, The Other Son)』。子供の取り違えが後に発覚、戸惑いぶつかりながらもお互い尊重する事を学んでゆく展開にハラハラドキドキ、そんな記憶も脳裏によぎりつつ、、現実は厳しいけれど美味しい食べ物って、時に人種、国籍、宗教、信条、、一筋縄ではいかないヒトの価値観の相違を超えて胃袋やヒトの心をも打つ事もありますよね。音楽やアート、文学と同じように。そんな訳でエイブ少年の未来に幸あれと心から祈る気持ちでいっぱいになった。