アガサ/愛の失踪事件の紹介:1979年アメリカ映画。推理作家アガサ・クリスティが失踪。夫から離婚を切り出されたアガサが忽然と姿を消し、その間記憶喪失だったとされる11日間の出来事を描いたフィクション。
監督:マイケル・アプテッド 出演:ダスティン・ホフマン、ヴァネッサ・レッドグレーヴ、ティモシー・ダルトン、ヘレン・モース、トニー・ブリットン、ティモシー・ウェスト、セリア・グレゴリー、ティム・シーリー、ほか
映画「アガサ/愛の失踪事件」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「アガサ/愛の失踪事件」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「アガサ/愛の失踪事件」解説
この解説記事には映画「アガサ/愛の失踪事件」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
アガサ/愛の失踪事件のネタバレあらすじ:起・アガサの失踪
推理作家アガサ・クリスティは夫アーチーから離婚を迫られていた。既にアガサへの愛は冷めており、かねてから愛人関係にある秘書のナンシーと結婚すると言うアーチーに、離婚はしないと言ってアガサはすがりつく。そんな彼女に嫌気がさし、無情にも振り切ってアーチーは家を出て行く。夫に去られて傷心のアガサは、その日の晩、「旅行に行く」という書置きを残して家を出たまま、忽然と姿を消す。
アガサが乗った車が途中で乗り捨てられ、本人の所在が分からないため、失踪事件としてマスコミが騒ぎ、警察が捜索を始める。しかしアーチーは夫婦の不仲を伏せたまま、妻は単なる旅行だといって捜査をやめさせようとし、警察はそんなアーチーを不審に思い、アガサは夫に殺されたのではないかと疑う。
アガサ/愛の失踪事件のネタバレあらすじ:承・推理作家の計画
その頃、アガサは温泉療養地であるハロゲートに来ていた。ナンシーが痩身のためにこの療養地を訪れることを知り、先回りしてやってきたのだった。偽名を使ってナンシーが宿泊する予定のホテルに滞在し、そこで背中の治療と偽って治療施設を訪れる。痩身治療にも使用するという“電気浴”に興味を抱き、部品や本を購入して電気架線について調べ始める。
一方、著名なジャーナリストのスタントンがスクープをモノにしようと独自に失踪事件を追っていた。彼はアガサがハロゲートにいることを突き止め、自分も偽名を使ってアガサに近づく。一緒にダンスをしたり、温泉療養をしたりと行動を共にするうち、やがて2人は親しさを増していき、スタントンも本心からアガサに惹かれていく。
アガサ/愛の失踪事件のネタバレあらすじ:転・命を賭けた復讐
そんな中、ナンシーがホテルに到着する。アガサは治療師を装ってナンシーに治療の予約が明日に変更になったという電話を入れる。そして翌日、ナンシーを装って治療師をホテルに呼び出したアガサはナンシーの到着を待つ。その頃ホテルではアガサの正体がバレ、通報を受けた警察がやってくる。アガサの部屋で電気に関するメモの燃えカスを見つけ、ウソで呼び出された治療師を見たスタントンはアガサの計画に気づき、慌てて治療施設へ向かう。
しかし電気浴のイスに座っていたのはアガサだった。部屋に入ったナンシーは彼女の指示で電気のスイッチを入れると、計画通り電流がアガサの体に流れ始め、彼女の呼吸が止まる。ナンシーに自分を殺させる、それこそが彼女の復讐だったのだ。しかしそこへかけつけたスタントンが蘇生を施し、アガサは息を吹き返す。
アガサ/愛の失踪事件の結末:失踪は謎のまま
アガサが見つかったことで、夫と同席で記者会見が開かれる。彼女は失踪の間記憶喪失で何も覚えていないと話す。その後スタントンの部屋を訪れると、彼は原稿をアガサに渡して記事にはしないとと約束する。アガサは夫のもとに戻り離婚する、と言って、受け取った原稿をそっと彼のスーツケースに入れる。
そして2人は駅で別れ、スタントンはアガサを見送る。その2年後、アガサはアーチーと離婚した。
映画を作る人は、プロデューサー(製作者)、脚本家、監督、編集者、音楽担当者など、いろいろな人がいて、彼らの共同作業で、1本の映画が完成します。
この中で、撮影する人のことは日本では、単にカメラマンと言いますが、海外では「Cinematographer」と言って、これを「カメラマン」と訳してしまうのは、なんだか悲しい気がします。
そして、この映画の撮影をしているCinematographerは、ヴィットリオ・ストラーロです。
撮影一筋に数十年のキャリアを持ち、数々の名作を撮影している人です。
私の大好きな「暗殺の森」、他にも「ラスト・タンゴ・イン・パリ」「地獄の黙示録」「シェルタリング・スカイ」「ラスト・エンペラー」など、錚々たる映画のスタッフとして名を連ねています。
映画を語る時、ついつい脚本や監督(演出)に目がいきがちですが、総合芸術、しかも映像を媒体としての映画というものの特性を考えた時、実はCinematagrapherの存在はとても大きな縁の下の力持ちなのだと思います。
この映画「アガサ/愛の失踪事件」ですが、もし私が邦題をつけるとしたら「アガサ・クリスティー失踪事件」にすると思います。
「アガサ」がすぐに「アガサ・クリスティー」だと連想できる人は、そう多くないと思うからです。
現実に、アガサは、夫に捨てられてしまったショックで11日間失踪したことがあるのだそうです。
夫には他に愛人ができたのです。
実によくある話ですが、この映画は、そのアガサ・クリスティーが失踪していた謎の11日間の出来事に焦点を当てて描いています。
アガサ・クリスティーを演じているのは、「裸足のイサドラ」「ジュリア」の英国の名女優ヴァネッサ・レッドグレーヴで、ちょっと神経質そうで上品な初老の超有名作家を見事に演じ切っています。
まさに、はまり役だと思います。
そして、彼女の失踪を追う、ニューヨークから来た新聞記者スタントンは、「真夜中のカーボーイ」「レインマン」の演技派俳優ダスティン・ホフマン。
公開当時のポスターの名前は、主人公がアガサなのにもかかわらず、ダスティン・ホフマンの方が大きく印刷されていたそうですが、これは単純明快な理由で、ホフマンのギャラの方がレッドグレーヴよりも多かったからだそうです。
それから、アガサの夫アーチボルト大佐は、ご存知007シリーズの4代目ジェームズ・ボンドを演じたティモシー・ダルトンで、舞台出身の曲者俳優らしく、一癖も二癖もありそうな悪役っぽい男を、実に渋く演じています。
彼は、こういう役を演じさせたら、本当に巧いと思います。
さすが主人公がミステリーの女王だけあって、映画もアッと驚く展開が待ち受けていました。
なるほど、そう来たかという感じでした。
全くのフィクションですから、現実にはこんな事はなかったのでしょうけれど、ミステリーの女王が自分自身にもミステリーを仕掛けるというのは、非常に面白くて興味深いものがありました。
1930年代のファッションも楽しめますし、マイケル・アプテッド監督のドキュメンタリー風の演出もいい感じだったと思います。
そして、当然の事ながら、ヴィットリオ・ストラーロの流麗なカメラワークに酔いっぱなしでした。