愛の渇きの紹介:1967年日本映画。舅と関係を持ちながら、使用人の青年に惹かれていく未亡人を描いた文芸ロマンス。求められるまま舅に体を許す悦子の心は、どうしようもなく空虚だった。園丁・三郎の若さと逞しさに恋焦がれるが、ある日女中が彼の子どもを妊娠する。嫉妬に苦しむ悦子は、やがて静かに狂気に染まっていくのだった。原作は三島由紀夫の同名小説。
監督:蔵原惟繕 出演者:浅丘ルリ子(悦子)、石立鉄男(園丁・三郎)、中村伸郎(杉本弥吉)、山内明(謙輔)、楠侑子(千恵子)ほか
映画「愛の渇き」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「愛の渇き」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「愛の渇き」解説
この解説記事には映画「愛の渇き」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
愛の渇きのネタバレあらすじ:悦子の周囲
舞台は昭和の日本、大阪府豊中市。杉本悦子は、応接間の置物を1人でじっと見つめていました。悦子は1年ほど前に夫良輔を亡くし、彼の実家に身を寄せています。若き園丁の三郎が盗み見をしていると気付き、悦子は厳しく叱りました。悦子の舅弥吉は10年前に実業界を引退し、広大な果樹園を営みながら悦子達の面倒を見ています。満足に仕事もせず、無為に生きる長男謙輔に弥吉は苦言を呈しますが、本人は妻千恵子と共にどこ吹く風。むしろ悦子と弥吉の関係を揶揄します。悦子は求められるがまま弥吉と体を重ねていましたが、愛はありませんでした。物事をあまり真面目に考えないことが、悦子の信条だったのです。ある日、悦子は阪急百貨店に出かけ良輔の仏前に供えるザボンを購入します。そして三郎のために靴下を買いました。雨の中、傘を持って迎えに来た謙輔夫婦と帰る悦子。謙輔は尊大な父親の弱点である悦子を有り難がっていました。謙輔も悦子に気があるようだと言う千恵子に、悦子は驚いて嫉妬しないのかと尋ねます。千恵子は尊敬しているから嫉妬などしないと笑い飛ばしました。
愛の渇きのネタバレあらすじ:三角関係
翌朝、悦子は畑仕事中の三郎に会いに行きます。その瑞々しい肉体に熱い視線を注ぐ悦子は、取り繕うように靴下をプレゼントしました。ところがしばらくして、その靴下がゴミ捨て場に捨てられているのを見つけます。悦子が三郎を問い詰めると、自分が捨てたと認めました。そこに現れたのは女中の美代です。三郎はあくまで庇おうとしますが、美代は自分が嫉妬して捨てたのだと白状しました。表面上は美代を許した悦子でしたが、三郎との関係を感じ取り内心穏やかではありません。そんな折、弥吉から応接間に呼ばれた悦子。なんでも置物がなくなったらしく、犯人探しをしているそうです。三郎の仕業だと直感した悦子は罪を被り、三郎を庇いました。その後河原で眠っている三郎を叩き起こし、置物をどうしたのか尋ねます。しかし三郎は、犯人は自分ではないと頑固に否定するのでした。そして何故自分を虐めるのかと悦子に縋りつきます。悦子がもう虐めないと約束すると、三郎は笑顔で仕事に戻りました。後日、悦子は三郎が例の靴下を履いているのを見つけます。
愛の渇きのネタバレあらすじ:妊娠
村に祭りの夜がやってきました。上半身裸で祭りに参加する三郎に、悦子は熱い視線を送ります。そこに美代が倒れたと知らせが入りました。彼女は妊娠していました。相手は三郎以外に考えられません。翌日、悦子は一家を代表して三郎に問いただしました。すると三郎はあっさり美代との関係を認めます。ショックを受ける悦子に、三郎は美代を愛している訳ではないと呑気に言うのでした。悦子は罰として美代と結婚するよう命令します。それもすんなり承諾した三郎を見て、悦子は彼の無頓着な心に影すら落とせないのではないかと恐怖しました。三郎は突然応接間の置物を壊して埋めたと白状し、罰を求めますが悦子は応えません。
愛の渇きのネタバレあらすじ:嫉妬の苦しみ
悦子の本当の苦しみが始まりました。自分が命令した結婚に嫉妬する悦子は、焚き火に手をかざして手のひらを焼いてしまいます。治療を受けた悦子は、弥吉と共に東京へ行くことを承諾しました。弥吉は実業界に復帰するため、かねてから悦子に東京行きを打診していたのです。悦子はその代わり、美代の子どもを中絶させて欲しいと頼みました。弥吉は驚きますが、強く反対も出来ません。そして三郎が結婚の許可を貰うため故郷に帰った日、悦子は美代に中絶手術を受けさせました。翌日、美代は故郷へ帰ると告げ大金を要求します。悦子は喜々として金を渡し、早々に美代を追い出してしまいました。その後三郎が帰って来ますが、美代の不在について何も聞こうとしません。重大事だけに悦子もなかなか言い出せず、ついに東京へ行く前日になってしまいました。
愛の渇きの結末:嫉妬の果てに
悦子は意を決して、深夜の葡萄畑で会って欲しいと三郎に頼みます。夜、悦子と弥吉の送別会が開かれましたが、東京行きに反対する謙輔は酔ってくだを巻きます。彼は置き去りにされることが不満なのです。そして悦子を妾(めかけ)だ、情婦だと罵りました。しかし悦子は全く怯まず、むしろ謙輔の方が後悔して泣き出してしまいます。深夜。三郎と落ち合った悦子は、荒れた温室で美代が出て行った顛末を話しました。ところが三郎は怒るでも悲しむでもなく、ただ笑っています。彼の心は全く動いていませんでした。その様子に悦子はショックを受け、火傷した手を見せながら、苦しんだのは自分だけだったのかと嘆きます。すると三郎は突然悦子の唇を奪って襲いかかりました。押し倒され、愛を感じない暴力的な行動に悦子は悲鳴を上げます。そこに鍬を持った弥吉が現れました。逃げようとする三郎に追い縋った悦子は、弥吉から鍬を奪い三郎を殺害。温室に穴を掘り、三郎が隠していた置物と共に彼を埋めました。その顔はとても満足そうです。悦子が真っ赤に染まった空を背負って歩き出し、この映画は終わりを迎えます。
以上、映画愛の渇きのあらすじと結末でした。
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