アスファルトの紹介:2015年フランス映画。エレベーターが故障中の、おんぼろ団地で巻き起こる3つのストーリー。リアルとファンタジーが交差する、不思議で優しい世界観に癒される。フランスの名女優イザベル・ユペールの相手役を務めたのは、監督サミュエル・ベンシェトリの息子である注目の新星、ジュール・ベンシェトリ。そしてハリウッドからは、テレビドラマ「ボードウォーク・エンパイア 欲望の街」のマイケル・ピットも参加している。
監督:サミュエル・ベンシェトリ 出演者:イザベル・ユペール(ジャンヌ・メイヤー)、ギュスタブ・ケルバン(スタンコヴィッチ)、ジュール・ベンシェトリ(シャルリ)、マイケル・ピット(ジョン・マッケンジー)、タサディット・マンディ(マダム・ハミダ)、バレリア・ブルーニ・テデス(看護師)、アブデルマドジッド・バル(マジッド)ほか
映画「アスファルト」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「アスファルト」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
アスファルトの予告編 動画
映画「アスファルト」解説
この解説記事には映画「アスファルト」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
アスファルトのネタバレあらすじ:起
フランス郊外に建つ、何の変哲もない古びた団地。しょっちゅう故障するエレベーターを巡って、住民達が会議中です。みんなで費用を出し合い、新しいエレベーターと交換しようという案にただ1人、スタンコヴィッチという独り暮らしの中年男だけが異議を唱えます。2階に住むスタンコヴィッチは、エレベーターを使わないからです。相談の結果、スタンコヴィッチだけは金を出さない代わりにエレベーターも使わないということで収まりました。ある日のこと、エアロバイクに乗りすぎて脚を傷め、しばらく車椅子生活を送る羽目になったスタンコヴィッチ。車椅子とはいえ、住民がいる所でエレベーターには乗れません。仕方なしに真夜中こっそり団地を抜け出し、近所の病院にある自動販売機でスナックを買い込みます。もう1人の団地住民、留守がちの母親と暮らす十代の少年シャルリは、向かいの部屋に越して来た中年女性、ジャンヌと言葉を交わすようになります。女優だというジャンヌに興味を持ったシャルリは、彼女と一緒に出演映画のビデオを鑑賞します。一方スタンコヴィッチは、真夜中の病院で夜勤の看護師と知り合います。彼女に心惹かれたスタンコヴィッチは、自分は世界中を旅するカメラマンだと嘘をつきます。会話する2人の耳に、風のような悲鳴のような、不気味な音が聞こえてきます。看護師は、明日の夜にあなたの写真を見せてとスタンコヴィッチに言います。
アスファルトのネタバレあらすじ:承
団地の屋上に突然、パラシュートをつけた宇宙船の脱出ポッドが降りてきました。中から出てきたのは、アメリカ人宇宙飛行士のジョン・マッケンジー。自分の居場所がわからないジョンは、団地の住民マダム・ハミダの家で電話を借りてNASAに助けを求めます。ところが、NASAから迎えがやって来るのは2日後。英語が話せないマダム・ハミダの家に泊まることになり、ジョンは困り顔です。親切なマダム・ハミダは、刑務所に入っている息子マジッドの部屋をジョンに貸します。マダム・ハミダの優しさにジョンも次第に心を開き、一緒にテレビドラマを見たり、流しの下の水漏れを修理してあげたりします。夜が来て、スタンコヴィッチはカメラと写真を持って看護師に会いに行きます。写真といっても、昼間にテレビや空を撮ったポラロイドばかりです。それでも感心してくれる看護師に、あなたの写真が撮りたいとおずおずと言うスタンコヴィッチ。看護師はとまどいますが、考えておくわと返事します。一方ジャンヌは、若い頃に出演した舞台の役に再度立候補するために出掛けて行きます。その姿をシャルリも応援しますが、役がもらえることもなく酔っぱらって帰って来たジャンヌは、シャルリの前で泣き出します。
アスファルトのネタバレあらすじ:転
真夜中、看護師に会うためエレベーターに乗り込んだスタンコヴィッチでしたが、またもやエレベーターが故障して動きません。看護師は病院の外で待ち続けていました。ドアに車椅子を挟んでなんとか脱出したスタンコヴィッチは、痛む両脚をひきずり、半泣きで病院へと向かうのでした。その頃マダム・ハミダは、ジョンのために得意料理のクスクスを作ります。英語とフランス語で意思疎通を図る2人。ジョンが息子のことを尋ねると、マダム・ハミダの目には涙が浮かぶのでした。シャルリはジャンヌに、同じ劇でも悪役の方をやればいいと提案。演出家に見せるための動画を撮ってあげると申し出ます。元気を取り戻したジャンヌは、化粧をしてシャルリが向けたカメラの前に立ちます。息子を思う母親のセリフをとうとうと語るジャンヌの姿を、レンズ越しにシャルリが見つめていました。一晩中じりじりと歩き続けたスタンコヴィッチは、必死の思いで病院へ到着。夜勤を終えて出てきた看護師を見つけます。スタンコヴィッチはよろよろと彼女に近づき、カメラを向けます。そして本当のことを打ち明けます。僕は面白い男じゃない。写真家でもない。毎晩エレベーターをこっそり使い、病院の自販機でスナックを買ってる…。それを聞いて看護師が笑い出します。雰囲気が和み、2人は揃って空を見上げます。
アスファルトの結末
マダム・ハミダが、眠っているジョンを起こしました。NASAから電話がかかってきたのです。ようやく迎えが来ると聞いて、安堵するジョン。マダム・ハミダは、コーヒーを淹れるわと微笑みます。借りていた息子のサッカーTシャツを脱いで宇宙服に着替えたジョンは、キッチンでマダム・ハミダの前に座ります。ジョンが直したはずでしたが、流しの下からは相変わらず水が漏れていました。やがてヘリコプターが飛んでくる音がして、NASAから迎えが来たことがわかります。マダム・ハミダは、途中で食べてとタッパに入れたクスクスを手渡します。2人はさよならのハグをします。ジョンが団地の外に出ると、そこにヘリが待っていました。マダム・ハミダのクスクスを持って、ジョンがヘリに乗り込みます。ヘリが飛び立つと、周囲に大きな風が起こりました。部屋にいたジャンヌは、笑顔で窓の外のヘリを眺めています。団地の外にいたシャルリも、ヘリが飛ぶ方向をじっと見つめていました。再び、あの不気味な音が周囲に響きます。それは団地のはずれにある大きなコンテナでした。風が吹く中、その扉が開いたり閉じたりを繰り返します。
何とも不思議な物語三つが詰まっています。団地に住んでいるおじさんが健康器具を買って、足を痛めて車椅子生活になるくらい、ずーっと漕ぎ続けていたのが何ともシュールで笑ってしまいました。何だったんだろう・・・。考えたけれどわかりませんでした。宇宙飛行士のお話は心温まり好きです。言葉は通じないけれど、心では通じ合っていたというか、言葉より伝えたい気持ちなんだなと思いました。